jump in the box

この小さな箱の中で飛んだり跳ねたりしてみます(笑)

星の世界

2005年06月29日 | 家族
昨夜帰宅すると同時にチーちゃんが玄関に飛び出してきた。
出迎えかと嬉しく思ったらそのまま外へ…(苦笑)

後からニパちゃんを抱いた嫁さんがついてくる
「夜、星を見るっていうのが宿題なんだって」

「パパ!早くこっち!」
チーちゃんに呼ばれて玄関を出る。
再び生ぬるく重い空気に包まれる。

物騒な世の中の弊害で
家の前の道路には街灯がある。
周囲も明るくてとてもじゃないが星を見る環境ではない。

「夏の三角ってどこ?」
どうやら今日授業で習ったらしい。

僕は脳みその奥から錆付いた天球儀を引っ張り出す。
季節は6月下旬、時刻を確認すると22:00
夏の大三角を中心に星座と星をパズルのように復元していく
カリカリカリカリ…
脳内HDDが必死で演算を開始する。

僕が星空と神話に夢中になったのは中学時代。
以前にも書いたけれど「星のローカス」という漫画の影響で
それはもう夢中になって夜空を眺めては天空を駆けた。

幸いにも僕の育った場所は山に囲まれていたけれど
空気が澄んでいて灯りも少なかったから
家の前の工場の広場に行くと数え切れないほどの星に出会えた。
オリオンの小三ツ星やプレアデスも六連星どころではないほど肉眼で見えた。

カリカリカリカリ…
当然ながら脳内に描かれた夜空は当時の記憶に基づいている。
眼前の夜空は決定的に星の数が足りない。

「はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイル、こと座のベガだから…」
僕が言うとチーちゃんは驚いた様子で
「パパ!なんでそんなん知ってるん?」

カリカリカリカリ…
8月の空に大きく広がる大三角。
今の時期ならまだ天頂には至らず東の空にいるはずだ
時刻は22時だからそんなに低い位置にあるわけでもない。

チーちゃんと一緒に東の空を見上げる。
ビンゴ!
瞬く星が3つ。
「あったで、あれがデネブ、近くにいるのがベガ、ちょっと離れてアルタイル」
「わぁ!パパすごい!なんでわかるん?」

しかし驚いた。
一等星しか見えないのはわからなくもないが
その一等星すらかすんで揺れている。
大阪に星空は無い。

脳内に鮮明に蘇った星座を頼りに
東から南周りに頭を西に振る。
これが本当に夏の大三角ならば
天頂からやや西に傾いたところに春の一等星
うしかい座のアークチュルス、その先におとめ座スピカがあるはず…
チーちゃんも一緒に頭を振る。

ビンゴ!
「あった!あれがアークチュルスでその先がスピカだ!」
「うわぁ、すごい!なんで知ってるん?なぁ?」

もう自分の世界に入ってしまっている僕は
チーちゃんの質問一切無視して目を凝らす(笑)
南の空にさそりがいると思うんだけど…
ダメだおもいっきり街灯が邪魔。

しかし一等星ですらこの状態
これじゃ北斗七星や北極星を基点にして
星座の世界を天空に描いていく事はできやしない。

「飯田(僕の実家)行ったらもっと見れるん?」
あきらめ顔の僕にチーちゃんが聞く
「うん、もっといっぱい見られるで!行ったら一緒に見よか!」
「うん、絶対見る!」

玄関をあけてようやく家の中に入る。
「先生にな…」
「うん」
チーちゃんの背中に向けて話しかける
「『宿題は夏田舎に帰ってからします』って言うとき」
「うん、そうするわ」

エアコンの良く効いた居間
「お風呂行ける?」と嫁さんに訊ねる。
「うん、ちょっとぬるいかもよ」
「あぁ、その方がいいかも」

脳内の天球儀をそっと閉じた。
帰省したらまた引っ張り出してやるからな。