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昭和史(半藤一利著 平凡社)一撃講和説

2024-12-21 22:46:03 | 日記

昭和史(半藤一利著 平凡社)一撃講和説

終戦直前までなぜ日本軍は頑張ったかの説明はかなり腑に落ちた。一撃講和に持ち込むために敵に大きな痛手を与えておくためであるとの説明であった。たぶん日本軍にはハナから勝とうという気はなかったのであろう。五分五分かうまくいけばやや優勢くらいの時に講和に持ち込むのが目的であろう。(日露戦争がそうであったらしい。一遍いい目に合うと次もいい目に合うに相違ないと思ったのであろう。なんだかビギナーズラックを経験したためにギャンブルにはまってしまった人と同じような気がする。運は一遍やってくると二度めはない。ただしこの本ではそこまで踏み込んだ書き方はしていない。)我が軍には、貴軍にはない「根性」がありますぞとそれを見せつけるために特攻までして見せたのはこの一撃講和に持ち込むためであったらしい。

日本軍はなくなったが、この「根性」はその後独り立ちしてかなり長い間生き残った。「特攻精神で頑張る」という表現はバブルが始まる前まで一部で使われていた。こちらはなるだけ無駄な力を使わないで早くお家に帰ってお風呂と晩御飯を食べたいと願っているのに、こういうことを言う人がいて迷惑千万であった。ただしこういうことを目を吊り上げていう人は、本人は出世を目指しているらしかったが残念なことにあんまり出世しなかった。わたしは、「根性」と「出世」とはほぼ相関がないとみている。「根性」と「収入」はもっと関係がないように観察されるがどうだろうか。

お話変わって今でも会社や役所は「根性」を高く評価するまたはしているふりをする。その意味では日本の戦後はまだ終わっていない。人々に過労死まで求めるのは、「根性」を高く評価している何よりの証拠である。孫子はよき将軍は兵を労われと教えた。(「兵を愛すること赤子のごとし」)いよいよ負けるときには全軍棄ててしまってもよいとも教えた。(「兵を棄てること糞土のごとし」)特攻を企画した将軍は孫子を知らないわけではないだろう。いよいよ負けるときと思っていたはずである。果たして本当に一撃講和があると思っていたのだろうか。わたしは、読んだ直後は半藤さんの一撃講和説に納得したがしばらくたつと納得が緩んでくるのをいかんともしがたく感じる。今の会社や役所の偉い人は、「根性」を高く評価していることを世界からどう見られているのか知っているのだろうか。根性論の出るとき少なくとも孫子は負ける寸前であるとみているはずである。

 



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