東京でカラヴァッジョ 日記

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ポーラ美術館のメアリー・カサット《劇場にて》を見る。

2023年11月08日 | 展覧会(西洋美術)
 秋の箱根に宿泊旅行に行く。
 ポーラ美術館にも行く。7年ぶり2度目である。
 
 ポーラ美術館では、2023年7月15日〜12月3日を会期として「シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画 - 横山大観、杉山寧から現代の作家まで」展が開催されている。同館では13年ぶりだという日本画を特集する展覧会である。
 
 しかしながら、美術館に滞在できる時間は、50分足らず。
 
 展示室1〜3と美術館のメイン展示室を利用している日本画の展覧会については、駆け足で何が展示されているか確認する程度で済ませ、お目当ての西洋美術コレクションの展示室に向かう。
 
 展示室4と5で展示されている西洋美術は、絵画・彫刻が20点に満たず、同館が誇るコレクションのごくごく一部に過ぎないが、なかなか見応えがある。
 
 
ポーラ美術館コレクション選
2023年7月15日〜12月3日
ポーラ美術館
 
 
 展示室4は、新収蔵作品のお披露目展示。
 
 
メアリー・カサット(1844-1926)
《劇場にて》
1878-79年頃、65.2×53.0cm
 
 2022年10月のクリスティーズのオークションにて、約750万ドルにて落札した作品。カサットのオークションにおける過去最高額だという。
 
 アメリカ人の女性画家メアリー・カサットは、ドガとの出会いをきっかけとして、1879年の第4回印象派展に参加する。以降も第5・6・8回展に参加している。
 
 本作は、パリのオペラ座を描いたシリーズの1点であり、関連する作品がワシントン・ナショナル・ギャラリーやボストン美術館などに収蔵されているという。
 
 桟敷席に座っている女性の後ろには鏡があり、シャンデリアをはじめとする劇場の情景は、その鏡に映し出されたものとして描写されています。
 観客の描かれていない鏡像としての情景は抽象的に表現されているいっぽう、女性の表情やアクセサリーははっきりと描かれています。
 また、モデルの上半身を覆うように描かれた装飾的な扇が、画面に華やかな彩りをもたらしています。
(ポーラ美術館の2023年6月プレスリリースより)
 
 背景は、鏡に映った像なのか。
 スケールは違うけど、マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年、コートールド美術館蔵 と同じ趣向だ。
 
 
 
 同展示室には、ドガ2点およびロートレック1点が関連展示される。
 
ドガ
《踊りの稽古場にて》
1884年頃、39.9×73.0cm
 
 
ドガ
《スパニッシュ・ダンス》
1885-90年頃、高さ43.0cm
 
 
ロートレック
《楽屋の踊り子》
1885年頃、115.3×100.5cm
 
 いずれもバレエの踊り子。
 ロートレック作品に描かれるシルクハットの男性の存在が、やはり不気味。
 
 
 
【参考(展示作品ではない)】
メアリー・カサットのオペラ座シリーズ
 
《扇を持つ女性》
1878-79年、85.5×65.1cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
 
《桟敷席》
1878-80年頃、79.8×63.8cm
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
 
《桟敷席にて》
1878年、81.3×66.0cm
ボストン美術館
 
 最後に掲載のボストン美術館の作品は、2016年の横浜美術館「メアリー・カサット展」にて来日している。
 オペラグラスを舞台に向け観劇に集中している女性。
 そして、その女性にオペラグラスを向ける男性が描かれる。
 カサットの代表作の一つで、皮肉たっぷりの作品であった。
 
 
 
【参考(展示作品ではない)】
日本の美術館が所蔵するメアリー・カサット作品
 
 私が認識する範囲であるが、日本の美術館では、アーティゾン美術館と東京富士美術館がメアリー・カサット作品を所蔵する。
 
《娘に読み聞かせるオーガスタ》
1910年、116.2×88.9cm
アーティゾン美術館
 
《日光浴(浴後)》
1901年、74×93cm
アーティゾン美術館
 
《団扇を持つバラ色の服の女》
1889年頃、59.8×49.5cm
東京富士美術館
 
 
 ポーラ美術館の作品は、初めての1870年代の作品であり、貴重であると言えるだろう。


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