東京でカラヴァッジョ 日記

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雑記(あれから1年)

2021年02月26日 | 展覧会(日記)
   国立博物館が翌日からの臨時休館を発表したのは、2020年2月26日。
 
   マスク不足などはあったものの、それまで他人事だと思っていたCOVID-19を初めて身近な危機として認識させられる。こんなこと、2011年3月以来だからね。
   職場や日常生活に影響が現れるのは、その後である。
 
   あれから1年。
 
   現在、東京・神奈川・埼玉・千葉の2回目の緊急事態宣言は、1/8から継続中であるが、美術館・博物館は、一部を除き開館を続けている。
 
   大倉集古館は、1/12から臨時休館であったが、「近日7日平均の新規感染者数が500人を下回っていることもあり」2/20から再開した。
   同館で開催中であった「海を渡った古伊万里-ウィーン、ロースドルフ城の悲劇」展の会期が延長。
   その分次回予定の展覧会が中止されるが、会期延長による次の巡回先(愛知県陶磁美術館)への影響はない模様。
 
海を渡った古伊万里
ウィーン、ロースドルフ城の悲劇
変更前:2020年11月3日〜21年1月24日
変更後:2020年11月3日〜21年3月21日
          (1月12日〜2月19日は臨時休館)
 
因州×備前 池田家の能面・能装束
変更前:2021年2月2日〜3月28日
変更後:中止
 
 
   神奈川・埼玉・千葉の県立美術館・博物館は、緊急事態宣言中の臨時休館を継続中。現時点では、3/7まで予定。
   神奈川県立近代美術館葉山館の「フランシス・ベーコン」展は、1/8の緊急事態宣言を受け、1/9〜1/11の3日間開催しただけで臨時休館入り。3/8以降の再開が期待されるが、私的には次の巡回先(渋谷区立松濤美術館)を待つつもり。
 
   一方、東京の都美術館・博物館は、緊急事態宣言中も開館を継続している。
   東京都美術館「吉田博展」、江戸東京博物館「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展」、東京都現代美術館の「石岡瑛子」展(2/14終了)、東京都庭園美術館「20世紀のポスター展」などの企画展も予定どおり開催されている。
 
   三菱一号館美術館では、ロンドンのテート美術館所蔵品による企画展「コンスタブル展」が2/20から始まった。イングランドがロックダウン中にもかかわらず、よく予定どおりの開催にこぎつけたものである。先方美術館関係者とは全てテレワークで来日無し、所蔵品が日本に来てからは全て日本側で対応しているのであろうか。海外でも借用先が1箇所であれば、これからも展覧会開催を期待して良いのかもしれない(ヴァチカンは駄目だったけど)。多くの海外借用先を前提とする展覧会は難しいだろう。
 
   そもそも美術館の経営自体が厳しくなっている。
 
   例えば岡山の大原美術館。入館料が収入の約8割を占めるという同館の2020年は、4月下旬から8月中旬まで136日間の臨時休館のほか、再開後も入場制限するなどにより、入場者数が例年の2割を下回る見通しという。元中国銀行の建物を再生させた新児島館(美術館別館)の2022年4月オープンも予定されている。そんななか、クラウドファンディングによる運営資金の寄付をお願いし、目標の2倍以上の23百万円を集めたほか、閑散期である2/2より3/末までの予定で開館時間を2時間短縮(9〜17時→10〜16時)により、スタッフ数の削減とコスト削減を図るなど、工夫しているという。
 
   米国のあのメトロポリタン美術館でも、財源不足から収蔵品の売却を検討しているという。美術館長協会が、2022年4月までの2年間に限り、収蔵品の売却益を運営費用に充てることを事実上容認することを受けてのもの(基本は、売却益はコレクション購入費用に充てること。破ると懲罰(他館からの作品借用不可)があるという)。既にブルックリン美術館の作品売却がニュースになっている。
   大阪のメトロポリタン美術館展の開催も、このご時世の前から企画は進んでいたのであろうが、この財源不足を捉え、さらなる名品の出品に繋げて欲しいところだが、一方で、日本側が多額の借用料を支払って収支が成り立つのか。
 
   そういうなか、2/15発売の週刊東洋経済の特集「アートとお金」によれば、例外的に財務基盤が安定しているのは、アーティゾン美術館であるらしい。石橋財団はブリヂストンの筆頭株主で受取配当額が年123億円に対して2020年収支予算上の運営費用は34億円、2018年は新収蔵品購入に72億円を支出、という。
   財団のサイトの公告にある2018年12月31日現在の貸借対照表を見ると、確かに美術品が前年より72億円増えている。他の年も見ると、
 
2013年: 11億円増
2014年:  2億円増
2015年: 49億円増
2016年: 39億円増
2017年: 50億円増
2018年: 72億円増
2019年: 92億円増
 
   2015年5月からの長期閉館期間中に、2020年の美術館オープンに向けて積極的に購入を進めた模様。
   ただ、ブリヂストンの2020年度決算は減益・配当減であり、よく分からないけど美術館オープンにより運営費用が増加していくのであれば、今後は閉館期間中のような勢いの購入は難しくなるのかも。


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