kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

孤狼の血LEVEL2

2021年08月28日 | 邦画
日時:8月27日
映画館:八丁座




ワタシの本業の隣のシマが関わっていたり、知り合いが組員役で出ていたこともあり、製作時から何かと耳に入ってきていた「孤狼の血LEVEL2」。ウチの職場では「もう観たか」「なかなかエグイな」が毎朝の挨拶となる牧歌的な環境にあって、早々に劇場へ。

とっても暴力的な広島県、広島市と呉原市(呉市)の組織が血みどろの抗争を繰り広げた前作「孤狼の血」から3年、呉原市東署の刑事日岡(松坂桃李)の影の仕切りの元、表面上の平静を保っていた。しかし、広島市側組織の上村(鈴木亮平)が出所してきたことで様相が一変してくる・・・

いつまでたっても映画に身を入れられなかった前作とは異なり、今回は完全に娯楽作品として観ることができる。とはいえ、かなり前作のエピソードを引きずっているので、前作が未見だとかなり分かりにくいのは確か。それでなくても双方(というか三方)の組織の関係とかしっかり観てないと混乱する。

とにかくキツイ、エグイという評判を耳にするが、まあ、映画的経験豊富な年寄りにしたら「今どきの若いもんはヤワじゃのう」レベル(笑)

しっかり広島ロケされているので、どこかで見たことのある景色が続出するのだが、割と実際の場所とリンクした場所で撮影されているので「100キロ離れた設定の場所が隣の土地でロケされているじゃん!」的な違和感はあまりない。まあ、「平成3年のあの建物はなかったで」とかはあるけど。

キャスティング的には鈴木亮平と中村梅雀が輝いているのだが、前者は人懐っこそうな笑顔と狂犬の顔のギャップが想像以上。他にも前作から引き続いて嫌味な監察官役の滝藤賢一とか呉原側組織の斎藤工なんかもいい雰囲気だしている。
逆に二又一成のナレーションが今回はひどくウソくさい。背景説明とストーリー説明をごっちゃにしている。

【以下ネタばれあり】

以下、カマチョフ的見解なのだが、本作は「用心棒」(と「荒野の用心棒」)の変形バージョン、もしくはリブートではないのだろうか。
2つの組織を手玉に取ろうとする裏表のある主人公、その思惑に感づいて事態を最悪にする悪側No.2の存在。裏工作がばれてリンチにあう主人公と一大殺戮、そして対決。
そう思うとボコボコにされて血まみれで地面を這う松坂桃李なんてまんま三船敏郎かイーストウッドだし、最後のカチコミの展開なんて「荒野の用心棒」のそれにソックリだ。
一方の親分が口ばっかりで頼りなく姐さんの発言力が大きいところや、主人公を支える年寄りがいるところもの似ている。(中村梅雀=東野英治郎)
詰めた指を犬が咥えて走ろうとするし、鈴木亮平が逃げようとする手下を撃つシーンは「夕陽のガンマン」に構図的にも似ている。目つぶし拷問は「続・夕陽のガンマン」でも重要なシーンだった。
何といっても目元アップがやたら多いしね(笑)

原作の第2作につながるラストは落ち着きが悪いのだが、今度筒賀駐在所に行ってみよう。

ところで今、ウチの職場にはガチな県警機動隊OBが在籍していて、背中を警戒する呉越同舟な毎日(なんでや:笑)






題名:孤狼の血LEVEL2
監督:白石和彌
出演:松坂桃李、鈴木亮平
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JUNK HEAD

2021年06月11日 | 邦画

見ようかどうか踏ん切れなかったんだけど、「激レアさん」や周辺の評価を聞くとなかなか面白そう。
ということでスケジュールをやりくりして劇場へ。

遺伝子医療の発達で不老不死だが生殖力をなくした人類とその使役役として開発された人工生命体マリガン。両者の戦争から数千年を経て、地底社会で独自の発展を遂げ、生殖力を持つらしいマリガンを調査するために主人公の調査員が派遣される。

この世界がストップモーションアニメと独特のデザインで描かれていく。基本プロットは「宇宙空母ギャラクティカ」の逆バージョンみたいだが、オープニングの出動シーンからして音楽とともに80年代のSF映画、特にマカロニアポカリプスもののチープな雰囲気を彷彿とさせる。

工場の廃墟感あふれる地底世界には独自に発展したマリガンとクリーチャーがあふれる怪奇な世界だが、アニメのほのぼのとした動きともあいまって、どことなく間が抜けていて嫌悪感は感じさせない。
まあ、その一方で秩序があってなさそうな弱肉強食の世界なのだが。

主人公はその世界でいろいろ巻き込まれてどんどん残酷な地の底へ。この辺はダンテの「神曲」みたいだ。

地底で生活するマリガンやクリーチャーは基本、目が退化しており、その外見は「エイリアン」や「ヘルレイザー」を思い起こさせる。地下世界は「マトリックス」みたいだし、なんかこのいつかどこかで見た感覚に親しみを覚えるのだが、あとで調べたら監督は私と2歳違い。どおりで。
他にもジェットストリームアタックが出たり、北斗の拳みたいな展開があったりと80~90年代のSF映画のよく言えばオマージュ、悪くいえばパクリ的な中身が楽しい。

細部まで作り込まれた地下社会のディテールはモデラーとしても興味深く、セットのペイントだけで気が遠くなってしまう。撮影には7年を要したというが、そこを差し引いてもストップモーションアニメとして充分なクオリティだ。

特筆すべきは1500円もする本作のパンフレットで、ストーリー背景やキャラクター、スタッフ紹介はもとより、完全なメイキング本として資金調達からカメラのレンズの種類、3Dプリンターによるセットの作り方まで詳細に記載されていて、非常に参考になることが多い(何の?)

ところで、本作は三部作の第1作で残り2作も楽しみなのだが、完結までには単純計算だとあと15年はかかることになるなあ。






題名:JUNK HEAD
監督:堀 貴秀
出演:堀 貴秀
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孤狼の血

2018年06月08日 | 邦画
本作がロケされた広島では、ご当地映画としてレイティング無し!
小学生でも鑑賞できるファミリームービーとして老若男女に大ヒット!
と言うのは大嘘だが、大ヒットしているのは本当。映画館でも夫婦やカップルでチケット購入しているのをよく見かける。

で、よくある感想が「流血が・・・」「えぐい」「痛々しい」。
何を言っている。ついこないだまでこの程度のバイオレンス描写はレイティング無しで劇場にかかっていたぞ!例えば・・・閑話休題

さて、映画の方は広島県呉原市を舞台に、暴力団同士の抗争とそれを防ごうとする武闘派と新米刑事のコンビの捜査が描かれる。

最初の東映三角マークに始まり、「仁義なき戦い」に代表される実録ヤクザ映画風にスタートするのだが、結論から言うと映画にあまり乗れなかった。

ひとつには実録ヤクザ映画のフォーマットでさらにご当地映画という事情もあり、自分の中でフィクションとノンフィクションの境界があいまいになって、映画に集中しきれかったことがある。(そりゃ、これを県外の人が観たら実話だと思うぞ。)
さらに、「仁義なき戦い」の時もそうだったが、対立する暴力団の構図がすぐに呑み込めず、そっちを追っかけるのも大変だった。

もうひとつには極道側にギラギラ感が弱い。「仁義なき戦い」シリーズは言うに及ばず、同じ監督の「凶悪」にしても「日本で一番悪い奴ら」にしても悪人がもっと陰湿でたちが悪く、欲望に正直でギラついていた。
後づけの感想だが、本作の極道がほぼ金の話をしていなかったような気がする。彼らの行動原理が縄張り争いかメンツ争いで、その源泉である金への執着を見せなかったことで悪のパワーを削いでしまった。

乗れない点はあったにせよ、もちろん、信義のためにあらゆる手段を打ち、敵味方関係なく巻き込んで、生き残りを図る主人公大上の姿には共感するところも多い。(「狼=大上」つながりで「子連れ狼」を連想したが、「虎落笛」もそうなのか?)

配役の中では言うまでもなく役所広司が素晴らしいのだが、菅原文太の役回りと山本五十六と阿南陸相を同じ俳優が演じているのだから、邦画の俳優の弾数の少なさも致命的だ。
一方、松坂桃李の新米刑事役が今風で心配だったが、徐々に染まって、目つきが座っていくさまがいい。まさにニーチェの「深淵を覗く時」ですな。
全般に広島県警側が個性的で輝いていたのに対し、極道側はあまり印象に残っていないなあ・・・

ゲスい広島弁のセリフの数々も秀逸で、小学生高学年の子どもに向かって放つ「チン○に毛はえたか?」には大笑い。この頃のオッサンはみんな言ってた。(と思う。)

ところで、なぜか劇場では広島県警OBと一緒だった。「本物の血を見てきたんで、映画とは言え、思い出して嫌ですわ。」とか「室内で暴れられんよう、取調室はもっと小さかった」とか「かき氷器はなかった」とかリアルな裏話を色々教えてもらいました。





題名:孤狼の血
監督:白石和彌
出演:役所広司、松坂桃李

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エルネスト

2017年10月20日 | 邦画
日時:10月18日
映画館:シネツイン
ウチの職場近くでもロケしていたチェ・ゲバラの映画。
映画は大きく分けて、チェ・ゲバラの広島訪問、日系ボリビア人フレディのキューバ留学、フレディのボリビア戦記の3つのパートに分けられる。

最初の広島パートは身びいきがあるとしても、見事な出来栄え。可能な限り再現された60年前の平和記念公園訪問は涙が出て来るし、新広島ホテルを再現した美術は本当に素晴らしい。(「24時間の情事」を参考にしたらしい。)

広島人ならぜひ観るべきだ。

続いて、キューバ革命間もない頃にボリビアから同国に留学した日系人フレディが主人公となる。医学を学ぶ彼はボリビアの現状を憂い、カストロやゲバラの革命精神に触れていく。

だが、最初のパートとどうもつながりが悪い。フレディの身の上話が長く、ゲバラとの接点も思ったより少ない。ボリビアの現状も語られるが、映像的に弱いので惨状が伝わらずフレディの決心につながらない。革命賛歌のシーンもあるのだが、唐突感が拭えない。

フレディはその後、ゲバラ同様にボリビアでの革命活動に身を投じるが、圧倒的に不利な状況下で追い詰められて・・・

ボリビアでの革命闘争もあまり描かれず、肝心のチェ・ゲバラがキューバの大臣職を辞して、ボリビアでの革命闘争に身を投じたことがほとんどわからない。ボリビアの軍事政権、バリエントス側の悪行が描かれないので、フレディやゲリラの革命精神が見えないし、キューバとボリビアの関係に馴染みの薄い日本人にとっては、かなり話がわかりにくいではないだろうか。

これがもっと「赤い」監督だったりしたら、革命の闘志に燃えていく青年たちとして描いたのではないかと思うし、たぶん、その方が面白かったのではないかと思う。
70年代映画にあった理想主義と熱狂を観てきた者としてはパワー不足だけが目についてしまった。

ちなみにボリビアでフレディやゲバラの反対側にいたのが、ナチ戦犯のクラウス・バルビーであり、その顛末を描いたドキュメンタリー映画「敵こそ、我が友〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜」はムチャクチャ面白いので、一見をおすすめします。
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バクマン。

2015年10月14日 | 邦画
日時:10月12日
映画館:イオンシネマ広島

原作が好きな「バクマン。」の実写映画化。
コミックの実写化というと、大体、大幅なアレンジが加えられていたり、世界観が伝わらなかったりで残念な結果に終わることが多くないのだが、本作はアタリ。10巻のストーリーの中からオイシイところを抜き出し、原作の雰囲気以上に上手く伝えている・・・って、原作自体が実話ベースに虚実を織り交ぜて描いているんだから、実写にしても違和感がないのは当たり前か。

それでも絵では伝えきれないことが、実写だとリアルに描かれるのがいい。特に主役の最高とおじの川口たろう(宮藤官九郎)の関係は原作以上に素敵に伝わってくる。クドカンが一心不乱にマンガを描く様子を最高が憧れを持って見つめる様なんか、それだけで涙。

クドカンに限らず、この映画はキャスティングの勝利によるところが大きいのではないだろうか。佐藤健と神木隆之介の主演2人もさることながら、キャスト全員が実に上手いこと原作のキャラクターを消化している感じがする。新しく仲間になったマンガ家たちと編集が集って、マンガ論と将来について熱く語るシーンなんてものすごくいい空気感が出ているし、特に新妻エイジの染谷将太がエキセントリックなキャラクターを嫌味なく好演しているなあ。

主役2人のキャスティングが逆じゃないかと誰しも思うのだが、セリフを語りだすと全然違和感のないあたりも、上手さを感じさせる。が、逆に佐藤健も神木隆之介もすでに経験豊かな役者なので、大人の世界に入り込んできた新人さん感が全然感じられない・・・。むしろここは芸達者な役者同士の演技を楽しむ方がいいんだろうな。(とはいえ、帰ってから原作を読み直したら、やはり真城最高のセリフは神木隆之介の声で聞こえて、頭の中は混乱。)

ストーリー的には主役2人の成長とサクセスストーリーに焦点が当てられ、新妻エイジとの対決もどちらかというと消化不良。「セッション」にあったような頂点を目指すためのクリエイターの執念もあまり感じられない。原作の石塚とか七峰といった悪役はバッサリカット。でも、個人的には「バクマン。」の悪役って、「才能はあるんだけど、人間的な欲求ゆえにその使い道を間違った。」という哀れさが感じられて、決して嫌いじゃなんだよな。そう思えるのも、大人になったからだけど。

映画オリジナルのアイディアとして、ふたりが描くマンガにヒロイン亜豆にそっくりなキャラクターを登場させるんだけど、
原作「バクマン。」の亜豆
 ↓
映画の亜豆役(小松菜奈)
 ↓
劇中のマンガに登場する亜豆に似たキャラクター
の順で推移しているので、頭の中が混乱しちまったぜ。(文章で書くと何が何か分かりませんので、映画館で確認してください。)

ところで、ワタシって邦画はあまり観ないんだけど、「舟を編む」とか本作とか何故か出版にまつわる映画が好きだな。






題名:バクマン。
監督:大根仁
出演:佐藤健、神木隆之介、山田孝之、染谷将太、小松菜奈、リリー・フランキー
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日本のいちばん長い日

2015年08月23日 | 邦画
日時:8月20日
映画館:八丁座
パンフレット:A4横版820円。監督・出演者・スタッフのインタビュー満載で、読み応えたっぷり。

新旧問わず邦画はあまり観ないのだが、そんな中でも大好きな作品の1つが岡本喜八の「日本のいちばん長い日」(以下、岡本版)。オールスターキャストの群像劇で、ひとつの組織、ひとつの時代の終焉を描いて、面白かった。

その再映画化なのだが、岡本版とは違い、物語を昭和20年4月の鈴木首相就任からスタートさせ、8月15日に向けて、収束させていく。岡本版とは、史実の時間も映画の上映時間も異なるので、当然、映画のアプローチの方法も異なってくる。

原田監督が話しているように、本作は昭和天皇、鈴木首相、阿南陸相の3人を軸に展開する。監督の狙い通り、家族のつながりをベースにしたストーリー展開は、ディテールを緻密に積み重ねながら、それぞれの登場人物のドラマを進めていった岡本版とは異なっており、面白く出来ている。(よって岡本版前半の山場で、個人的に好きな終戦の詔書を巡るやりとりや、玉音盤録音のくだりなどは、あっさりと描かれる。)

原田版のいいところはその顔ぶれにあると思う。今、映画でもTVドラマでも出演者のほとんどがどこかで見たことのある顔ばかりで、どうしても役者の印象が他の出演作他にひきづられてしまう。
岡本版の頃は俳優の顔はスクリーンでしか見なかったから、オールスターキャストにも意味があったが、今は事情が違いすぎる。
しかし、原田版は主に舞台で活躍する俳優を起用しており、あまり顔になじみがないおかげで、ドラマに没入することができる。TV受けする顔ではないが、ものすごくみんないい顔なのだ。(ワタシ自身が知らないだけなのだが、これが功を奏した。)

そうなってくると、逆に浮いてしまうのが、やっぱり役所広司の阿南陸相。岡本版の三船敏郎の印象が強いとはいえ、「聯合艦隊司令長官 山本五十六」と同じ違和感を覚えてしまう。何を演じても役所広司なのは、あの印象的な声のせいではないだろうか・・・。

一方で山崎努の鈴木首相は、岡本版の笠智衆とは違うアプローチで描かれる。岡本版でむしろ省略されていた、息子が秘書官だった史実が今回は盛り込まれ、耳が悪かった事実がうまく人物造形に活かされている。山崎努、上手いなあ。

松坂桃李の畑中少佐をはじめとするクーデター派の将校も、文字通り血気盛んだった岡本版の顔ぶれと違った、参謀将校としてのエリートくささがよく出ている。それがゆえに、その知性を間違った方向に使ってしまった悲劇性が際立ったような気がする。とは言え、黒澤年男の狂気じみた目つきは、言うまでもなく大好きです。

後半はモンタージュで、同時進行で進む物語を手際よく見せてくれる。史実を知っているだけに、もう少し描きこんで欲しかったところではありますが。岡本版で天本英世が演じていた佐々木隊長役を、彼が特別出演しているのには驚き。ギャップの大きさに吹き出してしまう。(笑)

こういった映画の常として、史実を知っているのと知らないのでは全然、観る印象が違うと思うのだが、初めて観る若い世代はどんな印象を受けるのだろうか。

ところで、劇中、ヴェラ・リンの「We'll Meet Again」が流れるのはビックリ。同曲といえば、やはり「博士の異常な愛情」、8月には欠かせないセレクトです。(どうでも良いことだが、安井藤治役で出ている山路和弘は「博士の異常な愛情」DVD版で、ピーター・セラーズの3役を吹き替えている。)







題名:日本のいちばん長い日
監督:原田眞人
出演:役所広司、本木雅弘、山崎努、堤真一、松坂桃李
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寄生獣 完結編

2015年05月08日 | 邦画
日時:5月6日
映画館:イオンシネマ広島

前作の記事はこちら
の後編。

予想どおり薄幸の同級生「加奈」のエピソードはざっくり割愛されているが、あまり気にはならない。

映画序盤はゆっくり目のペースで進むが、完結編では探偵「倉森」「田宮良子と子ども」「市役所」「後藤」の4つのストーリーを語らなくてはならない。どうするんだと心配していると、途中から一気に同時進行で話が進む。

前作同様、うまいやり方だと思う反面、原作に思い入れのある者としては、このまとめ方にいささか強引さを感じたりもするのだが、まあ映画なのだから仕方ないだろう。

見せ場として期待は「市役所」の大殺戮だったのだが・・・あれれ、これで終わり?好きだったパラサイト殲滅の研究と準備段階もほぼカットされ、「市役所」攻防戦全体に唐突感が残ってしまった。

大量殺人者「浦上」も期待したほどの描写ではなく残念。異常さを前面に出すぎて、悪ふざけ感が弱まってしまい、平板なキャラクターに終わってしまっている。連行していた刑事をショットガンで射殺するシーンにも期待してたんだけどなあ・・・。(残酷シーンばかりを期待しているように思われそうだが、岩明均のマンガの売りの1つがそれなのだから、仕方ない。)

気になるのは、そこから。
「市役所」からクライマックスまで一気に話を進めるのだが、いやいや大雨の中、女子高生が山中のゴミ処理工場に一人で来るなんて、話として無理がありすぎるでしょう。ここで興ざめする上、「後藤」との対決はかなり映画的で現実離れしたシチュエーション。

それはそれで楽しく、煉獄をモチーフにした点は買うのだが、それでもあの規模はデカすぎ。それまでの小都市の描写とのバランスが悪い。

まあ、原作を変にいじくりまわして原型を無くした作品に比べると、雰囲気はよく出ていたと思うが、原作どおりのコマ割りだと一番感心したのは、あの時の村野里美の表情でしたよ。(笑)

ところで、何ですか、意味不明のあのエンドクレジットは?






題名:寄生獣完結編
監督:山崎 貴
出演:染谷将太、深津絵里、橋本愛、阿部サダヲ
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寄生獣

2014年12月07日 | 邦画
日時:12月6日
映画館:バルト11

連載はリアルタイムで読んでいて、コミックも全巻そろえているので、四半世紀を経て実写映画化というと感慨深いものがあるなあ。

「寄生獣」の話をする時、必ず人に言うのが連載開始時は全3回の短期集中連載予定だったということ。(前号予告で明記されていたことをはっきりと覚えている。)それが順々に伸び、全10巻になるとは思っても見なかったし、そのせいでストーリー展開にムラがあることは否定できないだろう。(早々の母親の死や2回に渡る学校襲撃など)

【以下、ネタばれあり】

全10巻のコミックを2回の映画にするのだから、ストーリーの整理は止む得ないが、手堅くまとまっていると思う。「A」と「母親」のエピソードを1つにまとめるのは予想外のアイディアだが、映画全体の流れからいうと少し浮いてしまっているのが残念。

ラストの対決の仕掛けは原作好きとしては少し受け入れがたいものもあるが、映画的には泣ける場面。

岩明均の作品はどうでもいい脇役が光っており、原作にもジジイ・ババアや公安当局など印象的なセリフを吐く面々が揃っていたが、そういうのはカットされている。当然だけどね。完結編では「加奈」は割愛されそうだが、「浦上」のブッとんだキャラに期待しよう。

誰しも口にする第1話の「うばあ~、ばくん」のシーンは衝撃的だったが、数々の残酷シーンを実写でみると原作以上にイヤ~な感じが伝わってくる。元々原作自体、クセのないタッチと白っぽい画面と残酷描写のギャップが良かったのだが、映画にしてみるとどうしても白っぽい絵がゴチャゴチャした映像とならざるえない。

そんなことを言いながらも、「島田」の学園大パニックなんてもっと派手な映像を期待していたのだが・・・。完結編の「市役所」攻防戦を楽しみにしていよう。

高校生が主人公でありながら、時代背景をあまり描きこんでいないおかげで、25年を経ても学生生活にさほど変化がないのだが、中でも橋本愛の「村野里美」は原作の雰囲気にかなり近くていい感じ。

國村隼の関西弁の「平間」も原作の空気感でよい感じです。
阿部サダヲの「ミギー」はイメージとちょっと声が違うかな。悪くはないけどね。

なんだかんだいいながらも、映像化としては成功しているんじゃないだろうか。






題名:寄生獣
監督:山崎 貴
出演:染谷将太、深津絵里、橋本愛
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春を背負って

2014年07月01日 | 邦画
日時:6月23日
映画館:八丁座

ここ数年、山歩きをしており、TVや映画を観ていても大自然の光景が気になるようになった。「127時間」のオープニングなんて大好きだし、海外テレビドラマの「ブレイキング・バッド」のドラマも好きだが、背後に広がるニューメキシコの風景も好きだ。山の方はまだまだ1000m未満だし、山小屋もテントも冬山も未体験だが、風景にあこがれるだけでも楽しい。

お話しは1つの山小屋を巡る人間模様。
松山ケンイチに蒼井優、池松壮亮など世にいう芸達者な役者ばかりで、それが大自然にサディスティックに痛めつけられるシーンはなかなか見応えがある。そもそも、どうやって撮影機材を運んだんだ?

なのだが、よろしくないのは脚本(台詞)と音楽。上手な役者なのだが、台詞があまりにも陳腐で実感をともなわず、話が進む度に腰を折られる。 ひょっとしたら、世の中の人はああいう会話をしているのかも知れないが、少なくともワタシの周りでは聞かない。そもそも、松山ケンイチの主人公が 山小屋を継ごうとする心境の変化が全然、見えない。

ベタベタの音楽もせっかくの雰囲気を損ねている。生録の音だけで充分緊張感が伝わる場面でベタに音楽を入れるから却って効果半減。あまりにももったいない。

また、「これ、必要?」と前後の脈絡から浮いた首をかしげるようなカットが多いのも気になった。

もちろんロケ撮影が素晴らしく山とか自然とかが好きな人なら満足なのだが、映画としての完成度はあまり高くないんじゃないかな。






題名:春を背負って
監督:木村大作
出演:松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司、檀ふみ
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凶悪

2014年01月17日 | 邦画
日時:1月15日
映画館:八丁座
パンフレット:B5版700円。三役と監督のインタビュー掲載。

昨年の公開時期、ちょうど引っ越し前後と重なってしまい、未見のままだったが、年末年始に各種ベストテンが発表されるといずれもランクイン。
見逃したことに臍をかむところだったが、幸いなことに5か月遅れで観ることができた。

殺人犯の死刑囚ピエール瀧が自白した未発覚の3件の殺人事件、主人公のジャーナリスト山田孝之は事件の真相と黒幕であるリリー・フランキーを追う。

凶悪事件を追ううち、主人公もニーチェの言葉どおりにその闇に囚われていく様は同じ殺人事件ものの「ゾディアック」とも通じるものがある。

犯罪が起きることは最初から分かっているし、主人公がピンチに陥ることがないのも分かっているのに、映画全編に緊張感がみなぎり、一瞬たりとも映画から気を抜くことができない。見終わった後、どっと重い気分になれるのは請け合い。

ところが、もっと後味の悪いもの、「面白かったが、二度と見たくない」映画を予想していたにも関わらず、案外、そうではなかった。
理由はいくつか考えられるのだが、1つには被害者への感情移入の度合いが少なかったからだろう。どう見ても怪しい不動産ブローカーとヤクザものにカネ絡みで関わる人生は、ワタシの世界観からは少し距離がある。

もう1つはリリー・フランキーの穏やかで狂ったキャラクター。淡々とした楽しそうな口調で殺人を仕切る様は怖がっていいんだか、笑っていいんだか。

さて、この映画の構成って、期せずしてスコセッシの「グッドフェローズ」に似ているんじゃないか。
キーポイントとなる殺人事件から映画がスタートし、関係者の回想によって映画が進行していく。狂言回しのレイ・リオッタが山田、犯罪の黒幕デ・ニーロがリリー、暴力装置のジョー・ペシがピエールといった配役。
不条理で過激すぎる殺人がコメディのようなところや、最後に裁判所で独白のような演説をするシーン、最後に撃たれる(=指さされる)ところなどにも似たものを感じた。

ところで、この映画でワタシが一番怖かったのは、言うまでもなく、池脇千鶴。
「周ちゃんは大事なところでいつも逃げて、わたしばかりつらい思いをしているじゃない。」と叱責(詰問?)されるシーンが何度となく繰り返される恐怖は、陰惨な殺人の比ではなかった。
ピエールとリリーの殺人シーンは何度でもリフレーンできても、彼女のシーンは怖くて思い出せない。






題名:凶悪
監督:白石和彌
出演:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー

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