日本美術をひも解く - 皇室、美の玉手箱
2022年8月6日〜9月25日
東京藝術大学大学美術館
前期1:〜8/28、前期2:〜9/4
後期1:8/30〜、後期2:9/6〜
宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する皇室の珠玉の名品74件に、東京藝術大学のコレクション8件を加えた82件。
2021年に宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された全5件が出品される。
・小野道風《屏風土代》(後期2)
・《春日権現験記絵》
(巻四:前期2、巻五:後期2)
・《蒙古襲来絵詞》
(前巻:前期2、後巻:後期2)
・狩野永徳《唐獅子図屏風》(前期1)
・伊藤若冲《動植綵絵》30幅中10幅(後期1)
(芍薬群蝶図、梅花小禽図、向日葵雄鶏図、紫陽花双鶏図、老松白鶏図、芦鵞図、蓮池遊魚図、桃花小禽図、池辺群虫図、芦雁図)
前期を訪問。
以下、特に楽しんだ作品。
《蒙古襲来絵詞》前巻
鎌倉時代・13世紀
初見。
前期展示は、全2巻中の第1巻(後期は第2巻が展示予定)。
第1巻は、詞が9、絵が10場面からなるようだ。
そのうち、本展での公開は、詞4番目と絵5〜7番目と、第1巻の全体の長さベースで言うと、2割強となるようだ。
ごく一部しか見ていないこととなるが、欠失、錯簡、後世の加筆が多そうな印象を受ける。
絵5
後方から駆けつける白石六郎通泰の手勢と、その前に馬を射られても起き上がって駆け出す季長の旗指・資安まで。
絵6
敵に追いすがる三井三郎資長と退却する敵軍
絵7
馬を射られた季長と射かける敵、退却する敵軍
《絵師草紙》
鎌倉時代・14世紀
過去何度か見ている本絵巻(全1巻)。
前期展示では、前半場面の公開。
貧しい生活を送る宮廷絵師のもとに、ある日突然、伊予国に知行地を賜るとの吉報が届く。
絵師一家は大喜び、親類縁者や弟子たちを集めて、飲めや歌えやの宴を開く。
後期は場面替え予定。失意の絵師が描かれる。
岩佐又兵衛
《をくり(小栗判官絵巻)》巻一
江戸時代・17世紀
全15巻、全長約324メートルにも及ぶ大作。
2015年の三の丸尚蔵館「絵巻を愉しむ」展で初めて実見。第1・7・8・11・13・15巻が数場面ずつ公開、その奇想天外のストーリー展開と、又兵衛風のくどすぎる場面展開に、虜になる。
2019年の東博「御即位30年記念 両陛下と文化交流」展では、第10巻の19段のみの公開と、物足りなかった。
前期展示は、第1巻の2〜6段(全9段中)公開。
小栗の誕生が描かれるプロローグ的な巻。
後期は第2巻が展示予定だが、本格的なストーリー展開/グロテスク描写はまだ先。
本展における展示巻の選択には不満がないわけではないがそれでも又兵衛風の描写を楽しむ。
狩野永徳・狩野常信
《唐獅子図屏風》
桃山時代・16世紀、江戸時代・17世紀
2019年に初めて見てから、2020年に見て、そして今回が3度目の鑑賞。
大画面の唐獅子像。
桃山時代と江戸時代、約100年の時を経た唐獅子像の饗宴。
時代が求めていた唐獅子像の違いを楽しむ。
葛飾北斎《西瓜図》
&
高橋由一《鮭》
1839年&1877年頃
北斎の《西瓜図》。シュールな感じで、好み。
画面下部には、半分に切ったスイカ、その赤白交じる断面に被せられた和紙、和紙の上には包丁が置かれる。
画面上部には、縄に吊るされたスイカの皮が、赤と白1本ずつ、くねくねしながら垂れ下がる。
隣りに展示されるのは、由一の《鮭》。
日本近代洋画の名作の一つ、日本人であれば誰でも知っている(?)、吊るされた新巻鮭。
スイカvs新巻鮭。
この組み合わせは、最高。素晴らしい仕事!
その他
《春日権現験記絵》巻4(後期は巻5)
《北野天神縁起絵巻(三巻本)》巻中(後期は巻下)
尾形光琳筆《西行物語絵巻》巻3(後期は場面替え)
など、絵巻を中心に楽しむ。
絵巻は、保存上の理由か、展示スペース上の理由もあるのか、ごく一部の巻の展示で、公開する場面もその一部、となりがち。
一度にもっとたくさん観ることができる機会を、新施設移行後の三の丸尚蔵館は設けてくれるだろうか。
本展に対しては、江戸時代以前の作品が高密度で並ぶ空間を、勝手に想像していたが、だいぶ違った。
明治時代以降の作品が多く(出品目録記載の制作年代ベースでは82点のうち48点)て、総じてゆったりめの配置となっている。
【本展の構成】
序章 美の玉手箱を開けましょう
1章 文字からはじまる日本の美
2章 人と物語の共演
3章 生き物わくわく
4章 風景に心を寄せる
後期も訪問予定、9月6日以降としたい。
本展は、事前予約制ではない(現状)。
若冲が登場する9月の金・土曜日は、夜間開館あり。