『THE ART NEWSPAPER』の記事「Visitor Figures 2023:top 100 art museums」を見る。
2023年の入場者数トップ100の美術館の合計は、17,600万人。
2022年の14,100万人に対し、24%増。
2021年の7,100万人に対し、147%増。
2020年の5,400万人に対し、225%増。
確実に増加しているものの、2019年の23,000万人と比べると、76%の水準にとどまっている。
ただ、各年の集計対象美術館は同じではなく、例えば2019年の上位ランクであった中国の美術館は、2021年以降は集計対象に含まれておらず、トップ100のマイナス幅がその分大きくなる。
そのため、コロナ禍からの回復状況を掴むには、個別傾向を見る必要がある。
以下、2023年の入館者数トップ20の美術館。
1位:8,860,000人
ルーヴル美術館、パリ
2022年対比増減率 +15%
(2022年:7,726,321人、1位)
(2021年:2,825,000人、1位)
(2020年:2,700,000人、1位)
2019年対比増減率 -8%
(2019年:9,600,000人、1位)
2位:6,764,858人
ヴァチカン美術館
2022年対比増減率 +33%
(2022年:5,080,869人、2位)
(2021年:1,612,530人、8位)
(2020年:1,300,000人、4位)
2019年対比増減率 -2%
(2019年:6,882,931人、3位)
3位:5,820,860人
大英博物館、ロンドン
2022年対比増減率 +42%
(2022年:4,097,259人、3位)
(2021年:1,327,120人、11位)
(2020年:1,275,466人、5位)
2019年対比増減率 -7%
(2019年:6,239,983人、5位)
4位:5,364,000人
メトロポリタン美術館、ニューヨーク
2022年対比増減率 +67%
(2022年:3,208,832人、8位)
(2021年:1,958,000人、4位)
(2020年:1,124,759人、9位)
2019年対比増減率 -17%?
(2019年:6,479,548人、4位)
5位:4,742,038人
テート・モダン、ロンドン
2022年対比増減率 +22%
(2022年:3,883,160人、4位)
(2021年:1,156,037人、16位)
(2020年:1,432,991人、3位)
2019年対比増減率 -22%
(2019年:6,098,340人、6位)
6位:4,180,285人
国立中央博物館、ソウル
2022年対比増減率 +23%
(2022年:3,411,381人、5位)
(2021年:1,262,562人、12位)
(2020年:773,621人、19位)
2019年対比増減率 +25%
(2019年:3,354,161人、15位)
7位:3,871,498人
オルセー美術館、パリ
2022年対比増減率 +18%
(2022年:3,270,182人、6位)
(2021年:1,044,365人、18位)
(2020年:867,274人、15位)
2019年対比増減率 +6%
(2019年:3,651,616人、13位)
8位:3,829,812人
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
2022年対比増減率 +18%
(2022年:3,256,433人、7位)
(2021年:1,704,606人、5位)
(2020年:730,408人、21位)
2019年対比増減率 -6%
(2019年:4,074,403人、10位)
9位:3,337,550人
プラド美術館、マドリード
2022年対比増減率 +36%
(2022年:2,456,724人、13位)
(2021年:1,175,296人、13位)
(2020年:852,161人、16位)
2019年対比増減率 -5%
(2019年:3,497,345人、14位)
10位:3,273,753人
エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク
2022年対比増減率 +16%
(2022年:2,812,913人、10位)
(2021年:1,649,443人、6位)
(2020年:968,604人、11位)
2019年対比増減率 -34%
(2019年:4,956,529人、8位)
11位:3,110,000人
ヴィクトリア&アルバート美術館、ロンドン
2022年対比増減率 +31%
(2022年:2,370,261人、14位)
(2021年:857,742人、24位)
2019年対比増減率 -21%
(2019年:3,932,738人、11位)
12位:3,096,508人
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
2022年対比増減率 +14%
(2022年:2,727,119人、11位)
(2021年:708,924人、30位)
(2020年:1,197,143人、8位)
2019年対比増減率 -48%
(2019年:6,011,007人、7位)
13位:2,900,000人
国立ロシア美術館、サンクトペテルブルク
2022年対比増減率 +9%
(2022年:2,651,688人、12位)
(2021年:2,260,231人、2位)
(2020年:1,203,324人、7位)
2019年対比増減率 +21%
(2019年:2,394,400人、25位)
14位:2,839,509人
ニューヨーク近代美術館
2022年対比増減率 +30%
(2022年:2,190,440人、17位)
(2021年:1,160,686人、15位)
(2020年:706,060人、25位)
2019年対比増減率 +43%
(2019年:1,992,121人、31位)
15位:2,797,616人
M+、香港
2022年対比増減率 +38%
(2022年:2,034,331人、18位)
(2021年:371,082人、81位)
(2021年 新規オープン)
16位:2,727,677人
サマセット・ハウス、ロンドン
2022年対比増減率 +16%
(2022年:2,346,580人、15位)
(2021年:984,978人、19位)
(2020年:724,310人、24位)
2019年対比増減率 -4%
(2019年:2,841,772人、19位)
17位:2,717,857人
ウフィツィ美術館、フィレンツェ
2022年対比増減率 +22%
(2022年:2,222,692人、16位)
(2021年:969,695人、20位)
(2020年:659,043人、27位)
2019年対比増減率 +15%
(2019年:2,361,732人、26位)
18位:2,702,824人
アムステルダム国立美術館
2022年対比増減率 +53%
(2022年:1,766,084人、23位)
(2021年:625,000人、36位)
(2020年:675,000人、26位)
2019年対比増減率 +0%
(2019年:2,700,000人、21位)
19位:2,621,696人
ポンピドゥー・センター、パリ
2022年対比増減率 -13%
(2022年:3,009,570人、9位)
(2021年:1,501,040人、10位)
(2020年:912,803人、12位)
2019年対比増減率 -20%
(2019年:3,273,867人、16位)
20位:2,561,000人
ヴァヴェル城、クラクフ
2022年対比増減率 +43%
(2022年:1,791,000人、22位)
2019年対比増減率 データなし
以下、日本の美術館および私的に気になる海外美術館をピックアップ。
21位:2,250,758人
国立新美術館、東京
2022年対比増減率 +61%
(2022年:1,400,096人、30位)
(2021年:881,733人、22位)
(2020年:413,316人、49位)
2019年対比増減率 +17%
(2019年:1,921,526人、32位)
22位:2,230,939人
金沢21世紀美術館
2022年対比増減率 データなし
2019年対比増減率 -14%
23位:2,186,841人
スコットランド国立美術館、エディンバラ
2022年対比増減率 +11%
(2022年:1,973,751人、19位)
(2021年:660,741人、34位)
(2020年:444,437人、41位)
2019年対比増減率 -1%
(2019年:2,201,024人、28位)
24位:2,100,000人
トレチャコフ美術館、モスクワ
2022年対比増減率 +10%
(2022年:1,910,000人、20位)
(2021年:1,580,819人、9位)
(2020年:894,374人、13位)
2019年対比増減率 -26%
(2019年:2,835,836人、20位)
25位:2,023,642人
ワルシャワ王宮
2022年対比増減率 +15%
(2022年:1,755,267人、24位)
(2021年:1,168,821人、14位)
(2020年:650,000人、28位)
2019年対比増減率 +61%
(2019年:1,256,920人、54位)
27位:2,013,974人
アカデミア美術館、フィレンツェ
2022年対比増減率 +41%
(2022年:1,428,369人、29位)
(2021年:446,143人、61位)
2019年対比増減率 +18%
(2019年:1,704,776人、39位)
29位:1,924,482人
東京都美術館
2022年対比増減率 +27%
(2022年:1,509,970人、26位)
(2021年:1,049,183人、17位)
(2020年:510,117人、38位)
2019年対比増減率 -33%
(2019年:2,873,806人、18位)
35位:1,688,509人
美術史美術館、ウィーン
2022年対比増減率 +25%
(2022年:1,345,617人、36位)
(2021年:576,204人、43位)
2019年対比増減率 -8%
(2019年:1,839,027人、33位)
36位:1,686,766人
ゴッホ美術館、アムステルダム
2022年対比増減率 +24%
(2022年:1,364,023人、35位)
(2021年:366,359人、82位)
(2020年:516,990人、37位)
2019年対比増減率 -20%
(2019年:2,100,000人、29位)
72位:952,290人
ボストン美術館
2022年対比増減率 +34%
(2022年:709,019人、79位)
(2021年:477,427人、57位)
(2020年:249,881人、100位)
2019年対比増減率 -25%
(2019年:1,261,623人、53位)
80位:883,596人
東京国立近代美術館
2022年対比増減率 +71%
2019年対比増減率 データなし
個々の美術館でも、2022年対比で確実な増加を記録。
ただ、2019年対比では、マイナスが多い。
上位20美術館では、2019年対比、3分の1が増加、3分の2が減少。
ロンドンは、戻っていない。
パリは、だいぶ戻ってきている。2024年の五輪でさらなる飛躍か。
アムステルダムは、フェルメール展効果だろうか国立美術館こそ戻しているが、ゴッホ美術館は戻っていない。
アメリカは、ロンドンほどではないが、戻っていない。
そんななかフィレンツェは、2019年を大きく上回り、完全復活に見える。街は旅行者でコロナ禍前以上に混雑しているのだろう。
アジアでは、韓国の国立中央博物館や香港のM+が、順調に増加を記録している。
(本年も中国の美術館は含まれず、台湾の国立故宮博物院も含まれなかったようだ。)
一方、日本の美術館。
国立新美術館、東京都美術館、東京国立近代美術館がランクイン。
東京国立博物館(2022年32位)、国立西洋美術館(2022年74位)の名前がないのは、101位以下となったのか、集計対象外なのか。
これら美術館は、特別展の人気に左右されるところが大きいが、その特別展は、ヘビーユーザーは変わらないとしてもライトユーザーが戻ってきていない、というのが2023年の状況と言えるだろうか。
そんななか、金沢21世紀美術館がランクイン。集計対象となりさえすれば上位にランクされる人気の美術館であるが、2023年は2019年の水準に及ばないようだ。2024年は能登地震の影響も懸念されるところ。
コロナ禍から5年目。
全体として、2024年は2019年の水準に戻すことができるだろうか。
The Economist(March 30th 2024)の記事は入館料の値上げだけを取り上げた記事なので、入場者数と併せると、美術館が直面している問題がかなり分かるような気がします。コロナ禍、戦争などに起因する入場者の激減、インフレによる人件費増などに対処するためにも、入館料を値上げする必要に迫られたのでしょう。コロナ禍の打撃の深刻さを改めて痛感させられます。
美術館の収益構造は、規模、公費支援の有無などにより異なるのですが、美術館の将来を考えるには欠かせないテーマですね。
コメントありがとうございます。
ご紹介いただいたThe Economistの記事をネットで見ました。
欧米の美術館の入館料も、いくつか確認してみましたが、相当な水準になっていますね。
日本の美術館・博物館の大型企画展の一般観覧料金は2,000〜2,200円が標準的となっています。
美術館・博物館や企画展の収益構造のことはよく分からないですが、入場者数減少&コスト増加傾向(&処遇改善も?)を踏まえると、入館料がある程度の水準になるのはやむを得ないような気もします。