今期(2023/5/23〜9/10)の「MOMATコレクション」展示より。
《草上の小憩》
1904年、92.0×137.5cm
東京国立近代美術館
1904年2月、冬の午後。
草の上でくつろぐ4人の少年少女たち。
モデルは画家の弟妹たちで、手前から幸、みつ、四郎、鶴三。
私的に初めて本作を知ったのは、2022年の練馬区立美術館「日本の中のマネ」展への出品による。
第3章「日本におけるマネ受容」における、「具体的作例に見出すマネ受容」の最も象徴的である作例として、同章のトップバッターを務めていた。
同章では、造形的影響関係について、「画家の言説やタイトルなどとの関連性から根拠の示せる作品」と「感覚的に関係性が捉えられる作品」が集められていたが、本作はまさしく前者。
題名からして、マネ《草上の昼食》のオマージュ。
舞台は、晩秋から冬の景色へ。
登場人物は、男2人女2人と同じだが、スキャンダラスな設定ではなく、散歩途中にごく自然に写真を撮ったかのような設定である。
三角形の構図も取り入れられている。
マネ《草上の昼食》
1863年、208.0×264.5cm
オルセー美術館
当時「画のための画」の信徒であったという画家は、本作について、次のとおり回想しているという。
「私はそのころ印象主義の描法、光線大気の描写などに相当興味を寄せていたので、この画には人物の描写が殆と済んでいる上に、なお光線を強めるつもりで黄色の線を軽くかけるなどの蛇足も加えられている」。
今期のMOMATコレクション展には、もう1点、石井柏亭の作品が展示されている。
石井柏亭
《ナポリ港》
1923年、60.3×72.7cm
東京国立近代美術館
2室「関東大震災から100年 1923年の美術」における、1923年の第10回二科展の出品作の一つとして展示されている。
会期初日の9月1日、関東大震災が起こり、開催中止となった二科展である。
画家は、1922年末頃に日本をたち、ニューヨークを経て、フランスに滞在する。2度目の渡欧である。フランスから各国に旅行する。イタリアには1923年春に旅行したようだ。約1年間滞在し、1924年1月に帰国する。
つまり、画家は東京在住にもかかわらず、関東大震災に遭遇していないのだ。
二科展の出品作品は、どうやら欧州から送ったらしい。
第10回二科展には、少なくとももう1点出品作があり、アーティゾン美術館が所蔵する《ソレント》のようである。
石井柏亭
《ソレント》
1923年、アーティゾン美術館
(アーティゾン美術館にて撮影)
アーティゾン美術館は、二科展には出品されていないかもしれないが、同時期に制作したイタリア風景画をもう1点所蔵している。
石井柏亭
《傘松(ナポリ風景)》
1923年、アーティゾン美術館
(アーティゾン美術館にて撮影)