アマゾンが薬局事業に参入、米ピルパックを買収
2018 年 6 月 29 日 06:26 JST THE WALL STREET JOURNAL
詳細は明らかにしていない。
ピルパックは複数の処方薬を1日分ずつまとめて包装し、宅配するサービスを提供している。
ニューハンプシャー州マンチェスターに拠点を置き、ハワイ以外の全州への配送が可能。
アマゾンが薬局事業に乗り出したことで、米ドラッグストアチェーン大手の ウォルグリーン ・ブーツ・アライアンスや
CVSヘルスの株価は大幅に下落した。
アマゾンがピルパックの買収を発表した時、ウォルグリーンはアナリストを対象とした電話説明会の最中だった。
同社のステファノ・ペシナ最高経営責任者(CEO)は「特に懸念することはない」と述べた。
ピルパックは2013年の創業で、これまでに1億1800万ドル(約130億円)の資本を調達してきた。
創業者の1人でCEOを務めるT・J・パーカー氏は昨年11月、顧客数が数万件に上り、年間売上高は1億ドルを
突破しそうだと述べていた。
事情を知る複数の関係者によると、アマゾンは薬局市場への参入を何年も前から社内で検討していた。
アマゾンの参入でドラッグストア業界に「悪寒」
2018 年 6 月 29 日 07:50 JST THE WALL STREET JOURNAL
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
ドラッグストアチェーンは現実を受け入れるときが来たようだ。米アマゾン・ドット・コムが薬局事業への参入に
本腰を入れている。
アマゾンは28日、オンライン薬局を手掛ける新興企業の米ピルパックを買収すると発表した。
ピルパックのウェブサイトによると、同社は全米49州で営業許可を得ている。
アマゾンは現金で約10億ドル(約1100億円)をピルパックに支払うという。同買収の発表を受けて
ドラッグストアチェーン株は急落。 ウォルグリーン ・ブーツ・アライアンスは10%安、CVSヘルスは6%安となった。
薬剤給付管理(PBM)、医薬品卸売り、医療保険の各関連銘柄も下落した。
アマゾンによる業界破壊が緩やかなペースで進むと考える根拠はある。アマゾンが昨夏、高級スーパーチェーンの
ホールフーズ・マーケットを買収しても、従来型のスーパーマーケットは倒産しなかった。ヘルスケアは厳重な
規制下にあり、ビジネスの不透明さはよく知られている。このため最も知略に長けた新規参入者であっても、
変革のペースは遅くなるだろう。
さらに、保険会社やPBM業界は新たな競争を阻もうと巨額の資金をつぎ込んできた。CVSは医療保険大手エトナの
買収を決めた。医療保険のシグナは薬剤給付管理(PBM)大手 エクスプレス・スクリプツ ・ホールディングを
買収する計画だ。
ただ、これら企業の株主は安心しないほうが良い。アマゾンの野心の矛先は疑うべくもないからだ。
ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は今年に入り、従業員の医療コスト削減を目指す非営利法人の設立で
著名投資家ウォーレン・バフェット氏および金融大手JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEOと手を組んだ。
今やスーパーチェーンを傘下に擁するアマゾンは、郵送のほかに実店舗でも医薬品を提供できる。
市場の反応は劇的だったが、株価は通常、現在価値と将来のキャッシュフローへの投資家の期待を踏まえた
ものであり、その点で適切だとも考えられる。アマゾンの参入で、薬局事業の長期的展望には大きな
不透明感が漂っている。
調査会社ファクトセットによると、CVSとウォルグリーンの予想PER(株価収益率)は約9倍。3年前は約20倍だった。
この日の発表を受けて、両社の過去のバリュエーションは間もなく「遠い日の思い出」になるのかもしれない。