外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)は、外国口座及びその他のオフショア金融資産を保有している米国納税義務者による租税回避を防止するための重要な手段になります。FATCAに基づき、米国外の特定の金融資産を保有し、且つ申告すべき基準に達する特定の米国納税義務者は、Form 8938(特定外国金融資産報告書)を提出することで米国内国歳入庁(IRS)に当該海外資産を申告しなければなりません。
1. 特定米国納税義務者の定義
以下のいずれかに該当する場合は、FATCAに規定されている米国納税義務者に属します。
(1) 特定の個人(米国市民、外国人居住者及びある外国人非居住者を含む)
(2) 特定の国内実体(内国会社、パートナーシップ及び信託を含む)
2. 特定外国金融資産
特定外国金融資産は、外国金融口座と投資目的で保有される海外非口座資産(貿易又は業務を目的として保有される海外非口座資産と比較して)を含みます。例えば、外国株券及び証券、外国金融商品、非米国人と締結した契約、及び外国実体にある権利又は利息は該当します。
特定外国金融資産に属しない外国金融資産(例:社会保険料の利息)に対して、または既にその他のフォームで申告した場合、Form 8938で当該外国金融資産を申告する必要がありません。
3. 申告すべき基準
申告すべき基準は、所得税申告書上の申告状態及び居住地によって異なります。
(1) 米国に居住している特定申告者
(a) 未婚者(または夫婦別々に確定申告をする既婚者):資産総額が納税年度終了日に50,000ドルを超え、あるいは本納税年度のいずれかの時点で75,000ドルを超えます。
(b) 夫婦が共同して確定申告をする既婚者:資産総額が納税年度終了日に100,000ドルを超え、あるいは本納税年度のいずれかの時点で150,000ドルを超えます。
(2) 米国外に居住している特定申告者
(a) 未婚者(または夫婦別々に確定申告をする既婚者):資産総額が納税年度終了日に200,000ドルを超え、あるいは本納税年度のいずれかの時点で300,000ドルを超えます。
(b) 夫婦が共同して確定申告をする既婚者:資産総額が納税年度終了日に400,000ドルを超え、あるいは本納税年度のいずれかの時点で600,000ドルを超えます。
(3) 特定内国実体
資産総額が納税年度終了日に50,000ドルを超え、あるいは本納税年度のいずれかの時点で50,000ドルを超えます。
4. Form 8938のコンプライアンス要求
Form 8938の提出期限は年度の所得税申告書の提出期限と一致し、且つ両方を合わせて相応のIRSサービスセンターに提出する必要があります。米国納税義務者は、特定外国金融資産の価値を問わず、納税年度の所得税申告書を提出する必要がなければ、Form 8938を提出する必要はなくなります。
規定に従ってForm 8938を提出しない場合、10,000ドルの罰金を科される可能性があります(IRSによって通知されても申告しない場合、最高50,000ドルの追加罰金が科される)。刑事罰も適用されるかもしれません。
意図的な怠りではなく合理的な理由があるので、期限までにForm 8938を提出していない、あるいはForm 8938に一つまたは複数の特定外国金融資産を開示していない場合、罰は科されません。但し、合理的な理由を支持する証拠を提供しなければなりません。
IRSは、全ての関連事実及び具体的な事例に基づき、意図的な怠りではなく合理的な理由があるのでForm 8938を適正に提出していないことであるかどうかを判定します。