国立西洋美術館リニューアルオープン記念
自然と人のダイアローグ
フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで
2022年6月4日~9月11日
国立西洋美術館
ドイツ・エッセンに所在するフォルクヴァング美術館と国立西洋美術館との共同研究・共同開催による二部制の展覧会。
国立西洋美術館で開催される第2部は、「自然と人の対話(ダイアローグ)」から生まれた近代の芸術の展開をたどる4章構成。
1:空を流れる時間
2:〈彼方〉への旅
3:光の建築
4:天と地のあいだ、循環する時間
出品作は、フォルクヴァング美術館(寄託・貸与含む)から37点、国立西洋美術館(寄託含む)から63点、その他国内から2点の計102点。
本展は、フォルクヴァング美術館所蔵作品を引き立て役として、国立西洋美術館所蔵作品の魅力、新たな楽しみ方を伝えようとしている展覧会なのではないか。
記事その2は「国立西洋美術館所蔵作品を楽しむ」。
以下、国立西洋美術館所蔵作品を画像とともに記載する。
1 アクセリ・ガッレン=カッレラ
アクセリ・ガッレン=カッレラ
《ケイテレ湖》
1906年、61×76.2cm
今回一番驚いた出品作が本作。
2021年に国立西洋美術館が購入した新収蔵作品で、初展示。
アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865-1931)は、初めて名を聞くが、フィンランドの国民的画家であるらしい。
民族叙事詩『カレワラ』を画題とした作品を多く制作しており、本作もその一つで、ロシア支配下にあったフィンランドの独立運動にも寄与した作品とのこと。
スイスの国民的画家で世紀末美術の巨匠ホドラーの風景画《モンタナ湖から眺めたヴァイスホルン》1915年、フォルクヴァング美術館 と並んで展示される。
ところで「ホドラー展」を1975年・2014年と2回も開催している国立西洋美術館だが、ホドラーを1点も所蔵していない。今後の名品の新収蔵を期待する。
2 ポール・シニャック
ポール・シニャック
《サン=トロペの港》
1901-02年、131×161.5cm
フォルクヴァング美術館の第1部の展覧会では、国立西洋美術館からの主要出品作として、意外にも、本作が取り上げられていた。
その理由は、本作は、元カール・エルンスト・オストハウスのコレクション、元フォルクヴァング美術館のコレクションにあったから。
国立西洋美術館サイトにて、来歴を確認する。
Karl-Ernst Osthaus, Hagen;
Museum Folkwang, Essen;
Marlborough Fine Art, London;
Purchased by the NMWA, 1988.
いつ、何故、フォルクヴァング美術館から出ることになったのか。
それは確認できていない(図録には記載があるのかも)。
フォルクヴァング美術館の《ポン・デ・ザール橋》1912/13年 と共演する。
《サン=トロペの港》は、今まで何度か常設展示で見ているが、今回、その大きさに気づくとともに、魅力的な作品であることを認識する。
3 ギュスターヴ・モロー
ギュスターヴ・モロー
《聖なる象(ペリ)》
1882年、水彩、57.0×43.5cm
ギュスターヴ・モロー
《聖チェチリア》
1885-90年頃、水彩、16.0×19.0cm
モローの水彩の小品2点で、前者は1996年の購入、後者は松方コレクション。
モロー作品は、大サイズの油彩よりも、小サイズの水彩の方がその良さがよく分かる、という話を聞いたことがある。
本作2点も、これまでも見たことはあると思うが、小サイズの水彩だからこその魅力に、今回ようやく気づく。
象徴主義の画家モローのこの水彩2点が、ルドンの国立西洋美術館所蔵のリトグラフをわずかなお供として、フォルクヴァング美術館のゴーガン《扇を持つ娘》と向かい合っている。
4 ジョヴァンニ・セガンティーニ
ジョヴァンニ・セガンティーニ
《羊の剪毛》
1883-84年、117×216.5cm
旧松方コレクションで、2008年に兵庫県の個人から購入。
前所蔵者は、1934年の東京府美術館の松方氏蒐集欧州絵画展覧会で購入し、ずっと自宅に飾っていたが、引き継いだ息子も高齢となり、手放すならば国立西洋美術館にと、相場より格段に安く譲ってもらったとのこと(芸術新潮2009年2月号)。
ゴッホ《刈り入れ》の左側の壁に、セガンティーニの水彩画《花野に眠る少女》1884-85年(国立西洋美術館寄託)とともに展示される。
ゴッホ《刈り入れ》の本来の共演者は、ピサロ《収穫》なのだろうが、ピサロの展示位置の関係と私的好みから、セガンティーニを共演者と見做して応援する。
5 クロード・モネ
クロード・モネ
《舟遊び》
1887年、145.5×133.5cm
ゲルハルト・リヒター
《雲》
1970年、200×300cm
フォルクヴァング美術館
この空間は別世界。
《舟遊び》のなかで「空を流れる時間」を過ごす。
6 エンネ・ビアマン
エンネ・ビアマン
《睡蓮》
1927年頃、28.1×37.2cm
フォルクヴァング美術館
この1枚の小さなモノクロ写真が、国立西洋美術館の誇る「箱入り娘」
モネ
《睡蓮》
1916年、200.5×201cm
や、ルーヴル美術館の収蔵庫から発見され、2017年に日本に戻されて松方家から国立西洋美術館に寄贈された、痛々しい姿の大作
モネ
《睡蓮、柳の反映》
1916年、199.3×424.4cm
と共演する。
〈会場内解説〉
ビアマン(1898-1933)は独学で短い活動期間ながら、1920年代後半のドイツで起こった新しい写真運動、「新しい視覚」や新即物主義を代表する女性写真家です。対象に肉薄するそのクローズアップの手法は、本作では、一輪の花が秘める魔術的な生命力を開示させています。急速に評価を高めたビアマンですが、1933年に35歳で病死。残された作品の多くは、ナチス政権下、ユダヤ人であった家族がパレスティナへ移住する途上に没収されて紛失、現存が知られるのは400点ほどです。
フォルクヴァング美術館HPを見ると、ビアマンの写真が89点掲載されている。
本作のような花・植物のクローズアップ写真のみならず、子ども・人物、風景、静物など様々な写真が残されているようだ。
以上、2記事にて撮影可能な作品を主に記載したが、取り上げなかった作品(特に撮影不可の作品)にも魅力的な作品が少なからずある。
まずは国立西洋美術館の企画展再開を喜びつつの会期初日の訪問記録。
国立西洋美術館の会館の時は、興奮しました。地獄の門、考える人、カレーの市民、最初からもう頭がいっぱいになりました。
絵の方は、アルジェリア風のパリの女達
と睡蓮だけ覚えています。
いまはすっかり変わったそうですね。
博物館好きの私はもう上野まで行くのが
無理になりました。
いまはK様のブログを楽しみにしています。有難うございます。
コメントありがとうございます。
国立西洋美術館の一般公開開始は、昭和34年6月13日。
開館が近づくにつれて加熱したマスコミ報道の効果もあってか、開館当初の混雑ぶりは凄まじかったらしいですね。初年度の入場者数は58万人。入場料は一般50円・大学高校生30円・中小学生20円だったと聞きます。
当時は現在とは違って新館や企画展示室がなく本館のみで、展示面積は小さくて、密集度も高かったでしょう。
本館のみの時代、昭和50年代前半までは、企画展を開催するたびに、常設展示を撤去していたらしいですが、その分、「国立西洋美術館所蔵 松方コレクション展」と題した全国巡回展を毎年2箇所程度開催したようです。
引き続きよろしくお願いいたします。