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「マリー・ローランサン -時代をうつす眼」(アーティゾン美術館)

2024年01月12日 | 展覧会(西洋美術)
マリー・ローランサン -時代をうつす眼
2023年12月9日〜2024年3月3日
アーティゾン美術館
 
 
 2023年はマリー・ローランサンの生誕140年にあたるからであろうか、2-4月のBunkamura「マリー・ローランサンとモード」展に続く回顧展。
 
 ローランサン作品は40点(油彩、水彩、エッチング)。
 挿絵本などの資料や同時代に活躍した画家たちの作品を含め、合計85点の展示である。
 
【ローランサン出品作の所蔵者】
国内
 ローランサン美術館  22点
 アーティゾン美術館  3点
 吉野石膏コレクション 1点
 群馬県立近代美術館  1点
 ポーラ美術館     1点
 名古屋市美術館    2点
 ヤマザキマザック美術館 1点
 大阪中之島美術館   1点
 姫路市立美術館    2点
 ひろしま美術館    1点
 鹿児島市立美術館   1点
海外
 オランジュリー美術館 1点
 パリ市立近代美術館  1点
 ストックホルム近代美術館 1点
 テート美術館     1点
 
 ローランサン美術館からの出品数が控えめ。
 出品22点のうち、4点が序章展示の自画像、12点が第2章の「椿姫」連作水彩画。ほかは、第1章と終章に各1点、第4章と第5章に各2点、第3章はゼロ。国内外から広く作品を集め、ローランサン美術館に強く依存しない、アーティゾン美術館らしい展覧会を目指したように思われる。
 
【本展の構成】
序章 :マリー・ローランサンと出会う
第1章:マリー・ローランサンとキュビスム
第2章:マリー・ローランサンと文学
第3章:マリー・ローランサンと人物画
第4章:マリー・ローランサンと舞台芸術
第5章:マリー・ローランサンと静物画
終章 :マリー・ローランサンと芸術
 
 
 
 本展のお目当ては、ストックホルムから来日したキュビスム時代の作品。
 
 国立西洋美術館「キュビスム 美の革命」展に出品されている《アポリネールとその友人たち(第2バージョン)》をお気に入りとしていたところ、同時期に制作された大型の油彩作品が本展に出品されると知ったもの(本作がなければ、本展はパスしたかも)。
 
マリー・ローランサン
《若い女たち》
1910-11年、114.0×146.0cm
ストックホルム近代美術館
 
 ピカソ《アヴィニョンの娘たち》1907年の影響を受け、群像絵画として、1908年に《アポリネールとその友人たち》の第1バージョンを、1909年に第2バージョンを完成させたローランランは、引き続き、本作を制作する。
 ドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデ(1874-1947)は、「この絵で彼女の名声を押し上げてやろう」と決心し、本作を買い取り、1912年に、スウェーデンの貴族でバレエ・スエドワの主宰者であったロルフ・ド・マレ(1888-1964)に4000フランの高額で売却する。
 これにより、ローランサンの名前はコレクターや美術関係者の間で「唯一の女性の前衛画家」として一躍広まることとなり、大画商ポール・ロザンベールとも契約を結ぶこととなる。
 なお、本作は、ロルフ・ド・マレの死後、1966年に遺贈により現所蔵となる。
 
 
 
 序章は、自画像4点からなる。
 
 初期2点、キュビスム時代1点、1920年代レザネ・フォル(狂騒の時代)下のパリで花形画家として活躍している時代1点。
 
マリー・ローランサン
上から
《自画像》1904年、40.0×30.0cm
《自画像》1905年頃、40.0×30.0cm
《自画像》1908年、41.4×33.4cm
《帽子をかぶった自画像》1927年頃、41.4×33.5cm
 
 これら4点が全てマリー・ローランサン美術館の所蔵であることに感心する。
 
 
 
 日本で初めてローランサン油彩作品が公開されたのは、1925年のこと。
 その時の公開作品。
 
マリー・ローランサン
《二人の少女》
1923年、64.9×54.2cm
アーティゾン美術館
 
[会場内解説:ローランサンと日本]
 ローランサンの作品が日本で初めて紹介されたのは、1914(大正3)年に東京の日比谷美術館で開催された「DER STURM 木版画展覧会」だった。このとき展示されたのは木版画だった。この展覧会には、70点を超える作品が展示されており、25番にローランサンの作品「無題(乗馬服の婦人)」が記載されている。その後、1920年代になると油彩画が日本に持ち込まれ、紹介されることになる。
 《二人の少女》は、1925(大正14)年4月22日から27日まで、日本橋の三越呉服店で開催された「仏国現代大家新作画展覧会」に「友」という題名で出品された。これは、フランスの文筆家で画廊も経営していたシャルル・ヴィルドラック(1882-1971)の尽力により開催された展覧会だった。(中略)
 『中央美術』1925年5月号にはこの展覧会の出品目録が掲載されており、出品作品が全78点だったことがわかる。出品目録では、出品番号73番のローランサンの作品タイトルは「友」となっている。同じ展覧会が5月8日から13日まで三越の大阪店で開催された。
 1923年に制作された《二人の少女》がすぐに日本で紹介されていたことは注目に値する。この作品は、当時最新のフランス美術だった。その後も日本にとどまり、日本で見ることのできるローランサン作品でありつづけた。
 
 
 2024年は、ローランサン油彩作品の日本初公開から100年目となる。
 本展の裏の主役は、アーティゾン美術館が所蔵するこの作品であるのかも。


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