カナダでは従業員の給与明細書には通常、雇用主情報、従業員情報、出勤日数、総支給額、各種控除額、所得税、差引支給額等が含まれます。本稿では、従業員の給与構成、支払頻度、控除額及び所得税、報酬明細書(T4)について詳しく説明します。
- 給与構成
カナダでは給与構成は通常、総支給額、控除総計額、所得税、差引総支給額からなっています。総支給額とは、各種控除と課税が差し引かれる前の総収入で、基本給、残業代、ボーナス、手当、およびその他取得可能な所得や福利厚生を含むものです。
カナダ年金制度 (CPP) またはケベック年金制度 (QPP)、雇用保険 (EI)、および連邦所得税、州または準州の所得税、登録退職貯蓄年金(RRSP) (オプション) などの拠出金は給与控除額及び給与税(Payroll tax)から拠出されています。
差引支給額とは、法定控除やオプション控除を差し引いた支給額です
- 給与の支給頻度
雇用主が従業員に定期的に給与を支給すべきだとカナダの労働基準法に規定されています。そして、最も一般的支給頻度は週単位、2週間単位、半月単位、月単位となっています。
- 給与控除と所得税
3.1 カナダ年金制度 (CPP)
(1) 従業員が下記の条件に全部該当する場合、雇用主は従業員の年金受給可能給与から CPP 拠出金を控除しなければなりません。
(ァ) 従業員はその年に年金受給可能の職種に勤めていること。
(ィ) CPP 又はケベック年金制度 (QPP)に基づいて障害者と判定されていないこと。
(ゥ) 従業員は年齢が 18 歳~69 歳で、カナダのケベック州外で働き、且つ年収が3,500 ドルを超えていること。
(ェ) ケベック州の雇用主は、CPP 拠出金の代わりにケベック州年金制度 (QPP) 拠出金を控除します。
例外: 従業員は年齢が 65 歳以上 70 歳未満で、CPT30 を提出する上で、カナダ年金制度 (CPP)の拠出金をやめる又は前の選択を諦めると CPPの拠出金の控除が要らないこととなります。
(2) CPP拠出率と拠出限度額
従業員の年金受給可能給与からCPP 拠出金を控除しなければなりません。雇用主は従業員の報酬から差し引いたCPP拠出金と同額で納めなければなりません。
(ァ) 2023年、CPP を差し引いた年金受給可能給与は最大66,600カナダドルとなっています。
(ィ) 2023 年の基礎控除は 3,500 カナダドルです。
(ゥ) 2023年従業員の給与から控除する CPPの 拠出率 は5.95% となっています。
(ェ) ケベック州で勤めている従業員に適用する拠出率はそれぞれで、2023 年の雇用主と従業員の QPP 拠出率は同じく6.40% となっています。
3.2 雇用保険(EI)
従業員がその年に保険適用の仕事に従事している場合、雇用主は保険加入可能収入から EI 保険料を控除し納めなければなりません。
(1) 2023 年の保険加入可能収入は最大61,500 カナダドルとなっています。
(2) 2023 年の従業員 EI 率は 1.63% となっています。
(3) 雇用主の拠出率は従業員の1.4 倍で、2023 年の雇用主の拠出率は 2.28% となっています。
(4) ケベック州の労働者のEI 率は 1.27%となっています。
3.3 連邦、州および準州の所得税
個人所得税に関しては、雇用主が納付すべきではなく、従業員の給与又はその他収入から天引きされるのは雇用主の責任とされています。個人所得税の控除対象者には年齢制限がありません。雇用主は天引きされた個人所得税をカナダ歳入庁 (CRA) に納めなければなりません。
(1) 個人所得税申告書
雇用主が従業員に関する必要最低限の情報を得て連邦と州又は準州に個人所得税を徴収・納付手続きをスムーズに行うことができるために、従業員が入社する前にTD1 フォーム (連邦フォームおよび州または準州フォーム) を記入するのはほとんどの場合ですが、TD1Xフォーム 又はTD3Fフォームを記入する例外もあります。従業員は、その年の個人所得税控除額に左右する要素が影響を与えた場合は、7 日以内に新たにTD1フォームを記入しなければなりません。
ケベック州で勤務から得た給与若しくはその他取得報酬に関しては連邦TD1 フォーム(個人所得税免除申告書)と州TP-1015.3-Vフォーム(源泉所得控除申告書)を記入しなければならないことをご留意ください。
(2) 連邦所得税率
2023 年の連邦所得税率
所得税対象額(CAD) |
税率 |
≧$53,359 |
15% |
$53,359~$106,717 |
20.5% |
$106,717~$165,430 |
26% |
$165,430~$235,265 |
29% |
>$235,675 |
33% |
(3) 州および準州の所得税
カナダ各州や準州によって税率が異なりますが、計算方式が連邦と同じです。ケベック州以外の州および準州では、住民は連邦税と地方税を含む申告書しか提出しません。一方、ケベック州では、住民は連邦税申告書と地方税申告書を別々に提出する必要があります。2023 年のブリティッシュ コロンビア州、オンタリオ州、ケベック州の個人所得税率を下記の表にまとめました。
ブリティッシュコロンビア州の所得税率
所得税対象額(CAD) |
税率 |
≧$45,654 |
5.06% |
$45,654~$91,310 |
7.7% |
$91,310~$104,835 |
10.5% |
$104,835~$127,299 |
12.29% |
$127,299~$172,602 |
14.7% |
$172,602~$240,716 |
16.8% |
>$240,716 |
20.5% |
オンタリオ州の所得税率
所得税対象額(CAD) |
税率 |
≧$49,231 |
5.05% |
$49,231~$98,463 |
9.15% |
$98,463~$150,000 |
11.16% |
$150,000~$220,000 |
12.16% |
>$220,000 |
13.16% |
ケベック州の所得税率
所得税対象額(CAD) |
税率 |
≧$49,275 |
14% |
$49,275~$98,540 |
19% |
$98,540~$119,910 |
24% |
>$119,910 |
25.75% |
備考:所得税対象額は、各種控除、償還、免除を除いた所得です。
- T4 報酬明細書
T4表は雇用主が従業員に発行するもので、課税対象となる諸手当を含めた給与と源泉徴収された所得税などの納付額が記載される報酬明細書とも呼ばれます。会計年度中に複数の雇用主の下で勤務した場合、雇用主ごとからT4を受領することとなります。
4.1 通常、正式の T4 伝票には下記の内容があります。
(1) 課税年度
(2) 雇用主の名称
(3) 従業員の社会保障番号、氏名、住所
(4) 年間の給与所得
(5) 控除額と納付済の税金
4.2 T-4 を提出する時期
雇用主は暦年の2月末日までに T-4 を発行し、カナダ歳入庁ならびに従業員に提出する必要があります。
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