- 概要
近年、香港の金融サービス業は前例のない成長が現れ、香港は重要なアジアの金融サービスセンターになりました。香港における金融サービスの提供は、ライセンスを取得した仲介業者によって行われなければなりません。規制された業務活動(以下「規制業務」という)には、証券売買、先物取引、外国為替証拠金取引、証券・先物取引助言、コーポレートファイナンス助言、信用取引、自動取引サービスの提供及び投資運用が含まれています。
証券先物条例(Securities and Futures Ordinance)は、証券先物取引市場を規制し、市場に関連の規制的枠組みを確立しました(例えば、仲介業者の投資商品の提供に関する授権準則及び適切な運営を規制する)。
- 金融ライセンスのタイプ
証券先物条例は10タイプの業務活動を規制しています。一般的に、個人は規制業務が経営できません。証券先物取引委員会の管理下のライセンスを取得した企業もしくは代表者又は登録された金融機関(以下「免許企業」、「免許代表者」、「登録機関」という)のみは、規制業務が経営できます。
1つ又は複数の規制業務に対して、ライセンスを申請する又は登録することができます。以下は一般的な規制業務です。
2.1 タイプ1(証券売買)
証券売買(Dealing in Securities)とは、ある人が他の人と契約もしくは仮契約を締結し、又は他の人に契約もしくは仮契約を締結するように勧誘するもしくは勧誘しようとすることを指します。
(1) 証券の取得、売却もしくは引受を目的とすること。 又は
(2) 当該契約の目的もしくは仮目的は、任意的当事者が証券の売却もしくは証券価値の変動から利益を得るようにすること。
タイプ1には、プロ投資家取引免除など、複数の免除が含まれています。当該免除によれば、本人が証券を取得もしくは売却し、又は取得、売却を引き受け、相手(本人又は代表者を問わず)がプロ投資家である場合、証券売買とは見なされません。
通常、証券業者及び投資顧問会社の業務はタイプ1と見なされます。
2.2 タイプ2(先物契約取引)
先物契約取引(Dealing in Futures Contracts)とは、本人又は代表者を問わず、以下のいずれの活動を行うことを指します。
(1) 先物契約を締結又は取得又は売却するに他の人と仮契約を締結又は作成すること。
(2) 他の人に仮契約をを締結又は作成するように勧誘する又は勧誘しようとすること。
(3) 他の人に取得又は売却するように勧誘する又は勧誘しようとすること。
証券先物条例により、先物契約とは先物市場の規則及び慣行に従って締結された契約又はオプション契約を指します。従って、先物契約は原則として取引所において行われる先物契約取引に適用されます。
通常、商品先物取引業者及び投資顧問会社の業務はタイプ2と見なされます。
2.3 タイプ3(外国為替証拠金取引)
外国為替証拠金取引(Leveraged Foreign Exchange Trading)とは、契約を締結する、又はある人に契約を締結するように勧誘する又は勧誘しようとすることを指します。その効力は、一方の当事者が以下のいずれに同意又は約束することです。
(1) 本人と契約の相手方の間、又は本人と他の人の間で、ある通貨に対する他の通貨の上昇又は減損(場合による)に応じて調整すること。
(2) 契約の相手方又は他の人に一定の証拠金額を支払い、又は一定数の商品を交付すること(当該金額又は数は、ある通貨と他の通貨の為替レートの変動に応じて決定される、又は決定しようとされる)。
(3) 予定時間に合意された代価で計算した合意の金額が契約の相手方又は他の人に交付すること。
外国為替証拠金取引には、(i)当該活動を促進するための資金融通の提供、及び(ii)契約もしくは仮契約を締結すること、又はある人に他の人と仮契約を締結するように勧誘するもしくは勧誘しようとすることが含まれます。
外国為替証拠金取引は定義が広く、ほとんどの外国為替取引が含まれます。通常、外国為替証拠金取引業者はクライアントの証拠金取引に促進する際、タイプ3の活動を行います。
2.4 タイプ4及びタイプ5(証券・先物取引助言)
証券・先物取引助言(Advising on Securities and Futures Contracts)とは、以下のいずれを指します(規定されている免除を除く)。
(1) (i)有価証券を取得もしくは売却すべきかどうか、(ii)どの証券を取得もしくは売却すべきか、(iii)いつ証券を取得もしくは売却すべきか、又は(iv)証券を取得もしくは売却するための条件が何かについて助言すること。
(2) クライアントの決定に便利を提供するため、(i)証券を取得もしくは売却するかどうか、(ii)どの証券を取得もしくは売却する必要があるか;(iii)いつ証券を取得もしくは売却するか、又は(iv)有価証券を取得もしくは売却するための条件が何かについて、分析又はレポートをを発行すること。
証券先物条例により、会社の完全子会社及び完全親会社がその他の完全子会社に助言する場合、当該助言がタイプ4及びタイプ5に該当しても、関連するライセンスが免除されます。
通常、ファイナンシャルプランナー及び投資研究所はタイプ4又はタイプ5の業務を行います。プライベートエクイティファンド及びファイナンシャルアドバイザリーサービスを含む特定の資産運用会社も、タイプ4の業務に関与している可能性があります。
2.5 タイプ6(コーポレートファイナンス助言)
コーポレートファイナンス助言(Advising on Corporate Finance)とは、以下のいずれを指します(規定されている免除を除く)。
(1) 香港聯合交易所の上場規則(Listing Rules of the Stock Exchange)又は買収規約(Codes on Takeovers and Mergers and Share Repurchases)に基づいて助言すること。
(2) (i)証券を売却して公開市場へ譲渡する仮契約、(ii)公開市場から取得した証券の仮契約、又は(iii)(i)項もしくは(ii)項で言及される仮契約の受け入れ(助言の相手が証券又はある種類の証券の保有者に限る)について助言すること。
(3) 企業のリストラ、証券の発行及び権利処理(取り消しや変更)について、上場法人、公開会社、法人もしくはその子会社、又は法人、会社もしくは子会社の上級管理職もしくは株主に助言すること。
通常、投資銀行のファイナンシャルアドバイザー、香港証券取引所に上場するための企業ファイナンシャルアドバイザー又は上場企業買収のファイナンシャルアドバイザーはタイプ6の規制業務を行います。
2.6 タイプ9(投資運用)
投資運用(Asset Management)とは、不動産投資運用又は証券・商品先物取引管理を指します。証券・商品先物取引管理とは、ある人が他の人に証券又は先物契約のポートフォリオの管理サービスを提供することを指します。
ヘッジファンド、公的資金、不動産投資信託の運用業者は、一般的にタイプ9を行います。また、バイアウトファンドはその資産構成に基づいてタイプ9の規制活動を行う場合もあります。
- ライセンス取得免除
ライセンスの免除について、具体的には以下の通りです。
3.1 付随的免除
一部の規制業務が他のタイプ(既にライセンスを取得した)の付随的業務である場合、当該業務に対して、ライセンスの取得は免除されます。例えば、証券の売買を取り次いでいる株投資顧問会社は投資顧問サービスの一環として、証券又は企業資金調達に関する助言をクライアントに提供する場合、当該業務が証券売買の付随的業務であるため、タイプ4又はタイプ5(証券・先物契約助言)のライセンスの取得が免除されます。
3.2 証券業者:証券担保融資業者免除
タイプ1(証券売買)のライセンスを有し、クライアントに証券担保融資活動を提供する場合、ライセンスの取得が不要です。全ての認可された金融機関は証券証拠金融資を提供するには、証券先物取引委員会からタイプ8(証券担保融資)のライセンスを取得する必要がありません。
3.3 プロ投資家取引免除
証券先物条例の別表1第1部により、当事者としてプロ投資家と取引をする場合は、タイプ1(証券売買)又はタイプ2(先物契約取引)のライセンスを取得する必要はありません。
3.4 企業グループ助言免除
完全子会社、完全親会社、又は完全親会社の他の完全子会社に投資の助言又はサービスを提供する場合、ライセンスを取得する必要はありません。
3.5 専門家免除
弁護士、事務弁護士又は専門会計士であり、且つ提供の助言又はサービスが弁護士、事務弁護士又は専門会計士とする専門的業務に完全に付随している場合、証券、先物契約、資産管理又は企業融資に関する助言に対して、ライセンスは免除されます。また、当該免除は出版物又はテレビ/ラジオ放送を通じて投資助言を提供するジャーナリストや放送事業者にも適用されます。
3.6 外国為替証拠金取引免除
認可された金融機関は、タイプ3の規制業務(外国為替証拠金取引)のライセンスを有しない場合、関連活動を行うこともできます。
- ライセンス申請手続き
4.1 ライセンス申請要件
ライセンスを申請するには、以下の要件に該当する必要があります。
(1) 申請者は証券先物取引委員会に規定された要件に該当する必要があります。また、証券先物取引委員会は申請者(申請者が個人の場合)、又は法人及びその高級管理職、従業員及び株主(申請者が法人の場合)、又は金融機関及びその株主、取締役、最高経営責任者、経理及び執行役員(申請者が金融機関の場合)に対して、以下の要件を確認します。
(i) 財政状況及び支払能力
(ii) 仕事の性質に合致する適切な学歴、資格及びその他の経験
(iii) 適任の能力、正直さ、公正の実行能力、信用、性格、信頼性及び財務健全性
(2) 申請者は、厳格な内部管理制度を備えており、且つ証券監督管理委員会のコンプライアンス要件に該当することを証明する必要があります。申請者は、内部管理制度が業務の性質及び構造に一致し、且つ適切な責任者が事業を取り扱うことを確保する必要があります。
(3) 申請者が法人の場合、当該法人は香港会社登記所において設立した現地法人又は非香港会社でなければなりません。外資系独資企業又はパートナー会社はライセンスを申請することができない点に留意が必要です。香港会社設立について、詳細は当事務所の専門コンサルタントまでお問い合わせください。
(4) 申請者が法人又は認可された金融機関の場合、規制業務ごとに最低2人の責任者を雇用する必要があります。責任者が資格を有し、且つ業務の間に矛盾がない限り、同時に複数の規制業務を同一責任者に委任することができます。最低1名の責任者は金融機関又は法人の執行役員でなければなりません。全ての責任者は関連する規制業務のライセンスを有する必要があります。証券先物取引委員会は、当該責任者が会社の規制業務を担当するに適切な能力、スキル、知識及び経験を持っているかどうかを確認します。
(5) 規制業務のタイプに応じて、申請者は「証券先物(資本)規則」(Securities and Futures (Financial Resources) Rules)に従って最低額の払込資本及び流動資本を維持する必要があります。複数のタイプのライセンスを同時に申請する場合、払込資本及び流動資本は各規制業務うちの最小要件の高い額が求められます。
(6) タイプ1(証券売買)、タイプ2(先物契約取引)又は証券担保融資のライセンスを申請する場合、申請者はリスクに対して指定された一定金額の保険を購入する必要があります。証券先物取引委員会は、各要因によって申請者の保険計画を検討してから承認します。取引所の取引参加者以外の申請者及び顧客資産を保有していない申請者は、この要件を免除することができます。
4.2 申請の提出
ライセンスを申請する場合は、記入済申請書、添付書類及び申請手数料(返金不可)を証券先物取引委員会に郵送又は自ら提出する必要があります。申請には2~4ヶ月がかかります。その後、証券先物取引委員会は書面の承認通知を発行し、ライセンスを郵送します。申請書類に虚偽の記載があり、又は記載が欠けている場合において、申請所要時間は延長されることにご注意してください。ライセンス又は登録証明書は以下の情報が記載されています。
(1) 氏名又は商号
(2) 登録番号(Central Entity number)
(3) ライセンス又は登録証明書の発効日
(4) ライセンス又は登録のタイプ
(5) 証券監督管理委員会に要求された追加要件
(6) 代表される免許企業の商号(申請者が免許代表者の場合)
4.3 ライセンスの展示
ライセンスを主な営業所において見やすいように掲示しなければなりません。複数の営業所を有する場合、ライセンスの認証済コピー全ての営業所において見やすいように掲示しなければなりません。全ての免許代表者、免許企業及び登録機関は、ライセンス又は登録の発行記念日から1ヶ月以内に年会費を支払う必要があります。
- ライセンス申請拒絶
申請者が必要な要件に該当し、必要な各書類を提出し、正確な情報を提供した場合、証券先物取引委員会は申請を承認します。但し、法定要件に該当しない場合、証券先物取引委員会は申請を拒絶する権利を有します。申請を拒絶する前に、証券先物取引委員会は申請者に説明のチャンスを提供します。それでも申請が拒絶される場合、申請が拒絶されてから21日以内に証券先物上訴裁判所(Securities and Futures Appeals Tribunal)に提訴することができます。書類の審査には何週間がかかります。
- 管理
証券先物取引委員会からライセンスを取得するには、法人は証券先物取引委員会によって承認された最低2人の責任者を委任して、各規制活動を直接監督する必要があります。一般的に、3人の責任者を有することは最善です。2人の責任者のみを委任し、そのうち1人が辞職する場合、責任者が2人以上である法定要件に違反します。
最低1人の責任者は免許企業の執行役員でなければなりません。同時に、会社の証券先物に関する規制業務に積極的に参加する、又は直接監督する全ての執行役員は責任者でなければなりません。逆に、責任者は会社の取締役である必要はありません。
最低1人の責任者は規制業務を常時に監督する必要があります。即ち、最低1人の責任者は香港において長期滞在する必要があります。
証券先物条例により、証券先物取引委員会は申請者が責任者を担当することを拒絶する必要があります。但し、申請者が適切な資格を有し(上記を参照)、且つ免許企業内で十分な権限を持っている場合、証券先物取引委員会はその件について承認できます。一般的に、責任者は以下の要件に該当する必要があります。
(1) 適切な学歴(MBAなど)又は資格(弁護士、会計士、CFAなど)を有すること。
(2) 2年以上の管理経験を有すること。
(3) 規制に関する十分な知識を有すること。
(4) 申請日の直前6年間のうち、関連業界での3年以上の経験を有すること。
- 資本要件
全ての免許企業は、払込資本(paid-up share capital)及び流動資本(liquid capital)の最小要件を満たさなければなりません。基準値について、払込資本の最低額は500万香港ドルであり、流動資本の最低額は300万香港ドルです。特定の規制業務(例えば、外国為替証拠金取引及び証券担保融資など)には、より高い払込資本が必要です。
顧客資産を保有していない特定の免許企業(資産運用会社など)には、最低払込資本はありませんが、最低流動資本は10万香港ドルです。
8 仮契約
ライセンス及び登録要件に加えて、公開市場において証券などの規制業務に係る全ての仮契約を提出する場合(免除に該当する場合を除く)、事前に証券先物取引委員会によって承認される必要はあります。例えば、証券先物取引委員会によって認可された資産運用会社は、香港にオープンエンド型ファンドを設立し、公開市場においてクラウドファンディングをしようとする場合、ファンド自体及びそのマーケティング資料について事前に証券先物取引委員会からの承認を求める必要があります。