落合芳幾
2018年8月3日~8月26日
太田記念美術館
落合芳幾(おちあい よしいく、1833~1904)は、歌川国芳の門人で、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師。月岡芳年と競作した「英名二十八衆句」という血みどろ絵や、明治の事件を報道した新聞錦絵などで知られる。
本展は、その画業の全貌を紹介する「世界で初めての展覧会」とのこと。
本展の構成
1.花咲く多彩な才能
2.奇想の表現-歌川国芳の継承者
3.血みどろ絵-月岡芳年との競作
4.新時代の美女たち
5.新しいメディアへの挑戦-新聞錦絵と雑誌
6.衰えぬ晩年-役者絵への回帰
本展では、幕末に月岡芳年と競作した「英名二十八衆句」28点のうち落合芳幾が担当した14点全てや、明治に入ってからの東京日々新聞の新聞錦絵7点のほか、戯画、美人画、武者絵、役者絵、横浜絵などさまざまなジャンルの浮世絵が出品されている。
印象に残る作品3選。
美術館サイトに掲載されている作品解説(会場のキャプションと同一内容)とともに。
《時世粧年中行事之内-陽来復花姿湯》
松本楼という吉原の妓楼の内部にある風呂場の様子。風呂場には、遊女に交じって、幼い禿や下働きの男の姿も見える。銭湯のように石榴口が無く、浴槽は開放的な作りになっていたようだ。左側の部屋には、恋文を広げて回し読みしている遊女たちがいる。
遊女18名と禿1名の裸体。
《時世粧年中行事之内-競細腰雪柳風呂 》
銭湯の様子を詳細に描いた、資料的にも興味深い作品。右端が番台で、そこでおひねりを払って入り、緑の薄縁を敷いた板間で服を脱ぐ。洗い場では小さな子供から老婆まで、 大勢の女性たちでにぎわっているが、なにか揉め事があったのだろう。桶を振り上げて暴れる女性を、周囲の人たちが懸命になだめている。左端の、久米仙人の絵が張られたところが石榴口で、ここをかがんで、浴槽に入った。
適齢だろう女性17名の裸体と、何故か画面ど真ん中の老女1名のこれ以上はない老女らしい裸体。
なお、解説にあるとおり、当時の銭湯の造り〜番台があって、緑の薄縁を敷いた板間で服を脱ぎ、続く板間が洗い場で、板で覆いをしたその向こうに浴槽がある〜も興味深い。
《時世粧年中行事内-酌婦天地人極製》
1階では酒宴が、2階では遊女たちが身支度をしたり、くつろいだりしている。(省略)左下、建物の1階奥には手水(お手洗い)を使う女性の姿が描かれているが、この場所が 描写されているのは珍しい。
何故か扉を開けたまま。
エロティック系の作品ばかりを挙げた。
落合芳幾は、浮世絵史上重要な絵師の1人なのだろう。
けれども、浮世絵万年初心者の私にとって、本展出品作を見る限り、ちょっと面白みが足りないなあ、が正直な印象。
《東京日々新聞 八百五十一号》
当初は、東京小川町の小林某が書斎で酒を飲んでいる最中、台湾出兵で戦死した義弟・斎藤某の霊が現われたという話だったが、人物たちの名前、居住地、戦死などの具体的な情報を削除した説明文に改めて刊行されたという。