東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ラファエロ展<その2>(国立西洋美術館)

2013年03月10日 | 展覧会(西洋美術)

ラファエロ展
2013年3月2日~6月2日
国立西洋美術館


ラファエロ展の鑑賞を開始する。
ラファエロの油彩画を中心に記載する。


トップバッターは「自画像」(ウフィツィ美)。
画家の回顧展は、欧米では「自画像」からスタートすることが一般的と聞いたことがある。
確かに、最近日本で開催された、エル・グレコ展やゴヤ展は「自画像」からスタートしていた。

実に若々しい。1504-06年の制作。21~23歳頃の肖像となる。
本作は、モデルがラファエロであることは間違いないとのことだが、ラファエロの手によるものかは異論もあるらしい。
将来の混雑を見越して、通常より随分高い位置に展示されている。そのためか、東京都美滞在中のエル・グレコの自画像ほどの印象を与えることはなかった。


第1章「画家への一歩」。ウルビーノ時代の作品。


最初は、ジョヴァンニ・サンティ(ラファエロの父親)の作品「死せるキリストと天使たち」(マルケ州立国立美蔵)。
ラファエロの父親の作品を実見するのはたぶん初めて。熱心に眺める。

次に、ぺルジーノ(ラファエロの師匠)の作品。ぺルジーノらしい甘い小品。


ラファエロが登場。
1500-01年の、共同制作であるが、主要部分はラファエロが制作したという大祭壇画の断片が3点。
祭壇画上部に描かれた、「父なる神」1断片、「聖母マリア」1断片は、ナポリのカポディモンテ美蔵。
そして祭壇画下部に描かれた「天使」1断片は、ブレーシャの絵画館蔵。他にルーブル美にも断片があるらしい。
10代でこのような作品を仕上げる。天才は違う。


部屋を移る。
ブダペスト国立美の「若い男の肖像」。
記憶曖昧だが、2009年の「Theハプスブルグ展」に出品されていたのではないか。
その時は相応に感心したような記憶があるが、今回は状態が今一つだなあとの印象。

ダリッチ美の2作品は、次の作品が気になって通り過ぎる。

そう、次の作品は、ベルガモの「聖セバスティアヌス」。
これは間違いなく初期の代表作。ペルジーノ風なのだろうかその甘さを好ましく感じる。
ベルガモに行かずして本作を実見できるとはありがたいこと。


第2章「フィレンツェのラファエロ」。


聖ゲオルギウスと竜」(ルーブル美)、「リンゴを持つ青年」(ウフィツィ美)、「赤い服を着た若い男の肖像」(ラファエロ周辺の画家、ポール・ゲッティ美)の3点が並ぶ。

ウルビーノの「無口な女」が登場。
この作品は、もともとウフィツィ美の所蔵だったが、ラファエロの生地ウルビーノに1点もラファエロ作品がないことから、移管されたのだと聞いたことがある。
その経緯から、作品の質的にはそれほどでもないかと勝手に思ってたがとんでもない、一見地味ではあるが、見応えのある作品。
しかしなぜ、「無口な女」という題名なのだろう。
本作は1975年に盗難の経験を持つ。ピエロ・デッラ・フランチェスカの「鞭打ち」、「セニガリアの聖母」とともに。1年半後に取り返すことができた。40年近く前の事件だが、本当によかった。

エリザベッタ・ゴンガーザの肖像」(ウフィツィ美)、「聖家族と仔羊」(プラド美)が続く。
エリザベッタ・ゴンガーザ(ゴンガーザ公の夫人)は、父を亡くしたラファエロを何かと心がけてくれたらしい。


その次は、カラヴァッジョと同時代の画家ダルピーノによるラファエロ作品のコピー「死せるキリストの運搬」が登場する。
あわせて、同祭壇画のプレデッラ(祭壇下部の横長の画面)、工房作のフリーズ(帯状装飾)の2点も登場する。

同作の実物は、ボルゲーゼ美が所蔵する。
ペルージャ市民が愛していた本祭壇画を、1608年、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿は強奪に近い形で、ローマへ運搬する。翌年、コピー作品をペルージャに送る。
かの枢機卿は、大の美術コレクターで、教皇パウルス5世の甥の立場を最大限利用し、強引な手口で収集に励んだようだ。
その成果だろう。ボルゲーゼ美は、枢機卿の同時代の画家カラヴァッジョの作品を6点も所蔵する。また、ローマ・バロックの大彫刻家ベルニーニのパトロンでもあった。

本展の目玉「大公の聖母」が登場する。
将来の混雑を見越して、通常より随分高い位置に展示されている。清楚な聖母が真っ黒な背景に浮かび上がる。
真っ黒な背景は後世の加筆とのことだが、個人的好みでいうと、かえって効果的だった気がする。元の状態を知らないのに言うのはなんだが。将来、真っ黒な背景が取り除かれる日が来ることがあるのだろうか。


地下に降りると、第3章「ローマのラファエロ」。


油彩画は、「ベルナルド・ドヴィーツィ枢機卿の肖像」(パラティーナ美)と「友人のいる自画像」(ルーブル美)。
「友人のいる自画像」はたぶん初見。トップバッターの自画像と比べると、当然それなりの年齢(35~37歳)。

ルーブル美所蔵の傑作「バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像」はさすがに来日しないが、その代わりなのだろう。ラファエロの弟子ジュリオ・ロマーノによる肖像画(ローマ・バルベリーニ宮美蔵)が展示されている。ラファエロ作品とはちょっと雰囲気が違う。

ラファエロが原寸大下絵を制作したタペストリー「聖ステパノの殉教」(ヴァチカン美)も展示されている。

上階にあがると、ラファエロ油彩画のトリ「エゼキエルの幻視」が登場する。


第4章「ラファエロの後継者たち」

セバスティアーノ・デル・ビオンボやジュリオ・ロマーノ、ポリドーロ・ダ・カラヴァッジョの油彩画等がある。


お気に入りベスト3は、「大公の聖母」「無口な女」「聖セバスティアヌス」。
これら作品を6月2日まで見ることができるとは嬉しい。
今回はラファエロ油彩画に専念したが、再訪して新たな発見をしたい。



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。