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『孟子』巻第八離婁章句下 九十三節、九十四節、九十五節

2018-02-24 10:41:03 | 四書解読
九十三節

孟子は言った。
「君主が罪もない士を殺したら、そのような災いは大夫にも及ぶであろうから、大夫は国を去ってもよい。君主が罪もない民を殺すようなら、それはやがて士にも及ぶであろうから、士も国を立ち去ってよい。」

孟子曰、無罪而殺士、則大夫可以去。無罪而戮民、則士可以徙。

孟子曰く、「罪無くして士を殺さば、則ち大夫以て去る可し。罪無くして民を戮せば、則ち士以て徙る可し。」

<解説>
朱注に云う、「君子は當に幾を見て作すべし、禍い已に迫れば、則ち去ること能わず。」朱子も趙阜もこの節の趣旨を禍は早く気づいて処置すべしと解釈している。それは間違いではないと思うが、私は前節に続き、君臣の関係を説いているように思う。不仁を為して人を殺すような君主は、立ち去ってもよいということである。

九十四節

孟子は言った。
「君主が仁愛深ければ、国じゅう皆仁愛深くなる。君主が義を重んじれば、国じゅう皆義を重んじるようになる。」

孟子曰、君仁莫不仁、君義莫不義。

孟子曰く、「君、仁なれば仁ならざること莫く、君、義なれば義ならざること莫し。」

<解説>
八十一節で述べられた徳治主義を、簡潔に述べたものである。

九十五節

孟子は言った。
「礼に似てはいるが、真の礼ではない、義に似てはいるが、真の義ではない。このような礼儀は、大人物のしないことだ。」

孟子曰、非禮之禮、非義之義、大人弗為。

孟子曰く、「非禮の禮、非義の義は、大人為さず。」

<解説>
趙注に云う、「礼の若くして礼に非ず、陳質、婦を娶りて長なり、之を拝す、義の若くして義に非ず、交わりに籍りて仇を報ゆ。」妻が年長者だからと言って、これを拝するのは、礼のようであって礼で無い。相手に偽りの交わりを結んで仇を討つのは義の行いではないと述べている。しかし庶民の間では物事が混濁していることは多く、似て非なる者を正しく察することは困難である。それを正しく行えるのは大人物だけということだ。

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