kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ブルータリスト

2025年02月26日 | ★★★★☆
日時:2月24日 
映画館:イオンシネマ広島 


第二次世界大戦直後、ナチの強制収容所から辛うじて生き延びたハンガリーの建築家、ラスーロー・トートがアメリカに渡り、有名なヴァン・ビューレン・コミュニティーセンターを建てるまでの物語。 







アカデミー賞最有力の呼び声とAI技術を使った製作への賛否で話題になっているので劇場へ。 
と上映時間を見たら、なんと3時間35分!(うち15分はインターミッション) 
なのだが、上映時間を感じさせない、もしくは現代の配信ドラマ1シーズン分にも似た重厚な物語。 

トートは終戦後、欧州に妻と姪を残し、家具屋の親戚を頼ってアメリカに移民する。元々、戦前はハンガリーで名建築物を建てていた彼は家具屋でもその才能を発揮し、やがて資産家のヴァン・ビューレン家から書斎の改築を依頼され、ほぼ完成させる。 
しかし、ちょっとした行き違いから仕事は認められず、親戚とも袂を分かつ。数年間、肉体労働で日銭を稼ぐことになるが、ようやく彼の作品と才能に気付いたヴァン・ビューレンから壮大なコミュニティセンターの建設を依頼される。(彼の設計する建築様式はブルータリズムであり、タイトルの「ブルータリスト」はここからきている。) 
建設がスタートして間もなく、ようやく欧州から妻と姪がアメリカにやってくる。しかし、妻は飢餓による骨粗鬆症から下半身が不随の車いす生活となっていた。 トートは自身の壮大なプロジェクトを実現すべく邁進するが、それは建築費用の高騰による周囲との軋轢を生んでいく。
さらに妻との夫婦関係もぎくしゃくし、現場では事故が発生、工事は中断することになる・・・ 

トートを演じるのはエイドリアン・ブロディ。彼と強制収容所と言えば「戦場のピアニスト」だが、個人的には凄腕の傭兵を演じた「プレデターズ」もお気に入りだったりする。 
トートは女性にだらしなく、酒もヘロインもやるというかなり問題ありの人物。パトロンをバックにできたアーティストとして、何事にも妥協せず、かの大作に挑んでいく。 
ブロディのつかみどころのない表情が役どころにピッタリ。ドロドロした内面と数十年分の外面の変化を演じて、アカデミー賞委員会も好きそう。

資産家ヴァン・ビューレン役はガイ・ピアース。彼も壮年役が似合うようになった。偉大な芸術家を応援するのは自分たちの義務だと語る一方で、その才能には秘かに嫉妬している。こちらも複雑な人物造形で助演男優賞にノミネートされている。(ただ、個人的は「アプレンティス」のジェレミー・ストロングに軍配が上がる。) 

映画は全編通して、重々しい空気感が漂う。オープニングから印象的なダニエル・ブルームバーグの重厚な音楽、屋外シーンのほとんどは雨か曇り空で工事現場は泥だらけ。装飾を排したブルータリズムの建築がそれに輪をかける。(実在の建築物とセットの使い分けが見事。) 
移民であるトートや労働者たちと周辺の資本家連中との人間関係もずっと緊張感をはらんでいるし、全編を通して描かれるユダヤ人としてのバックボーンが時としてて重荷になる。最後はコミュニティセンターが完成すると分かっていても落ち着かず、どこにも安心感がない。それがトートの心象ともいえるのだろう。 

そして、エピソードをぶつ切りにし、先が読めないストーリー展開。まるで広島市映像文化ライブラリーで上映される芸術映画のようだ。 

トートとヴァン・ビューレンがその後、どうなったのかと映画鑑賞後、Wikipediaを調べてみたら 

【以下、ネタバレあり。】
 検索結果に何も出てこない。

 なんと、この物語、映画オリジナルのフィクションだったのだ!
すっかり実録物だと思っていたし、ヴァン・ビューレン・コミュニティセンターは実在すると思っていた!! 

それだけ映画作りが巧みだということだ。 
実録物映画は多数あるし、実在の人物を描きながら途中から突拍子もない展開になる映画「ビューティフル・マインド」「ドミノ」とかもあった。 
しかし、完全にフィクションの物語を実録風に描く映画はあまり思いつかない。それだけストーリーや描写に説得力を要求されるし、辛うじて思い出すのは「バリー・リンドン」くらいか。 

実録物を錯覚するくらいに時代背景の描き方が巧みだし、錯覚する要因の一つが登場人物の描き方で、善悪の区別がなく、トートとの関わりに決着がない。
通常は何かしら主人公との関係性にオチがつくのにそれが全く存在しない。突然、ストーリーから脱落していく。 

演出としても面白く、上演時間こそアレだが、今度はフィクションを分かった上で最初から観たくなった。 

その面白さゆえ、評価は ★★★★☆ 

ところで写真は観客を混乱させる副読リーフレット。よくできてる。「架空の内容です。」の注意書きにも気付かず、すっかり騙された(笑) 
題名:ブルータリスト 
原題:BRUTALIST 
監督:ブラッディ・コーベット
出演:エイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース
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Perfume Costume Museum

2025年02月23日 | 展覧会
「Perfume Costume Museum」 会場:広島市現代美術館 
ファション無頓着のワタシは、衣服のポイントとはポケットとマチが役に立つか立たないかで、あとはカモフラージュ効果の有無(ちょっと違う)。
おまけにPefumeも聴いたことがないヤツが行っても良いのかと思いつつ、足を運んでみたところ、これがなかなか面白い。

開会式では「Pefumeファンの方だけではなく」と主催者としては当然の言葉もあったが、実際のところ、Pefumeにもステージにも思い入れがない分、フラットに鑑賞できたのが良かったと思う。

まず第一印象は「ほっそー!」
たぶんこれは多くの観覧者が感じているんだろうな。

元々、Pefumeの3人が微妙に異なるデザインのコスチュームであることは知っていたが、改めてコスチュームだけ観るとなかなかカッコいい。
オシャレではなくカッコいい。

「1234567891011」なんか見た瞬間に「プラチク星人」と思ったりしたのだが、ウルトラセブンの近未来感にあるレトロフューチャーなカッコよさ。 それこそ、前回の大阪万博の未来感とか60年代ヨーロッパオサレ映画とかスパイ映画、SF映画で憧れていたカッコよさに満ちている。

ワタシがPefume好きだったら、パフォーマンス全体に目が行ってしまい、もしかしたらこういったコスチュームの面白さに気付けていなかったかも知れない。

途中、デザイン現場やデザイナーの紹介もあるが、主だった人たちがほぼワタシと同じ世代。レトロフューチャーのカッコよさを実感してた世代なんだと思う。
あと、時代の流行りが反映されているのも実感できる。作品年代を意識するとこの25年間のトレンドとの連動が感じ取れたりする。尖りきらず、誰しもが見たことのあるカッコよさがPefumeの親しみやすさなのかとも思ったり。


展覧会としてもよく出来ていると思うのは、短い中でまとめきられた洗練されたキャプション群。作品の背景やコンセプトから着用上の配慮や製作現場の工夫まで様々な情報が秀逸なキーワードで詰め込まれていて、ステージやPVなど一発ものの作品の中で活かされるプロダクトとしてのコスチュームの位置づけがものすごくよく分かる。
総合芸術の一部門がどのように機能しなければならないのかを読みとく点でも非常に興味深い。ワタシは映画製作のメイキングとかビハインドシーンとかが大好きなので、とても面白い。
また、キャプテン全体での流れやメリハリもあり、上手な文章のお手本として学ぶべきところも多い。




ちなみに会場には全国からPefumeファンらしき人とアクターズスクール広島のおこちゃま(&親御さん)も来場。普段のゲンビとは全く雰囲気が違って、それもそれで面白かったりする。


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アプレンティス/ドナルド・トランプの創り方

2025年02月13日 | ★★★★☆
日時:2月10日
映画館:サロンシネマ

20代の若者だったドナルド・トランプが辣腕弁護士の教えを受け、不動産王に成るさまを描いた映画。
タイトルの「アプレンティス」は見習いの意で、トランプがホストをしていたリアリティショーのタイトルも「アプレンティス」だったと後で知った。
昨年の選挙期間中に公開され、トランプから公開差し止めの請求があったそうだが、まあ、この表現・描写だと言いたくもなるわ(笑)

さて、その辣腕弁護士の名前がロイ・コーン。聞き覚えがあると思ったら、なかなか尖ったドラマシリーズ「グッド・ファイト」に「ロイ・コーンの薫陶」ってエピソードがあった。「グッド・ファイト」自体、シリーズを通してトランプ批判をしていたが、まさか返り咲くことになるとは思わなかったな。

ストーリーは典型的な「魔法使いと弟子」もの。
父親の経営する不動産会社の副社長で実質下働きするトランプは、1950年に「アカでコミュニスト」のスパイだったローゼンバーグ夫妻を死刑台に送り込んだことを豪語する辣腕弁護士ロイ・コーンに見いだされる。コーンはトランプに成功する3箇条として「1 攻撃、攻撃、攻撃」「2 間違いを指摘されたら全否定せよ」「3 決して敗北を認めるな」と教え、トランプはそれを実践し不動産王への道を歩みだす。さらにコーンはトランプを成功させるために脅迫を交えた剛腕を発揮し、トランプもその手法を学んでいく・・・

70年代後半から80年代前半を舞台にしており、アーカイブ映像を交えながら当時のどん底から金ピカ時代に移っていく様子がよく伝わってくる。画面もVHSビデオによるざらつき感を再現していて、ものすごく懐かしい(笑)

80年代に入りトランプが成功をおさめていく一方で、コーンは病に侵され往年の辣腕ぶりを失っていく。トランプはそんなコーンを徐々に見捨てていく。

トランプを演じるのはセバスチャン・スタン。顔も何となく似ているが、徐々に今よく見かける不敵な笑いや唇の動きなどを出してくる。オスカーの主演男優賞ノミネートもなるほど。

そのカウンターパートであるロイ・コーンを演じるのはジェレミー・ストロング。自分が信じるアメリカを守るためには手段を問わず、嫌味な狼みたいな無表情さが印象的だが、「マネーショート」とか「モリーズ・ゲーム」、「デトロイト」「ゼロ・ダーク・サーティ」といった険しい顔のキャラだらけの映画によく出てる。
前半の狼ぶりと後半の病身で見捨てられる悲しい男の演じ分けが見事でオスカー助演男優賞もむべなるかな。スタンの主演男優賞は難しいかもしれないが、狂犬キャラがウケやすい助演男優賞は彼が取るかも知れない。

ただ、ストロングは見た目ちょっと若いのが難で、コーン自身ローゼンバーク夫妻事件に関わっていたのがいくつだったんだとずっと気になってしまった。コーンとトランプが知り合った1970年代後半は50歳前後、亡くなったのは59歳。ローゼンバーク夫妻事件の時はなんと23歳で検察官だったようだ。ちなみにストロングは映画撮影時は40代中盤。

映画はトランプの政界進出の前に終わるが、それまでの生きざまがそのまま引き継がれているということが見て取れる演出となっている。
一人の男の内面の変化として、なかなか考えさせられるし、今の一面的な報道では分からない人間像が透けて見える。

思った以上に面白かったので、評価は
★★★★☆

ところで、劇中「人間には2種類ある」とマカロニウエスタンの名ゼリフが登場。さらによく考えたら映画全体が師弟ものでその中で3箇条の教えが用いられるなんて「怒りの荒野」のまんま。ラストはトランプの目元アップ。
アリ・アバッシ監督もマカロニ・ウエスタンファン?(笑)






題名:アプレンティス/ドナルド・トランプの創り方
原題:The Apprentice
監督:アリ・アバッシ
出演:セバスチャン・スタン、ジェレミー・ストロング
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歓びの毒牙

2025年01月14日 | ★★★☆☆
日時:1月10日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:動物三部作のスペシャルパンフレット。ジャロ(黄色)を基調にしたデザインが秀逸。





<パンフレット。アルジェント研究会矢澤代表のサイン入り。>


<上映後のトークショー。左から司会進行のサロンシネマの戸川部長、アルジェント研究会の矢澤代表、今回の仕掛人キングレコードの山内氏>

イタリアホラーの重鎮ダリオ・アルジェントの初期の3作、通称「動物三部作」。
このリバイバル上映が広島でも上映。ということでデビュー作の本作に足を運んだ。

一連の連続殺人事件が報じられるローマ。この都市に来ていたアメリカ人作家のサムは数日後の帰国を前に、あるギャラリーで女性が刺される現場に出くわす。女性は一命をとりとめたものの、連続殺人事件との関連を捜査する警察にサムは帰国を足止めされる。
やむなくサムは素人探偵として彼女と一緒に殺人事件の調査に乗り出す・・・

作品はイタリア製猟奇サスペンス映画ジャンル「ジャロ」の1本なので、主題として描かれるのは調査云々ではなく、女性を狙ったエロティックで猟奇的な殺人。警察も捜査するが、ユーロクライムものとは正反対に全く役に立たない(笑)

ワタシの世代で言えば、アルジェントといえば「決してひとりでは見ないでください」の「サスペリア」に始まり、リアルに劇場で観たのはバブル経済華やかし80年代のホラー映画ブームの「フェノミナ」「デモンズ」あたりから。
なので「サスペリアpart2」から「シャドー」辺りまでのジャロあたりは押さえているが、改めて68年の本作を観るとアルジェント要素のほぼすべてが詰まっていて、後の作品はすべてこの焼き直しではないかと思わせるほど。

異国の地で犯罪に巻き込まれる外国人の主人公、黒手袋の殺人鬼とゾッとする殺人テクニック、予想外の犯人、見えたものの裏にある真実、オシャレだが不安感をあおる建築物、流麗な映像テクニック&トリック、文字通り尖った現代アート、そして突如登場する破綻したキャラクターと、後で思い返すと謎と不合理な展開(笑)

主人公サムを演じるのはトニー・ムサンテ。我々的には「豹/ジャガー」、世代的には「スキャンダル/愛の罠」だが、撮影時にはアルジェント監督と衝突して相当使いにくかったらしい。
役に立たない警察はエンリコ・マリア・サレルノ、キーパーソンとして登場するエキセントリックな画家はマリオ・アドルフとマカロニ系役者の登場は嬉しい。

音楽はモリコーネ。こちらも素晴らしい楽曲で不安をあおってくれる。

ローマの映像が素晴らしいのだが、特筆は最初の事件の舞台となるギャラリー。実物ではなくセットというが、映画的な仕掛けと現実味の微妙なブレンド具合が絶妙。

個人的にツボだったのは「ユーロクライム」でも語られていたJ&Bウイスキーの不必要なまでの登場。当時、広告費をもらっていたらしいが、時代的は先駆け(笑)

アルジェント映画は本作の数年後、全身に鳥肌が立つようなアイディアと映像トリックを見せてくれた「サスペリアpart2」である種の頂点に到達するので、そこと比べるといささか薄味に見えてしまうのはちょっと申し訳ないところだが、それでも充分面白い。

評価は
★★★☆☆

ところで、本作、初見だと思っていたが、IMDBのマイウォッチリストにはチェック済ということは以前観ていたのだ。
「見てないと思っていたものが実は見えていた」というのはアルジェント映画の基本です。






題名:歓びの毒牙
原題:L’Uccello dalle Piume di Cristallo
監督:ダリオ・アルジェント
出演:トニー・ムサンテ、スージー・ケンドール、エンリコ・マリア・サレルノ
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2024年ベスト映画

2024年12月29日 | 年間ベスト3

前回の投稿が4月・・・気が付けば8か月も投稿をさぼってました。(投稿後、反省して追記してます)
とはいえ、今年の締めくくりは忘れずに。

まずベスト映画
「夕陽のガンマン」
ドル3部作のうち、唯一劇場で観ることができていなかった「夕陽のガンマン」が遂にリバイバル!!
思い残すことはない!!と思ってたら、広島は公開劇場無しという情無用の事態に。
直近の出雲市のシネコンまで車飛ばしていったのはいい思い出です。(道中の安芸高田市ではちょうど2つの勢力がぶつかり合うマカロニシチュエーションだった:笑)
さらに出雲で素晴らしい出会いもあり、映画もさることながら思い出深い。
余談:結局、広島でも公開されドル3部作をちゃんと観れましたとさ。

「アンブッシュ」
事前パブからは想定できないイエメン内戦におけるUAE軍の死闘を描いた戦争映画。オシュコシュの装甲車が大活躍と被弾し、装輪装甲車大好き人間にはごちそうのような映画。
ただ、それだけではなく、ムスリム対ムスリムという構図の戦争映画はあまり劇場で見ることができないので、そういった点でも貴重。赤新月の救急車やイスラムの死者への祈りなど、考えさせられることも多い。

「Perfect Days」
仕事に実直で、日々真面目に生きる、マニアックな職人気質の人。
というキャラ設定が身近な人すぎて、創作上の人物とは思えなかった。
年末大掃除の時にスマホでBGV代わりに流しておくととても効果的と発見(笑)

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリデイ
アレクサンダー・ペインとポール・ジアマッティのゴールデンコンビ映画。相変わらずキャラ設定が秀逸で、ハラハラさせられながらも心地よい。
雪景色やファッションも素敵。

「シビル・ウォー/アメリカ最後の日」
公開前からずっと気になっていたアメリカ内戦ロードムービー。賛否両論あったが、ワタシが大好きな世界線の映画。アマプラ配信も素早く、すでに2回も視聴。

「悪魔と夜ふかし」
広島での公開がちょっと遅れたが、70年代のテレビトークショーを舞台にしたオカルトホラー映画。(ハリウッドではなく、実はオーストラリア映画)
撮影、ファッション、美術、セット、展開と70年代らしさを醸し出しつつ、現代の映画的な予測不能なクライマックスに持っていく技巧が心地よかった。

他にも「コヴェナント/約束の脱出」「マッドマックス:フュリオサ」「エイリアン/ロムルス」「ソナチネ」「二度目のはなればなれ」なども良かった。

その一方、ガッカリ映画が多かったのも今年の特徴。
「ドライブアウェイ・ガールズ」
コーエン兄弟のコメディは面白いと思った試しがない。

「アーガイル」
面白い顔ぶれに面白いセンスなのだが、今は乗れなかった。

「落下の解剖学」
予想してた映画と違った。

「バティモン5」
前作「レ・ミゼラブル」が良かっただけに、同じテーマでこの仕上がりは弱い。

「デッドプール&ウルヴァリン」
ストーリーが無理くりすぎる。

来年も面白い映画に出会えますように
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デリリウム

2024年11月10日 | ★☆☆☆☆

キングレコードの上映イベント「ホラー秘宝まつり」、こちら広島でも序破急の一部過激勢力の尽力でギリギリの日程とは言え上映実施。
今回のラインナップで唯一ジャロ映画(イタリア製猟奇サスペンス映画)の「デリリウム」を鑑賞することに。

舞台はロンドン。太もも露わな女性を狙う連続殺人事件が発生。事件に協力する犯罪心理学者に容疑がかかる。彼にはサディスティックな欲求に苛まれる性癖があり、美人妻は夜ごとの悪夢に悩まされる。この家の若い女性家政婦は妻と同性愛関係にあるようで、さらに近所に住む主人公のいとこ(女性)も妻に愛情を抱いている。
それぞれのエロティックな思惑を背景に、殺人事件は続く・・・

と言葉にするとなかなかのサスペンスっぽいのだが、それがストーリー展開と描写に全く反映されていない。
うわっ滑りなセリフと雑多な冗長なシーンのコラージュで、何が起こっているのか理解するにはそれなりの映画経験と想像力を必要とするのは間違いない。

舞台はロンドンなのだが、建物とか背景とか完全にローマ。ロンドンである必要性は全く語られない。殺人事件現場で登場するのはマカロニ映画ファンおなじみのモンテ・ジェラート水辺公園。カステラッリの「地獄のバスターズ」で裸のナチ女兵士がMP40を乱射することで有名になったあそこだ。ちなみに先日観たフランコ・ネロの「ヒッチハイク」でも使われて、コリンヌ・クレリーがヌードになってた。
さらに背景に崩れかけた三角形の尖塔がちらりと見える場面も。ひょっとしてカベスタジオの近くなのだろうか。

OPクレジットではなんとキャストの中にマカロニウエスタンの主題歌でおなじみのラオールの名前が!
結局最後までどの役か分からなかったが、エンドクレジットではマカロニ主題曲ばりのラオールの熱唱が!
鑑賞後、調べてみたら刑事役という結構重要な役どころ。(ただし、事件解決には全く役立たず。)一体、どんな経緯でこんなキャスティングになったんだ!?

何かとレア体験な映画ではあったものの、まあよほどのことがないともう観ないかな。
ということで、評価は
★★☆☆☆






題名:デリリウム
原題:Delirio caldo
監督:レナート・ポルセッリ
出演:ミッキー・ハージテイ、リタ・カルデロニ、ラオール

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シビル・ウォー/アメリカ最後の日

2024年10月06日 | 年間ベスト3
日時:10月4日
映画館:イオンシネマ広島



オーストラリア在住の知人が「面白かった」とアップしてて、早く観たかったワタシの好きなディストピア映画。配信にもならず、劇場公開されて一安心。

現代のアメリカ、大統領は3期目に突入し、カリフォルニアとテキサスを中心とした西部勢力が現政権に反旗を翻している。フロリダも一大連合を結成しており、アメリカは内戦(シビル・ウォー)状態に。
自国民に空爆も辞さない大統領の独占インタビューを取るべく、ニューヨークに滞在していたジャーナリスト達がワシントンDCを目指す。

【以下、ネタばれあり】
予告編ではクライマックスにあたるドンパチが中心の構成となっているが、実は映画の4分の3くらいまで派手なドンパチは起こらず、ニューヨークからワシントンDCを目指すジャーナリスト4人のロードムービーとなる。
ニューヨークからワシントンDCまで最短距離は激戦地だったり交通封鎖だったりで、大きく迂回することになり、途中、内戦の惨い現状を目の当たりにする。

内戦を巡る政情はほとんど描かれることがなく、西部勢力の盟主が誰かとか、全米の戦局とか不明のままで、その辺はより観たかった反面、まあ描き出すときりがないし、どこかでリアリティが消失してしまいそうだから、ここは好意的に受入れよう。

ジャーナリスト4人はワシントンDCに至るまでに様々な暴力的な連中に出会うが、それが進撃を続ける西部勢力の兵士なのか、守勢の現政権の兵士なのか、ボランティアやミリシアの民兵なのか、ただ軍服をまとった過激な集団なのか、ほとんどわからない。
誰とも分からない連中が銃を持って、殺し合っているって、銃社会アメリカの写し絵なんだろうな。

どうにかこうにかワシントンDCにたどり着くと、現地は第二次世界大戦のベルリン攻防戦状態。遂に西部勢力はホワイトハウス攻略に取り掛かる。よくできたセットでの市街戦がなかなか盛り上げてくれる。ジャーナリストの皆さん、ヘルメット被ってください。

主演の報道カメラマンはキルステン・ダンスト。昔からヒロイン顔立ちとは思わなかったが、遂に顔立ちと年齢のバランスが合致した役どころにたどり着いたって感じで、存在感が際立っている。

インタビューを取りたいジャーナリストはワグネル・モウラ。ヒゲで分からなかったが、ブラジルの暴力ポリス映画「エリート・スクワッド」の隊長だった人。事前に分かっていたら、大暴れすることに期待してたところなのだが、報道と個人的感情の狭間に揺れ動く。

ここに相乗りするのが「エイリアン/ロムルス」のヒロイン、ケイリー・スピーニーの報道カメラマン志望。もちろん内戦のど真ん中に放り込まれて、サディスティックな仕打ちを受け、ゲロまで吐く羽目に。(ゲロ・プロフェッショナルのワタシから見てもよく出来ている。)155センチと小柄で奮闘するから、応援したくなる。

あと、ノンクレジットでジェシー・プレモンズが出演。これがなかなか強烈な役どころで、素晴らしい。

アメリカの行政や軍機構としていきなりこんな内戦になるとは思えないが、リアルな描き方で明日にも起こりそうな空気感の醸し出し方が素晴らしいので、
評価は
★★★★☆

ところで、近未来ではなく、明日ディストピア映画が大好きなワタシとしては引き続いて「トゥモロー・ワールド」を観たのでした。すでに人類には子供が生まれなくなっており、2027年の世界はテロと暴動と抑圧が蔓延する世界となっております。
3年後の世界がそうなっていないと誰が言える。






題名:シビル・ウォー/アメリカ最後の日
原題:CIVIL WAR
監督:アレックス・ガーランド
出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、ジェシー・プレモンズ

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エイリアン:ロムルス

2024年09月23日 | ★★★★☆
日時:9月6日
映画館:イオンシネマ広島

エイリアンシリーズの中では、実はマカロニウエスタン・テイストにあふれ、悪そうな面構えが満載だった「エイリアン4」がお気に入り。もちろん「1」は古典として好きで、逆にエイリアンクィーンという邪道なコンセプトを持ち込んだ「2」などは全然評価していない。

さて、本作は「1」の正統派な続編。
「1」の事件から十数年、ウェイランド・ユタニ社はノストロモ号の残骸からゼモノーフを回収する。
さて、舞台は変わってジャクソン鉱山惑星で過酷な労働を強いられるレインは、新天地の惑星への移住を夢見ていた。そんな時、友人から惑星軌道上に漂流する宇宙ステーションの存在を知らされ、宇宙ステーションから移住に使えそうな人工冬眠ポッドのサルベージを持ちかけられる。
この宇宙ステーションこそ、先に回収されたゼモノーフを持ち込んで実験していた「ロムルス」「ロムス」だった。
当然、そんなことを知らない一行に恐怖が襲い掛かる。

本作、上手だなと思うのが脚本の組み立て方。キャラクターの設定や動機付けだけでなく、「1」や「2」のエッセンスを巧みに盛り込み、時として「ブレードランナー」との連関性も感じさせつつ、ストーリーに厚みを与えている。ウェイランド・ユタニ社の真の思惑も描かれるし、何と言っても驚くべきはあのキャラクターの再登場。
普通ならこじつけともとられかねないのだが、劇中のキャラクター設定と齟齬なく、ビジュアル的にもなじんでいるところが素晴らしいの一言。

観客としてはエイリアンの生態が既知の情報なので、そこで盛り上がらないのはちょっと残念なところで、できれば「1」のノベライゼーションで語られた生きた人間をエイリアンの卵に変質させてしまうという設定は復活させてほしかった。映画的に分かりにくいんだと思うんだけどね。
エンディングがいつもの展開になってしまっているが、そこは映画だから仕方ないところか。そろそろ公開されそうな配信動画シリーズの内容が気になるところ。

ストーリーの面白さを評価して、
★★★★☆

ところで(以下ネタばれアリ)
再登場するキャラクターはイアン・ホルムのアッシュ(型人造人間)なのだが、最初、デジタルでの再現かと思っていたら、「ロード・オブ・ザ・リング」でのダミーヘッドデータを使った、アニマトロニクスによるリアルな造形だったという。妙に生々しく、デジタル技術もここまで進化したのかと思ってたが、実演と知ってなんだか嬉しくなった。
遺族も再登場に喜んでいたというエピソードがさらに嬉しくなる。






題名:エイリアン/ロムルス
原題:Alien:Romulus
監督:フェデ・アルバレス
出演:ケイリー・スピーニー、デイビッド・ヨンソン
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ポライト・ソサイエティ

2024年08月29日 | ★★★☆☆
日時:8月26日
映画館:サロンシネマ

ロンドン在住のインド系姉妹、姉は美大に進学するも自分の才能に限界を感じて挫折、女子高に通う妹はスタントウーマンを目指して、日々、訓練と動画自撮りに余念がない。
そんな中、姉はとあるご縁からパキスタン系富豪に見初められて付き合い始め、結婚に向かってまっしぐら。夢を捨てる姉を憂う妹は彼氏の不審な行動に気付き、結婚阻止に向けてあれやこれやと画策する・・・

空手を習い、アクションとカンフー大好きガール(部屋には「アイアンフィスト」とかブルースリーの出ていた方の「グリーンホーネット」とか「グリーンディスティニー」とちょっとマイナー路線映画のポスター)の無軌道行動が、「キル・ビル」とか初期のガイ・リッチー作品みたいに賑やかな映像と音楽テンコ盛りで描かれる。

「ヴァージン連合」と揶揄される女子高仲間とギャーギャー騒ぎながら、彼氏を陥れようとする様はなかなか楽し気で、こちらもワクワクしてくる。もちろん、やっていることは完全に犯罪。

最後は予告編にもあるように姉救出のため、結婚式にカチコミをかける。サリー姿で跳んだり跳ねたりする様は見事にきれいだし、女子高の友達も巻き込んだスラップスティックな集団戦はもっと見せてほしい。最近、個々のアクションが光る集団戦ってスクリーンに登場しないからね。
なのだが、パブリシティや予告編で多くを見せすぎて、出オチになってしまっているのが残念。また、彼氏の悪人ぶりがうまく描かれておらず、中盤のドタバタ劇とのつながりがよろしくない。

また、イギリス資本の映画なので、アクションとかダンスシーンが本家のインド映画に比べるとかなり薄味。時間も半分くらい。本家でこの上映時間だったら、まだ彼氏すら登場していない。

諸々いいところもあるだけに喰い足りない部分が余計に気になってしまう。もったいない。

ということで、評価は
★★★☆☆

ところで、スタントウーマンに憧れる女の子が主人公なもんだから、帰ったら早速、コロナ禍中にやけくそ気味に上映されたドキュメンタリー映画「スタントウーマン」をアマプラ再見したよ。






題名:ポライト・ソサイエティ
原題:Polite Society
監督:ニダ・マンズール
出演:プリヤ・カンサラ、リトゥ・アリヤ
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フォール・ガイ

2024年08月18日 | ★★★★☆
日時:8月17日
映画館:イオンシネマ広島

バカバカしさが最高に良かった「ブレット・トレイン」のデビッド・リーチ監督の新作で、90年代のTVシリーズ「俺たち賞金稼ぎ!フォールガイ」を原作とした作品。
TVシリーズの方はリー・メジャースが主役で、スタントマンが本業の主人公たちが、副業で賞金稼ぎをしているというプロットまでは知っているのだが、実際のシリーズは見たことがない。

ワタシは映画製作の裏方で活躍するプロの話が大好きで、メイキング・ドキュメンタリとか大好きだし、USJがオープンしたころにあった映画製作の裏側みたいなアトラクションにはちょっと涙した。
なので、スタントマンが主人公の本作もちょっと期待していたのだが、まずオープニングで本物のスタントマンの活躍ぶりがショートクリップで紹介される。文字通り体を張ってアクションする映像に感動してしまう。

ジャッキー・チェンの映画はともかく、70年代のポリスアクションものの気の狂ったような(某イタリアでは違法な)カーチェイスが大好きなだけに、最近のCGに頼ったアクション映画の自殺行為とも言うべきまやかし映像には辟易してた。スクリーンでリアルスタントがたっぷり見られるだけでもうれしい。

主人公のライアン・ゴズリングはスタントマンだが、撮影中のある事故をきっかけに2年間、仕事から離れていた。そんな時、敏腕女プロデューサーから新作映画への参画を依頼され、オーストラリアに。新作映画の監督はカメラ助手時代に付き合っていたエミリー・ブラントだった。
まず、オープニングの事故が1シーン1カットで描かれる。しかもガラス窓を通り抜けて、エレベーター移動付き。1シーン1カット演出も好きなので、ここでも嬉しくなってしまう。
その後、オーストラリアの撮影現場に移るが、「地獄の黙示録」並みの大混乱で、エミリー・ブラントがコッポラに見えてくる。ここでも1シーン1カットが使われ、製作スタッフが進行確認で右往左往するさなか、後ろで爆発シーンのテストがバンバン進む混乱っぷりは「続・夕陽のガンマン」の橋誤爆事件を思わせる。

それからゴズリングとエミリー・ブラントの恋のさや当て合戦と再燃があり、その一方で行方不明となった主役俳優の捜索任務が入る。
2人の恋愛模様は少しかったるく、話のテンポを落としているきらいもあるが、厄介な男に翻弄される役が定番のエミリー・ブラントが美人なので許そう。
まあ、スタントを見せるのが映画の主旨なので、ストーリーはどうでも良い(笑)

その分、スタントアクションシーンは当然力が入っているので、見ていてワクワクしてくる。スタントを担当するのは「87 EAST プロダクション」。ジョン・ウィックシリーズを手掛けた彼らかと思っていたら、あちらのチームは「87 eleven」だった。ややこしい。

元々映画好きをターゲットにしたような映画なので、作品中にも色々な映画のタイトルやセリフが引用される。ここもお楽しみの1つ。ちなみに宇宙ラブストーリー版「真昼の決闘」と説明される劇中作のタイトルは「METAL STORM(メタルストーム)」。80年代同名のB級SF映画があり、日本でも公開されました。ワタシも観ました。どうでもいいことだけど。

スタントマンへの愛情に満ちたアクション盛りだくさんのラストを迎え、映画はハッピーエンド。たぶんエンドクレジットで、実際に撮影現場のビハインドシーンを流すんだろうなと思っていたら、やはりその通りの映像が流れてますます嬉しくなってしまう。

「ブレット・トレイン」を観た時に「年に一度はこういったバカ映画は必要」と書いたけど、まさにその名に恥じない良い映画。二日酔いの日に観てたら、たぶん感動で泣いてた。

なので、
評価は★★★★☆

ところで、【以下ネタバレあり】
エンドクレジットの途中にまだストーリーの続きがあり、なんとそこにご本家リー・メジャースが登場!
「Aチーム ザ・ムービー」の時にも同趣向があったけど、予想すらしてなかった。
さらにリー・メジャース自身、日本ではどちらかといえばマイナーな存在なので、この登場にウケていたのはたぶん劇場でワタシひとり(笑)






題名:フォールガイ
原題:Fall Guy
監督:デビッド・リーチ
出演:ライアン・ゴズリング、エイミー・ブラント
コメント
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