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平成30年新指定 国宝・重要文化財(東京国立博物館)

2018年04月23日 | 東博総合文化展
平成30年新指定 国宝・重要文化財
2018年4月17日~5月6日
東京国立博物館  本館8室・11室
 
 
   本展では、平成30年に新たに指定される国宝5件、重要文化財50件と、追加・統合指定された重要文化財3件の、58件を展示します(写真パネル展示8件含む)。
 
 
   以下、印象に残る作品を記載する。
 
 
1)重文《紙本墨画果蔬涅槃図》
伊藤若冲筆
江戸時代・18世紀
京都国立博物館蔵
 
   伊藤若冲(1716~1800)は江戸時代中期の京都で特異な画風をもって活躍した絵師。本図は種々の野菜で涅槃図を表したもので、戯画の一種とも言えるが、 錦小路の青物問屋の家に育った若冲の面目躍如たるものがあり、水墨技法を駆使した若冲の代表作のひとつである。(江戸時代)
 
 
   事前情報なしで訪問、本館8室に入室してすぐに目に入ったのが、若冲《果蔬涅槃図》。野菜の一つ一つが愛おしい、私的ベスト若冲の一つ。思いもしない場で再会できて嬉しい。重要文化財に指定されたのだ。
 
 
 
2)重文《紙本墨画淡彩瀑布図》
円山応挙筆
江戸時代・1772年
京都・相国寺蔵
 
   我が国の写生派を代表する円山応挙の作品が数多く遺されていた滋賀・円満院に伝来した作品。安永元年(1772)、応挙四十歳の筆と判断される。紙継ぎのない特大の一枚紙に描かれており、自然景物の圧倒的な存在感を表出する技能に長けた応挙の代表作のひとつに数えうる大作である。(江戸時代)
 
 
   縦362.8cmの大型掛軸。東博のスペースではその丈は収まらず、下部は曲げての展示、離れて見ると上部が見えない、上部を見るためにはガラスケースに近づく必要がある。そうか、「紙継ぎのない特大の一枚紙」なのか、国立新美術館の展示室で見てみたいもの。
 
 
 
3)国宝《紙本著色日月四季山水図》
室町時代・15世紀 
大阪・天野山金剛寺蔵
 
   荒海を囲む山並みに四季の循環を表し、空には日月を配した室町時代のやまと絵屏風。動感あふれる構成に大らかな加飾と鮮やかな色彩が共鳴して独特の迫力を生み出している。我が国の絵画の特質が顕著な優品である。(室町時代)

 
   本企画のメインビジュアル。2015-16年のサントリー美術館「水-神秘のかたち」以来2回目の鑑賞。波頭やうねり、その盛り上がり。左隻左端の滝のしぶき。
 
 
 
4)重文《京都盲唖院関係資料》
明治~昭和時代・19世紀~20世紀
京都府蔵
 
   京都府立盲学校及び聾学校の前身である京都盲唖院は、明治11年(1878)に京都に創立された日本最初の公立の特別支援学校である。本資料群は京都盲唖院及び後継学校に伝来したもので、教材・教具類、典籍・教科書類、凸字・点字資料、生徒作品など学校教育で使用された多様な資料群から構成される。近代の盲・聾教育において先駆的な役割を果たした京都盲唖院の歴史及び同校にて実践された教育内容を明らかにする資料群であり、我が国の盲・聾教育史ひいては近代教育史研究上に学術価値が高い。(明治時代~昭和時代)
 
 
   12点が並ぶ。
   《扁額「日本最初盲唖院」》明治13年は、院の玄関にかけられた横長の額。
   《発音起源図》明治11年は、「母音五音およびウ段各文字13音の発音につき、口の開合(開き方)、舌や歯の形だけでなく、顔の表情、目の勢い、首の角度などもあわせ描き、発音の根源を示」した図を掛軸装としたもの。
   《手算法図》明治11年は、「指のかたち、掌の表裏、左手・右手の別、手の位置」で「9999までの数を表現した」図を掛軸装としたもの。
   《京都盲唖院啞生図画成績品》明治31年頃は、1年生から4年生(年齢は16〜17歳)各1名計5点の図画を貼り付けて掛軸としたもの。
 
 

5)重文《木造阿弥陀如来立像》
快慶作
鎌倉時代・13世紀
滋賀・圓常寺蔵
 
   鎌倉時代を代表する仏師快慶の晩年、法眼時代の製作であることが、足枘の銘文により判明する阿弥陀如来像。快慶が数多く造った阿弥陀如来像の中でもすぐれた出来栄えを示す像として注目される。昨年奈良国立博物館で開催された快慶展で成果が示された、近年の快慶研究の進展を踏まえて、重要文化財に指定する。(鎌倉時代)
 
 
   快慶作の新・重文「阿弥陀如来立像」、外見・大きさは近くに並ぶ他の国宝・重文新指定の仏像彫刻と比べると地味である。
   昨年の奈良国立博物館「快慶」展では通期出陳、第7章、出品番号は85、一番最後の展示室、「阿弥陀如来立像」ばかりが並んでいた展示室にあったようだ。「快慶研究の進展」はいいけど、重文新指定は1点止まりなのか。
 
 
 
パネル展示より
 
 
   重文《キトラ古墳壁画》五面は、当然、パネル展示。なお、重文《奈良県キトラ古墳出土品》は、一部実物が出品されている。
 
 
 
重文《南風》
和田三造筆
1907年
東京国立近代美術館蔵
 
   和田三造(1883~1967)は黒田清輝に師事した我が国洋画壇の重鎮である。本作は伊豆半島沖で遭難したことに着想した作品で、明治40年の第1 回文部省美術展覧会に出品し最高賞の二等賞を受賞した。和田の出世作であると同時に、我が国の洋画における外光主義の記念碑的な位置にある作品である。(近代)


   実物は東京国立近代美術館の常設展に5/27まで展示中とのこと。早速竹橋に移動し写真撮影してくる。
 


   分野も時代も所蔵者も異なる多様な品々が、ただ同じ年に国宝・重文に新指定されたということだけで一室(彫刻作品は別の室)に集まる本企画。今年も大いに楽しむ。
 
 
 
円山応挙筆、重文《紙本墨画淡彩瀑布図》
 
重文《京都盲唖院関係資料》より
 


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