米国にある子会社が海外親会社の株主に配当を支払う場合、通常、親会社の株主の配当所得税の 30% が源泉徴収されます。しかし、親会社が所在する国が米国と租税条約を締結している場合、配当課税は30%以下に大幅に減ります。そして海外の親会社の株主は、米国の内国歳入庁に配当所得を申告する義務があります。本稿では、米国にある子会社および海外の親会社の株主は配当課税を申告するときの注意事項や親会社の株主がForm 1120Fで配当所得を申告するか否か、また、親会社の株主が米国にある子会社から配当を受け取る場合で配当控除が適用されるかどうかについて簡単に説明します。
米国にある子会社が海外の親会社の株主に配当を支払う場合、Form 1042-S を記入して内国歳入庁に提出しなければなりません。同書類のコピーを海外の親会社にも送らなければなりません。Form 1042-S には下記の基本情報があります。
- 配当所得額、源泉徴収された配当課税額と源泉徴収税率に関する情報。
- 配当を支払う側、つまり米国にある子会社の基本情報(会社名、住所、連邦税識別番号など)
- 配当を受け取る側、即ち海外の親会社の株主の基本情報。
- 配当・州税を支払う第三者がある場合、第三者の関係情報。
米国にある子会社が海外の親会社の株主に配当を支払う前に、親会社の株主は子会社にForm W-8BEN-E を提出しなければなりません。この書類は、親会社の株主の非課税居住者の証明です。海外の親会社の株主が即時に上記の書類を米国子会社に提供できない場合、親会社の所在国と米国との間に租税条約を結んでいるにもかかわらず、配当所得に対して 30% の源泉税が課される可能性があります。Form W-8BEN-Eの基本情報は下記のようになります。
- 1番目の部分には、海外の親会社の株主の基本情報です。親会社の株主の名前、登録国、会社の住所、郵送先住所、外国納税者番号などを含めます。ここでは海外の親会社の株主の会社の種類と FATCAの性質を選びます。
- 2番目の部分の記入に関してはみなし事業体(disregarded entity)にのみが必要となります。そのため、ほとんどの海外親会社の株主はこの部分に記入する必要がありません。
- 3 番目の部分は租税条約の税率の申請です(適用される場合)。海外の親会社の株主が所在する国を記入し、適用される条項を選択してください。
- 4番目の部分は、1番目の部分で 選んだFATCA の性質によって、項目を決定する必要があります。
海外の親会社の株主が米国子会社から受け取る配当について、下記の二つのパターンを紹介します。
- 配当所得が米国源泉所得で、且つ米国での貿易または事業に関連する収入である場合、海外の親会社の株主はForm 1120Fで配当所得を申告する必要があります。
- 配当所得が米国源泉所得ですが、米国での貿易又は事業に関連する収入でない場合、海外の親会社の株主はForm 1120Fで配当所得を申告する必要があります。
配当所得が米国源泉所得ですが、米国での貿易又は事業に関連する収入でない、しかも下記の3つのいずれかに該当したら、Form 1120Fを提出する必要がなくなります。
- 条文881 (c) または (d)によって海外の親会社の株主の唯一の米国源泉所得は免税されます。
- 海外の親会社の株主は米国と貿易しまたはその他の事業活動をしている同時に、しかも遺産または信託の受益人という身分を持っている場合、Form 1120F を提出する必要はありません。
- 課税年度の間、海外の親会社の株主は米国で貿易又は事業活動しておらず、且つ米国で納税されるべき税金は事前に全額源泉徴収されました。
配当所得が米国との貿易または事業活動に関する米国源泉所得である場合、海外の親会社の株主は配当所得控除を適用します。配当所得控除の割合は、海外の親会社の株主が米国の子会社の株式持分比率、株式の種類、および米国子会社の業務内容によって異なります。下記の4つのパターンは一般的な配当所得控除です。
- 海外の親会社の株主が米国の子会社の普通株式の持分比率は 20%未満で、米国の子会社から配当を受け取る場合、配当所得控除の割合は50%で可能です。
- 海外の親会社の株主が米国の子会社の普通株式の持ち分比率は20% 以上で米国の子会社から配当を受け取る場合、配当所得控除の割合は65%で可能です。
- 海外の親会社の株主が米国で公共事業に従事している子会社の優先株の持分比率20% 未満で、米国の子会社から配当を受け取る場合、配当所得控除の割合は23.3%で可能です。
- 海外の親会社の株主が米国で公共事業に従事している子会社の優先株の持分比率20% 以上で、米国の子会社から配当を受け取る場合、配当所得控除の割合は26.7%で可能です。
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