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カンボジア支店設立のマニュアル

2020-12-09 | 会社設立

カンボジア王国、通称カンボジアは、インドシナ半島南部に位置し、タイ、ラオス、ベトナムと国境を接します。カンボジアは東南アジアにおける経済成長が最も急激な経済体の1つになりました。カンボジアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国の1つであり、世界貿易機関(WTO)の加盟国の1つでもあります。カンボジアは多くの国において最恵国待遇、「Everything But Arms」(武器以外の全ての品目に対する無関税)及び一般特恵関税制度を享受しています。同時に、カンボジアは低コストの労働力を大量に提供し、投資奨励制度を制定したおかげで、最も外国投資者の優先的な投資先の1つになりました。

 

カンボジア支店は有限責任会社と同様に営業活動を行うことができ、且つ優遇税率を享受しています。但し、支店は独立した法人格を有しておらず、その法的責任を最終的に親会社が負います。支店の登録住所、授権代表者の変更などは、親会社の承認が必要です。

 

有限責任会社と異なり、支店は投資適格プロジェクト(QIP)を申請する権利がなく、免税期間及び免税輸入が享受できません。同時に、有限責任会社の事業登録税額は納税者区分(大規模又は中規模)及び売上によって異なりますが、支店の場合は大規模納税者のみとして登録でき、約750〜1250米ドルの事業登録税を納付する必要があります。

 

一般的に、カンボジア支店設立の所要時間は約14~16週間です。カンボジア商業省は支店の事業内容及び投資者身分により、登録を審査する可能性があり、その場合に設立所要時間も延長されます。

 

1. 支店の基本構造

 

1.1 商号

 

カンボジアに設立された支店の商号は親会社の商号と同一でなければならず、且つ「Branch」を付ける必要があります。

 

1.2 登録住所

 

カンボジア支店はカンボジアに位置する登録住所を持たなければなりません。商業省(カンボジア会社登録の管轄機関)に支店登録を申請する場合、登録住所を提供しなければならない点に留意が必要です。

 

1.3 会社秘書役

 

カンボジアにおいて設立された全ての支店はカンボジア会社法に該当する必要があります。会社法に違反する全ての行為に対して支店及びその授権代表者は処罰又は起訴される恐れがあります。

 

2. 関連税制

 

カンボジアにおいて設立された支店は下記の税金を納付する義務を負います。

 

2.1 事業所得税(Tax on Income)

 

カンボジア支店は月次売上高の1%相当額を前払事業所得税(付加価値税を除く全ての税金を含む)として毎月に租税総局に申告・納付しなければならず、翌月20日までに納付が完了する必要があります。事業所得税の要納税額は全ての控除額及び前払事業所得税額を差し引いた税額です。翌課税年度3月31日前に事業所得税の年次申告書を租税総局へ提出し、要納税額を納付しなければなりません。

 

2.2 付加価値税

 

カンボジアにおいて、多くの商品、サービス及び輸入品には付加価値税率10%が適用されます。税率0%は輸出される商品・サービス及び乗客・物品の国際輸送に係る費用に適用されます。また、適格投資プロジェクトの支援産業及び下請け業者が特定の輸出業者に提供する商品・サービスにも税率0%が適用されます。付加価値税の申告は翌月20日までに行う必要があります。

 

2.3 源泉徴収税

 

居住納税者はカンボジア国内源泉所得に対して源泉徴収税を納付する必要があります。

 

居住納税者が非居住納税者に財産、配当金、マネジメント又は技術サービスの使用に関する利息、ロイヤルティー、賃料などの金額を支払う場合、その金額の14%を源泉徴収し、納付する必要があります。

 

2.4 給与所得税

 

全てのカンボジア居住者は、国内外からの給与所得に対して税金を納付する必要があります。給与所得税率は5~20%です。非居住者の場合は税率20%のみを適用します。

 

給与所得税の課税対象は雇用者が提供した給料、賃金、賞与、時間外勤務手当、補償及び貸付金・前払金を含みます。扶養している子供及び専業主婦(夫)となっている配偶者がいる場合は1人当たり毎月75,000リエルの所得控除があります。

 

給与所得税は翌月の20日前に租税総局へ申告・納付する必要があります。

 

2.5 付加給付税

 

雇用者が提供した車両を個人的で使用する場合の車両費、宿泊支援費、教育費の支援(就職に関連するトレーニングを除く)、低利の貸付金及び無料・補助・割引の商品・サービスに対して、雇用者はそれらの課税価額によって付加給付税を納付しなければなりません。付加給付税は税率が20%で、月ごとに納付する必要があります。

 

2.6 事業登録税

 

カンボジア支店は毎年の3月末までに事業登録税(Patent Tax、別称パテント税)を納付し、パテント証明書の更新を行う必要があります。

 

事業登録税額は会社形態、事業の種類別及び売上によって異なります。経済財政省令第1821号により、事業登録税の納税者は下記の3つの区分があります。

 

(1) 小規模納税者:40万リエル(約100米ドル)
(2) 中規模納税者:120万リエル(約300米ドル)
(3) 大規模納税者:会社の年間売上高が40億~100億リエルである場合は300万リエル(約750米ドル)で、100億リエル超の場合は500万リエル(約1,250米ドル)です。

 

カンボジアの租税総局の関連規定により、支店は大規模納税者のみとして登録でき、約750~1,250米ドルの事業登録税を納付する必要があることにご注意ください。

 

3. 設立の手続きと所要時間

 

一般的に、カンボジアにおいてその事業範囲に特別な免許・許可(事前承認又は事後承認)が不要である支店を設立するには約14~16週間がかかります。

 

3.1 商号確認

 

支店の商号の可用性を確認するために、支店の商号をクメール語に翻訳して類似商号調査を行います。

 

3.2 会社設立書類作成

 

カンボジアにおいて設立しようとする支店は商業省のオンライン・システムを通じて会社設立に必要な書類及び登録フォームを提出し、登録費用を支払う必要があります。商業省は登録審査後、問題がなければ設立証明書などを発行します。

 

3.3 銀行口座開設

 

支店設立後、銀行口座の開設は必要です。カンボジア銀行の要求により、銀行口座開設の際に、支店の全ての署名権者は自ら銀行に出向き銀行口座の開設を行う必要があることにご注意ください。

 

3.4 税務登録

 

商業省が設立証明書などを発行し、且つ銀行口座開設の手続きを完了した後、カンボジア支店は租税総局に税務登録を行う必要があります。租税総局は登録書類を承認した後、パテント証明書及びVAT証明書を発行します。

 

法律により、設立されたカンボジア支店は商業省における商業登記を完了してから15営業日以内に租税総局に税務登録を行う必要があります。期限切れの場合は500米ドルの罰金が発生します。租税総局は支店の授権代表者が自ら租税総局に出向き写真の撮影及び指紋登録を行うことを要します。

 

4. 必要書類

 

カンボジア支店設立する際に、下記の書類及び情報を提供する必要があります。

 

(1) 英語の予定支店商号
(2) 外国親会社の設立証明書のカラー写し及び会社定款のカラー写し(上記書類を英語に翻訳すること、登録現地の公証役場又は会計士による認証が必要)
(3) 外国親会社が委任した支店の授権代表者の委任状
(4) 外国親会社の商号及び商標使用許諾契約
(5) 外国親会社の取締役のパスポートのカラー写し各6部(右下に署名が必要)及び住所証明書類
(6) 支店の授権代表者となる者のパスポートのカラー写し各6部(右下に署名が必要)及び住所証明書類
(7) 支店の授権代表者となる者の近3ヶ月の写真各6枚(4×6cm規格、白地、裏面に署名が必要)(写真の人物は眼鏡をかけず、耳を見せるようにする)
(8) 支店の授権代表者となる者の無犯罪証明書
(9) 支店の主要事業内容

 

5. 登録追加要件及び年間維持要求

 

5.1 労務及び国家社会保障基金の登録

 

カンボジア支店設立後、労働者を雇用する場合は、有限責任会社及び外国会社の駐在員事務所と同様に、労働職業訓練省に登録を行う必要があります。支店は外国人労働者を雇用する場合、毎年、支店は従業員割当申請を行い、外国人労働者の労働許可証を取得する必要があります。労働許可証は1年間有効で、有効期限が切れる前に更新が申請できます。また、設立されたカンボジア支店は国家社会保障基金(NSSF)に登録を行う必要があります。毎月国家社会保障基金へ申告書を提出し、社会保険料を納付します。

 

5.2 年間維持要求

 

設立後の支店はカンボジア国際財務報告基準に従って会計記録を適切に保管し、毎月租税総局に各税金を申告・納付する必要があります。その後毎年、支店は所得税年次申告書の提出、事業登録税の納付及びパテント証明書の更新を行う必要があります。

 

カンボジア支店の信用を維持するために、支店は毎年カンボジアの商業省に年次事業申告書(Annual Declaration of Commercial Enterprise:ADCE)を提出する必要があります。提出しない場合は相応の罰金が発生します。


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