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《ビルケナウ》 - 【画像】ゲルハルト・リヒター展(東京国立近代美術館)

2022年06月13日 | 展覧会(現代美術)
ゲルハルト・リヒター展
2022年6月7日〜10月2日
東京国立近代美術館
 
 
 ドイツ・ドレスデンの出身、1932年2月生まれで本年90歳となった、現代アートの巨匠ゲルハルト・リヒターの個展。
 
 ゲルハルト・リヒター財団および作家本人が所蔵する作品を中心に構成される。
 
 本展の目玉作品は「リヒター近年の最重要作品」、幅2.0m・高さ2.6mの油彩4点からなる抽象画《ビルケナウ》。
 
 リヒターは、1960年代以降、ホロコーストという主題に何度か取り組もうと試みたものの、この深刻な問題に対して適切な表現方法を見つけられず、断念してきました。
 2014年にこの作品を完成させ、自らの芸術的課題から「自分が自由になった」と感じたと作家本人が語っているように、リヒターにとっての達成点であり、また転換点にもなった作品です。
 
 2019年12月にリヒター財団を創設したのは、《ビルケナウ》を散逸させないことがきっかけとなったという。
 
 
 
 入場してすぐ左手に進むと、《ビルケナウ》ルーム。
 
 油彩作品《ビルケナウ》4点。
 
 全く同じサイズの複製写真4点《ビルケナウ(写真ヴァージョン)》が、油彩作品《ビルケナウ》と向かい合う。
 
 横長の大きな鏡4枚からなる《グレイの鏡》が、油彩と複製写真の《ビルケナウ》、展示室、そして鑑賞者を映し出す。
 
 小さな写真4点《1944年夏にアウシュヴィッツ強制収容所でゾンダーコマンド(特別労務班)によって撮影された写真》が、《ビルケナウ》の左隣の壁にて寄りそう。
 
 
ゲルハルト・リヒター
《ビルケナウ》
2014年、各200×260cm
ゲルハルト・リヒター財団
 
 これら絵画の下層には、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で密かに撮られた(囚人が隠し撮りした)4枚の写真イメージが描かれています。
 しかし黒と白、ところどころ赤と緑の絵具を用いて塗り込められた絵画面からは、写真イメージの痕跡を見出すことはできません。
 スキージによってならされたためか、微細な傷がつきつつも光沢のある表面は、鉛、もしくはなめされた皮のような質感を思わせます。
 私たちはこの作品の名前と、絵画の下層に描かれているイメージの複製写真を手がかりに、抽象的な絵具の壁を越えて、これら見えないイメージ、抑圧された出来事を想像するよう迫られます。
 その点で、滲み出るかのように画面に点在する赤と緑の色彩はきわめて示唆的です。
 
 
《ビルケナウ》(937-1)
 
 
《ビルケナウ》(937-2)
 
 
《ビルケナウ》(937-3)
 
 
《ビルケナウ》(937-4)
 
 
 横長の大きな鏡4枚からなる《グレイの鏡》の右端の1枚。
 《ビルケナウ》と鑑賞者を映し出す。
 
 
 《グレイの鏡》の左端の1枚。
 《ビルケナウ(写真ヴァージョン)》と鑑賞者を映し出す。
 
 
 
 本展は一部作品を除き写真撮影可能。
 会期最初の土曜日の午後の時間帯の訪問で、当日券を購入。
 時間指定(1時間単位)の整理券を渡されて入館待ち列に着くが、それほど待つことなく入館する。
 展示室内は盛況。


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