投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

死神の精度 - 伊坂幸太郎(文春文庫)

 
2008年2月10日 第1刷

著者は1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒。2000年「オーデュボンの祈り
で第5回新潮ミステリ倶楽部賞を受賞。

死神が自分が担当になった人物の元へ最終確認に行くという話。死神が主人公の6篇の短編集。「旅路を死神」という話が気に入った。子供のころに誘拐事件にあい、無事保護されたが心に傷を負い、長じて母を刃物で刺し、逃亡する途中に繁華街で絡んできた若者を刺殺した青年が、奥入瀬に住んでいる当時の誘拐犯の生き残りを殺すために死神が運転する車で向かうという話。こう書くと殺伐としているのだがロードムビーに絶対向いている話なのだ。死神が運転する車も良い、と言っても車の車種が分かる部分は全く出てこないのだが、とにかく作者にはこれだというイメージがあるに違いない、ということが読める。

最後の「死神対老女」も良い。短編としてそれぞれが完結しているのだが、ここまで読んで作品に登場してきた人々の今が(死神に会ったからみんな死ぬわけではない)分かる部分が出て来る。「死神対老女」は最初の話から50年ほど経っていたことも分かる。

(2023年8月 西宮図書館)
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