「時代遅れの海賊漁業」中国漁船、中米EEZで日常的に違法操業
米国の海洋問題専門家は、多くの南アメリカ諸国の排他的経済水域(EEZ)で、中国漁船による違法な
操業が日常的に行われ、現地の漁業を脅かしていると指摘する。さらに、現地漁業者を買収して際限なく
漁獲しており、制御を困難にさせている。
シンクタンク戦略国際問題研究所ラテンアメリカ担当顧問エヴァン・エリス氏の研究文書によると、
多くの南アメリカの漁業者たちは、昔ながらの生活を維持する漁獲量を保持してきた。
しかし、中国船は深海底までさらう大型トロール船を派遣してEEZに侵入している。
EEZは国連海洋法条約(UNCLOS)により定められた。国は海岸から200カイリまで、その資源の権利を
有する。報告によると、中国漁船によるEEZ侵入はアルゼンチンで最も多く見られ、チリやウルグアイでも
確認されている。
中国周辺海洋、資源の枯渇 貪欲さの犠牲に
中国は遠く離れた海へ漁船を送り、トロール船で深海の海洋生物までも捕獲している。
これらは、中国国内での流通のみならず、欧州やアジアなど海外へ向けて販売している。
たとえば、エビやイカ、メキシコ周辺に生息するネズミイルカなど。
海洋資源を調べるサイト、シーフードソースのクリフ・ホワイト氏によると、高級珍味あるいは漢方原料と
される絶滅危惧種コガシラネズミイルカの膀胱は、中国で1400~4000ドル(約15万~44万円)で取引
されているという。
エクアドルは2016年までの4年間で、20人の中国人漁業者を逮捕した。海洋保護区であるガラパゴス諸島で
違法操業し、6600匹あまりのサメを捕獲していたという。
中国の漁業活動は、この50年間で急激に拡大し、4つの既存漁場であった渤海、舟山、南シナ海沿岸、
およびトンキン湾の海産資源を採り尽くしたと言われている。また、環境に無配慮な工業や農業による
海洋汚染も悪影響をもたらした。
このため中国はアジアの公海、アフリカ、遠くはラテンアメリカまで手を伸ばした。
漁船員は服役囚?海賊漁業と表現、アルゼンチン専門家
アルゼンチンの海洋専門家ミルコ・シュバルツァム氏は2015年、中国漁船による「時代遅れの海賊漁業」に
ついて言及した。「中国は奴隷労働者を利用し、海洋生態系を荒廃させている。環境や労働、衛生管理に
配慮していない」「アルゼンチンでは奴隷条件で誰も働くことはできない。しかし、中国漁船は人身売買で
引き取った人を使っているようだ」と指摘した。
アルゼンチン当局によると、同国の規制内の海産物の販売価格よりはるかに下回る価格で、貿易ライバル国に
輸出されているという。
現地紙エル・ペングイーノによると、中国漁船の船員は、現地司法で有罪と見なされた服役囚か、
あるいは懲罰を受けた人間だと認識されている。また、これらの漁船に対して、中国当局側は何らかの
航海規範を定めていない模様だと報じた。
2016年3月、アルゼンチン沿岸警備隊は、EEZ内で違法操業し、警告を無視した中国漁船に警戒砲弾を
放った。漁船が沈没するため、アルゼンチン側は漁船員の救助を試みたが、船員は他の中国漁船に泳いで
逃げていったという。
チャイナマネー、現地の漁業会社の買収
エリス氏によると、ペルーは有能な海軍があり、EEZ内での違法操業を停止させることができる。
しかし、中国資本はペルーの漁業者を買収して、ペルーEEZ内の操業を可能にしている。
また、大連の漁業企業・大連華豊は、スペインの同業アルブマサの買収を通じて、南アメリカでの操業を
拡大させた。
エリス氏は、この限りある海洋資源に対する無節操な漁業者の問題に対して、沿岸警備隊や海軍の
取り締まり強化、メディアによる警鐘、一般的な問題認識の向上を促している。
また、中国との2国間対話で問題を追及するべきだとも提言している。