日本のドラマ「孤独のグルメ」は、毎回美味しい店を食べ歩く。主人公の食欲は凡世界的だ。和食だけでなく韓国、中
国、ブラジルなど世界各地の料理を楽しむ。その主人公が、日本茶とたい焼きを食べて言う。「日本人に生まれて幸せ
だ」。これは他のドラマや漫画にもたびたび登場する日本人の定番コメントだ。
◆日本で『韓国人に生まれなくて良かった』というタイトルの本が出版された。武藤正敏元駐韓大使(2010~2012年)
が書いた本だ。昨年12月、「慰安婦を強制連行した証拠はない」と妄言を吐き、今年2月には同じタイトルのオンライン
コラムを発表して物議をかもした当事者だ。本の内容も耐えがたい。呪いの予言と言わんばかりに、任期を始めたばか
りの文在寅(ムン・ジェイン)大統領に「最悪の大統領」、「親北反日のポピュリスト」の烙印を押した。弾劾と政権交代に
ついて、「理性より感情で動く(韓国人の)悪い面が出た」と書いた。
◆これまで武藤氏は4度も韓国で勤務した知韓派外交官と「誤って」知られているという点で裏切れた気持ちが大きい。
2011年、武藤氏は大使館ホームページに「韓国は日本の真の友人」と書いた。東日本大地震の時、「まるで自分の家
族や友人が被害を受けたように」、「自発的に日本を助ける支援活動を展開する」韓国国民の温情に非常に感激したと
言った。2012年に国内大学の客員教授に招聘された時、武藤氏は「日本に韓国を伝え、韓国にも日本をきちんと伝え
る日韓交流の架け橋の役割」を語った。武藤氏が考える「掛け橋の役割」がこういうことなのか。
◆日本人は「建前」と「本音」があるということは承知している。しかし、いわゆる「韓国通」で有名だった元外交官が自ら
仮面を脱いで表わした未成熟な精神世界と歪んだ性格を見ると、身の毛がよだつ。いわゆるエリート階層の資質がこの
程度のレベルなのか。「21世紀未来指向の日韓関係」がより遠く感じられる。
「文在寅氏は何を話しても反応がなかった」韓国の行く末に警告した武藤正敏元駐韓大使の新刊にメディアが猛批判
2017.6.4 07:00 産経新聞
「親韓のふりをしていた日本の元大使が、本性を現した」。日韓関係に精通した元駐韓大使がこのほど発表した
韓国分析本に対し、韓国メディアが「嫌韓本」として激しく反発、批判を強めている。
本のタイトルは「韓国人に生まれなくてよかった」。文在寅(ムン・ジェイン)大統領ら新政権の要人とも交流した経験を
基に、率直な韓国批判が収録されており、大使経験者の著作としては異例の内容といえる。
発表の真意について著者、武藤正敏氏(68)に話を聞いた。(外信部 時吉達也)
「身の毛がよだつ」と猛烈批判
「『韓国通』で有名だった元外交官が自ら仮面を外してあらわになった未成熟な精神世界とねじれた心に、
身の毛がよだつ」
こんな強い表現で武藤氏を批判した東亜日報の論説委員をはじめ、「韓国社会の否定的な面だけを強調」(聯合
ニュース)「外務省の後輩さえ『時間のムダ』と目もくれない本」(ソウル新聞)と、武藤氏の新刊は強烈な非難を浴びてい
る。ニュース番組のあるコメンテーターは「両国関係の悪化につながるのは間違いない」と論評した。
「韓国人に生まれなくてよかった」(悟空出版)は、5月9日に投開票が行われた大統領選結果など最新の韓国情勢に
言及した上で、韓国政治・社会を分析する内容。文在寅新大統領については「歴史、領土問題にしか関心のない
経済オンチ」と断じた。
また、別の章では就職難や脆弱(ぜいじゃく)な年金制度など韓国社会の抱える問題についても詳細に言及。
「韓国で競争に順応し、成功を収めるのは並大抵のことではない」とし、表題の通り「韓国人に生まれなくてよかった」と
結論づけている。こうした表現が、韓国メディアによる猛烈な反発の対象となった。
「反発は当然予想していたこと。逆に、私の韓国批判がようやく相手に伝わったと喜んでいる」。「韓国人に生まれなく
てよかった」が発売された直後の5月29日。取材に応じた武藤氏は韓国メディアの反応を確認しながら、淡々とした様
子で感想を述べた。「外務省の後輩は苦虫をかみつぶしているでしょうけれど。でも、誰かが言わないといけないことな
んです」
目の当たりにした文在寅氏の「沈黙」
武藤氏は外務省入省後、参事官や公使としても韓国に赴任したほか、北東アジア課長などを歴任した「コリア・スクー
ル」のキャリア官僚だった。2010年から12年まで、大使として韓国に赴任。両国関係の実相を知る「知韓派」と評価さ
れていた。
「韓国の行く末に警告を発しなければいけない」。本を書く契機は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾に伴う政権交
代に、強い危機感を覚えたことにあったという。在任中、朴氏を含む多数の要人とも交流するなかで「何を話しても反応
がない。暖かみが全くなかった」との印象を受けたのが、文在寅氏だった。
前回2012年の大統領選。当時も有力候補者の1人だった文氏との関係構築に向け、釜山の事務所を訪れた。
日韓の民間レベルで行われている経済協力に触れ「両国政府でバックアップしていこう」と訴えたが、文氏は終始黙って
いた。最後にようやく文氏から尋ねてきたのは、「日本は(朝鮮半島の)統一についてどう考えるか?」という質問だった
という。「北朝鮮にしか関心を持っていないことが、はっきりと伝わってきた」と振り返る。
新政権に絶望も「『嫌韓』ではない」
文氏率いる新政権の政策・対日関係について、武藤氏は極めて悲観的な見方をしている。
「核となる人事をみれば、親北政策を進める意図は明らか。日本との関係では、歴史認識問題の議論と未来志向の関
係構築を切り離す『ツートラック』外交を強調しているが、市民団体の抵抗を抑えることは難しいだろう」
「文在寅政権を登場させたことは、国民みんなを不幸にする方向に進めたように思えてならない」と新政権に絶望する
一方、本書ではたびたび韓国人への奮起を促す記述が登場する。
「いろいろ問題はあろうと、ここまで韓国を成長させてきたのは韓国人自身の努力なのだ。(中略)韓国は、誰がなんと
言おうと、韓国人のものなのだ。だから、いまの苦難をけっして誰かのせいにしてはいけない」
武藤氏は言う。「『嫌韓』の立場で批判をするつもりはない。韓国社会が今後、この本に書かれているとおりにはならず、
韓国人が『韓国に住んでよかった』と思える国になればいい。そう思っています」