台湾教科書の「首都」記載 南京を台北に
2004年度にも 独立、改憲にも波及
(産経 2002.12.31 朝刊国際欄)
【台北30日=河崎真澄】台湾の小中学生向け教科書で、中華民国を称する台湾の首都が「南京」で領土は中国大陸に及ぶとする現行の記載を見直し、「中央政府は台北にある」などの表現で首都が「台北」にあることを示す記載に改める方針を教育部(教育省)が固めたことが三十日、明らかになった。二〇〇四年度にも実施する。
歴史的な政治背景をもつ記載だが、実態とは矛盾する“虚構”の教育内容を教師や親も小中学生に押し付けることが難しくなった。一方で、教科書への首都や領土の記載を当局が明確に変更するためには、最終的に“憲法改正”に踏み込む必要もある。独立問題や国家アイデンティティー(帰属意識)も複雑にからんで論議を呼びそうだ。
中国大陸で共産党との内戦に敗れ、一九四九年に台湾に移った国民党政権が、かつて首都だった「南京」をそのまま台湾に持ち込んだ。国民党政権時代は、中国大陸の領土を取り戻す「反攻大陸」政策を掲げており、領土規定上は中国大陸も含んでいた。教科書も規定による表記が続いている。
二年半前に誕生した民進党政権が検討し、ようやく教科書修正が固まったが、「首都は台北」などの直接表現は避けてギリギリの表現を使う見通し。台湾当局が領土と首都を現実に即して修正すれば、「台湾独立を意味する」として、中国に武力行使の口実を与えかねないとの懸念がある。
一方で台湾の「中華民国憲法」の条項には、チベット出身の立法委員(国会議員)選出などがあり、現在も中国大陸の支配を前提とした体系となっている。このため現実に法律を合わせるためには、憲法改正が必要となり、首都や領土の改正はそのまま“台湾独立”を意味することになる。
十二月二十一日には前総統の李登輝氏が、自らが会長を務めるシンクタンク「群策会」が策定した「台湾二十一世紀国家総目標」発表の席で、「台湾は新憲法を制定し国家アイデンティティーを確立すべきだ」との見方を示している。台湾当局が今回、ギリギリの表現を模索しながらも教科書修正に乗り出すことは、そうした憲法改正や新憲法制定の論議に火をつけることにもなりそうだ。
2004年度にも 独立、改憲にも波及
(産経 2002.12.31 朝刊国際欄)
【台北30日=河崎真澄】台湾の小中学生向け教科書で、中華民国を称する台湾の首都が「南京」で領土は中国大陸に及ぶとする現行の記載を見直し、「中央政府は台北にある」などの表現で首都が「台北」にあることを示す記載に改める方針を教育部(教育省)が固めたことが三十日、明らかになった。二〇〇四年度にも実施する。
歴史的な政治背景をもつ記載だが、実態とは矛盾する“虚構”の教育内容を教師や親も小中学生に押し付けることが難しくなった。一方で、教科書への首都や領土の記載を当局が明確に変更するためには、最終的に“憲法改正”に踏み込む必要もある。独立問題や国家アイデンティティー(帰属意識)も複雑にからんで論議を呼びそうだ。
中国大陸で共産党との内戦に敗れ、一九四九年に台湾に移った国民党政権が、かつて首都だった「南京」をそのまま台湾に持ち込んだ。国民党政権時代は、中国大陸の領土を取り戻す「反攻大陸」政策を掲げており、領土規定上は中国大陸も含んでいた。教科書も規定による表記が続いている。
二年半前に誕生した民進党政権が検討し、ようやく教科書修正が固まったが、「首都は台北」などの直接表現は避けてギリギリの表現を使う見通し。台湾当局が領土と首都を現実に即して修正すれば、「台湾独立を意味する」として、中国に武力行使の口実を与えかねないとの懸念がある。
一方で台湾の「中華民国憲法」の条項には、チベット出身の立法委員(国会議員)選出などがあり、現在も中国大陸の支配を前提とした体系となっている。このため現実に法律を合わせるためには、憲法改正が必要となり、首都や領土の改正はそのまま“台湾独立”を意味することになる。
十二月二十一日には前総統の李登輝氏が、自らが会長を務めるシンクタンク「群策会」が策定した「台湾二十一世紀国家総目標」発表の席で、「台湾は新憲法を制定し国家アイデンティティーを確立すべきだ」との見方を示している。台湾当局が今回、ギリギリの表現を模索しながらも教科書修正に乗り出すことは、そうした憲法改正や新憲法制定の論議に火をつけることにもなりそうだ。