kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

2024年ベスト映画

2024年12月29日 | 年間ベスト3

前回の投稿が4月・・・気が付けば8か月も投稿をさぼってました。(投稿後、反省して追記してます)
とはいえ、今年の締めくくりは忘れずに。

まずベスト映画
「夕陽のガンマン」
ドル3部作のうち、唯一劇場で観ることができていなかった「夕陽のガンマン」が遂にリバイバル!!
思い残すことはない!!と思ってたら、広島は公開劇場無しという情無用の事態に。
直近の出雲市のシネコンまで車飛ばしていったのはいい思い出です。(道中の安芸高田市ではちょうど2つの勢力がぶつかり合うマカロニシチュエーションだった:笑)
さらに出雲で素晴らしい出会いもあり、映画もさることながら思い出深い。
余談:結局、広島でも公開されドル3部作をちゃんと観れましたとさ。

「アンブッシュ」
事前パブからは想定できないイエメン内戦におけるUAE軍の死闘を描いた戦争映画。オシュコシュの装甲車が大活躍と被弾し、装輪装甲車大好き人間にはごちそうのような映画。
ただ、それだけではなく、ムスリム対ムスリムという構図の戦争映画はあまり劇場で見ることができないので、そういった点でも貴重。赤新月の救急車やイスラムの死者への祈りなど、考えさせられることも多い。

「Perfect Days」
仕事に実直で、日々真面目に生きる、マニアックな職人気質の人。
というキャラ設定が身近な人すぎて、創作上の人物とは思えなかった。
年末大掃除の時にスマホでBGV代わりに流しておくととても効果的と発見(笑)

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリデイ
アレクサンダー・ペインとポール・ジアマッティのゴールデンコンビ映画。相変わらずキャラ設定が秀逸で、ハラハラさせられながらも心地よい。
雪景色やファッションも素敵。

「シビル・ウォー/アメリカ最後の日」
公開前からずっと気になっていたアメリカ内戦ロードムービー。賛否両論あったが、ワタシが大好きな世界線の映画。アマプラ配信も素早く、すでに2回も視聴。

「悪魔と夜ふかし」
広島での公開がちょっと遅れたが、70年代のテレビトークショーを舞台にしたオカルトホラー映画。(ハリウッドではなく、実はオーストラリア映画)
撮影、ファッション、美術、セット、展開と70年代らしさを醸し出しつつ、現代の映画的な予測不能なクライマックスに持っていく技巧が心地よかった。

他にも「コヴェナント/約束の脱出」「マッドマックス:フュリオサ」「エイリアン/ロムルス」「ソナチネ」「二度目のはなればなれ」なども良かった。

その一方、ガッカリ映画が多かったのも今年の特徴。
「ドライブアウェイ・ガールズ」
コーエン兄弟のコメディは面白いと思った試しがない。

「アーガイル」
面白い顔ぶれに面白いセンスなのだが、今は乗れなかった。

「落下の解剖学」
予想してた映画と違った。

「バティモン5」
前作「レ・ミゼラブル」が良かっただけに、同じテーマでこの仕上がりは弱い。

「デッドプール&ウルヴァリン」
ストーリーが無理くりすぎる。

来年も面白い映画に出会えますように
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シビル・ウォー/アメリカ最後の日

2024年10月06日 | 年間ベスト3
日時:10月4日
映画館:イオンシネマ広島



オーストラリア在住の知人が「面白かった」とアップしてて、早く観たかったワタシの好きなディストピア映画。配信にもならず、劇場公開されて一安心。

現代のアメリカ、大統領は3期目に突入し、カリフォルニアとテキサスを中心とした西部勢力が現政権に反旗を翻している。フロリダも一大連合を結成しており、アメリカは内戦(シビル・ウォー)状態に。
自国民に空爆も辞さない大統領の独占インタビューを取るべく、ニューヨークに滞在していたジャーナリスト達がワシントンDCを目指す。

【以下、ネタばれあり】
予告編ではクライマックスにあたるドンパチが中心の構成となっているが、実は映画の4分の3くらいまで派手なドンパチは起こらず、ニューヨークからワシントンDCを目指すジャーナリスト4人のロードムービーとなる。
ニューヨークからワシントンDCまで最短距離は激戦地だったり交通封鎖だったりで、大きく迂回することになり、途中、内戦の惨い現状を目の当たりにする。

内戦を巡る政情はほとんど描かれることがなく、西部勢力の盟主が誰かとか、全米の戦局とか不明のままで、その辺はより観たかった反面、まあ描き出すときりがないし、どこかでリアリティが消失してしまいそうだから、ここは好意的に受入れよう。

ジャーナリスト4人はワシントンDCに至るまでに様々な暴力的な連中に出会うが、それが進撃を続ける西部勢力の兵士なのか、守勢の現政権の兵士なのか、ボランティアやミリシアの民兵なのか、ただ軍服をまとった過激な集団なのか、ほとんどわからない。
誰とも分からない連中が銃を持って、殺し合っているって、銃社会アメリカの写し絵なんだろうな。

どうにかこうにかワシントンDCにたどり着くと、現地は第二次世界大戦のベルリン攻防戦状態。遂に西部勢力はホワイトハウス攻略に取り掛かる。よくできたセットでの市街戦がなかなか盛り上げてくれる。ジャーナリストの皆さん、ヘルメット被ってください。

主演の報道カメラマンはキルステン・ダンスト。昔からヒロイン顔立ちとは思わなかったが、遂に顔立ちと年齢のバランスが合致した役どころにたどり着いたって感じで、存在感が際立っている。

インタビューを取りたいジャーナリストはワグネル・モウラ。ヒゲで分からなかったが、ブラジルの暴力ポリス映画「エリート・スクワッド」の隊長だった人。事前に分かっていたら、大暴れすることに期待してたところなのだが、報道と個人的感情の狭間に揺れ動く。

ここに相乗りするのが「エイリアン/ロムルス」のヒロイン、ケイリー・スピーニーの報道カメラマン志望。もちろん内戦のど真ん中に放り込まれて、サディスティックな仕打ちを受け、ゲロまで吐く羽目に。(ゲロ・プロフェッショナルのワタシから見てもよく出来ている。)155センチと小柄で奮闘するから、応援したくなる。

あと、ノンクレジットでジェシー・プレモンズが出演。これがなかなか強烈な役どころで、素晴らしい。

アメリカの行政や軍機構としていきなりこんな内戦になるとは思えないが、リアルな描き方で明日にも起こりそうな空気感の醸し出し方が素晴らしいので、
評価は
★★★★☆

ところで、近未来ではなく、明日ディストピア映画が大好きなワタシとしては引き続いて「トゥモロー・ワールド」を観たのでした。すでに人類には子供が生まれなくなっており、2027年の世界はテロと暴動と抑圧が蔓延する世界となっております。
3年後の世界がそうなっていないと誰が言える。






題名:シビル・ウォー/アメリカ最後の日
原題:CIVIL WAR
監督:アレックス・ガーランド
出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、ジェシー・プレモンズ

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ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

2024年06月30日 | 年間ベスト3
日時:6月30日
映画館:イオンシネマ西風新都

「ダメオッサンの心の旅路と再生」を一貫して描くアレクサンダー・ペイン。彼の作品はほとんど観ているのだが、その最新作が本作「ホールドオーバーズ」。

まずオープニング、ユニバーサルピクチャーズのロゴが流れるが、これが70年代~80年代に使われていたもの。続いて、レイティングの画面になるが、これも同時期の画像で、さらに製作会社のロゴも70年代風。
これでこの映画が70年代を描いたものだろうと一目でわかる。「アルゴ」でも使われた手法だが、その後のオープニングタイトルも70年代風でなかなか懐かしい。

舞台はアメリカの寄宿学校、バートン校。主人公はここの歴史教師ハナムで、その堅物な姿勢と高学歴なイヤミな物言いで生徒のみならず校長や同僚教師からも煙たがられている。演じるのはペイン作品でも一番大好きな「サイドウェイ」でも主役だったポール・ジアマッティ。ハマリ役すぎて一分の隙もない。

クリスマスを含めた2週間の年末休暇にほとんどの学生は自宅やバカンス先に帰るが、家庭の事情ほかで数名の学生が寄宿学校に残ることになっており、ハナムは若干懲戒的意味合いも込めて、学校に残った学生の監督教員を命じられる。
校内施設のほとんどが休止する中、食事係として残るのは料理長の黒人女性メアリー。彼女の息子も同校出身だったが、先日ベトナムで戦死したばかりだった。
ハナムは休暇中でも規則正しい生活と勉学、運動を学生たちに強い、学生たちはギスギスしてくるのだが、そのうち、ひとりの学生アンガスを除き、全員休暇に出ることになる。
アンガスは頭のいい学生だが、その反抗的な態度と人付き合いの下手から退学寸前となっていた。
ハナム、アンガス、メアリー3人の共同休暇生活が始まるが、それぞれに人生に深い悩みを抱えていて、徐々にそのことがお互いに分かってくる。

とまあ、王道のペイン映画のような展開。それぞれの生きづらさを他人との交流を通して少しずつ前向きになっていく。もちろん、その過程で何かしらの代償を払わなくてはならない悲しさもペイン映画なところ。

なのだが、実は本作の脚本はこれまでの作品とは違い、ペイン監督本人ではなく、デビッド・ヘミングソンの手になるもの。
確かに主人公のハナムだけでなく、アンガスやメアリーといった助演の物語の深さも印象的だ。

メアリーを演じたダヴァイン・ジョイ・ランドルフはオスカーを受賞したし、若き日のベンディクト・カンバーバッチを思わせるアンガス役の新人ドミニク・セッサも忘れられないインパクトを残す。

他にハナムに好意を寄せる女性を演じるのはキャリー・プレストン。笑顔が印象的で「グッドワイフ」「グッドファイト」で演じた個性的な弁護士エルズベス・タシオリを主人公にしたスピンオフシリーズ「エルズベス」が早く日本でも観られるようになってほしいところ。

脚本がペインでないとは言え、途中からロードムービーとなったり、酒に対するこだわりがあったり、先の読めなくて泣き笑いな展開があったりとペインっぽさがいたるところにみられる。主人公ハナムも「サイドウェイ」の主人公の20年後の姿にも見える。

70年代雰囲気の再現も良くて、懐かしい良作映画を観ているような気分にさせられる。もっとも70年代にこの映画があったら、もっと不幸なオチになっているような気もするが(笑)

どの登場人物も受け入れがたいところはあるが、随所随所で感情移入できて、身近で愛おしく感じる。

ということで
評価は★★★★★。
歴史好きな方、特に古代史好きはぜひご覧あれ。






題名:ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
原題:Holdovers
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサ

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2023ベスト映画

2023年12月27日 | 年間ベスト3
例年アップしているその年のベスト映画、ワースト映画。
今年は劇場の観たのが29本と過去最低水準。
さらにそのうち、7本がリバイバル。「殺しを呼ぶ卵」「食人族」「大脱走」「ヴィデオドローム」「オペラ/血の喝采」「アメリ」「シェイン/世界が愛する厄介者のうた」となかなかのラインナップ。
新作映画で観た本数が少なかったので、今年はこれといったベスト映画、ワースト映画ともに思いつきません!

そんな中、印象深かった映画は
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
ミシェル・ヨーとかジェイミー・リー・カーティスとか長年活躍している女優陣の大活躍が嬉しかった。

「フューチャー・オブ・クライムズ」
久々の正統派(?)クローネンバーグ映画。80年代にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えました。

ジョン・ウィック コンセクエンス

無軌道な殺しのオンパレードが楽しい!

ワースト的なのは
「キラーズ・オブ・フラワームーン」
ストーリー云々より仰々しいまでのデカプリオのしかめっ面が最後まで受け入れられなかった・・・
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2022年ベスト映画

2023年01月04日 | 年間ベスト3
今年は劇場鑑賞数が過去最低かも知れない。これぞという劇場公開作も少なくなったし、土日はミリシア活動に精を出していたからかも。1週間10日とか1日36時間とかにならんかな・・・

そんな中、今年のベスト映画
「シェイン/世界が愛する厄介者のうた」
Pogues大好きのワタシにとって、色んな意味で楽しくてツラかった映画。Poguesが好きだった若き日々は二度と来ないと痛感させられた。

クライ・マッチョ
荒野に立つ美しい枯れ木を眺めるかのような作品。

ベルファスト
今年は珍しくアカデミー賞ノミネートの作品を数多く見たのだが、その中で一番良くて好きだった作品。モノクロ画面が心に沁みます。

ブレットトレイン
やはり、こういうバカ映画は年1本は劇場にかからなくてはいけない。
ちなみに着ぐるみ殺し屋は最初、マシオカの役だったというのを面白いルートで教えてもらった。

ニューヨーク1997
とうとう、この作品までリバイバルで観られるとは!

アマプラ配信ものでは
「リーチャー」(オリジナルシリーズ)
「アウトロー」「ジャック・リーチャー」でトム・クルーズが演じたジャック・リーチャーが主人公のシリーズ。主人公は原作どおりでっかい人になり、多くの登場人物と重なり合う事件がうまいこと映像化されている。

「シエラ・デ・コブレの幽霊」
これをさらっと配信するアマプラってこわいですね。

ワースト映画
トップガン:マーベリック
内容的には悪くないんだけど、居心地の悪さゆえあえてワースト認定しました。
普通のミリタリー映画なら全然アリなんだけど、「良かった!感動した!」という世の中の風潮にはやはり違和感があった。
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2021年ベスト映画

2022年01月09日 | 年間ベスト3
今年もコロナ禍ということもあり、昨年に引き続いて、ちょっと本数が少なかったです。
劇場側もスケジュールが確定せず、電撃的に公開された作品も多く。振り回された感はありますね。

そんな中、今年のベスト映画です。

ノマドランド
ハッピーな映画じゃないですが、フランセス・マクドーマンドの魅力と日々生きる人の素晴らしさ、素敵なロケ景色とかなりワタシ好みの作品でした。

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
恐らく一生のうちで一番予告編を観た映画(笑)
そして今年見た中で一番メジャーな映画(笑)
新旧のテイストを巧みに融合させた点で、007好きとしては高評価です。
次作のボンド登場とオープニングをどう捌くのか、今から楽しみです。

ONODA 一万夜を越えて
太平洋戦争後30年間、ルパング島に潜伏していた日本軍の小野田少尉を描いた映画。
フランス人監督であるにも関わらず、日本的なタッチで、それでいて公平な視線で描いた作品。

「グッドフェローズ」
リアルタイムで鑑賞できたにも関わらず、見逃していた90年代傑作ギャング映画。朝十時からの映画祭でようやくスクリーンで観ることが出来ました。
何度観ても面白い!

この他、「カラミティー」や「JUNK HEAD」も良かったです。

ワースト映画
残念ながら今年はハズレ映画もなかったです。残念な作品もありましたが、配給スケジュールに無理やり押し込まれたようなところもあったし。

昨年に引き続いて配信で珍しい作品も多々観ることができましたが、やはりスクリーンで見るもんですね。
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ONODA 一万夜を越えて

2022年01月09日 | 年間ベスト3
太平洋戦争後、比ルパング島に約30年間、潜伏していた小野田少尉をフランス人監督がどのように描くの興味深く、ぜひ観たかったのだが、上映時間3時間に二の足を踏んでいた。ようやく八丁座で公開されたので、劇場へ。

全編日本語、キャスティングも日本人なので、日本人監督が撮ったと言われても違和感がないくらい、日本的な映画だと思うのだが、小野田少尉と距離を置いた視線はやはり外国人なのかも知れない。

今の私からしても、30年間、ジャングルに潜むということがどういった心理状態なのか非常に興味があるし、監督もそういった点にも惹かれたのだと思う。
実際、秘密戦に配属されて、生き残りをかけ、時として狂信的な行動に走る小野田少尉の半生を史実にもほぼ正確にうまく描いている。密林で自活する様など、サバイバルネタ好きとしても参考になる点が多い。ただ自活だけでは生存できないから、野盗まがいのことをして殺し合いに発展していく点もシビアに描いている。
3時間という上演時間も長く感じさせないし、30年の経過を体感させるには必要な時間だったとも思う。

小野田少尉を演じた遠藤雄弥と津田寛治も戦争と一線を超えた人間の秘めた執念がにじみ出ていて忘れがたいのだが、キャスティングの中でひときわ輝いているのは谷口少佐を演じるイッセー尾形。
陸軍中野学校の教官、古本屋の亭主、過去を清算する元軍人という3つの顔を笑いに転ずる一歩手前でギリギリに演じるあたり、十八番芸だ。

最後、小野田少尉がヘリで帰国するところで映画は終わるが、そこで手を離したようにクレジットに転じるのはこの映画の本質を端的に示していたように思う。普通の映画だったらここで「1973年小野田は日本に帰国し、その後、ブラジルに移住。2013年没、享年91歳」とテロップが出るところだった。
日本人的には歴史の再現という視点で見てしまうが、むしろ特異な環境下で生きた人間を描くという視点を見るべきだし、そういった面で成功している映画だ。

ところで、ポスターのビジュアルアート、何度も言うがワタシではない。

評価:★★★★☆









題名:ONODA 一万夜を越えて
原題:GREENBOOK
監督:アンチュール・アラリ
出演:遠藤雄弥、津田寛治、イッセー尾形
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007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

2021年10月19日 | 年間ベスト3



3年近くも予告編だけを観てきただけに「ノータイム・トゥ・リリース」とか「リバイバルかと思った」とか「ダニエル・クレイグがもう1作、ボンド役をやった」とか勝手な思い込みが進行してそうな本作、ようやく公開。

【以下、ちょいネタバレあり】

今回もアバンタイトルからスタートだが、これが長い!作品名が最後に出るのかと思ったくらいで、なんと25分近くある。(上映時間も2時間44分とシリーズ中最長)しかも予告編映像の約半分はこの25分間に盛り込まれている。

ようやくメインタイトルが流れるが、いきなり「007ドクターノー」のタイトルデザインで始まるのだから、嬉しいじゃないか!
そう、本作は過去の007作品の総集編的な色合いがかなり強い。
このタイトル部分でも時計台やダイバーのシルエットが出てくるあたり、初期の007タイトルを彷彿とさせる。そういった意味でも本作未見の方には、事前に「女王陛下の007」や「007/カジノロワイヤル」「007/スペクター」は観ておかれたい。

ストーリー的には前作の続きとなっており、敵もスペクターと新たな敵サフィンの2本立て。

007ストーリーの王道として最初はアイテム探し。場所はキューバとなるが、アナ・デ・アルマス演じるパロマのドジっ娘のキャラとドタバタ感覚は「007ダイヤモンドは永遠に」や「007/死ぬのは奴らだ」時代、特にロジャー・ボンドのテイストを思い出させる。

そこからストーリーテイストが一変して、クレイグボンドのダークで身内の物語に重点を置いた展開になっていく。

MとかQとかノミとかボンド側のキャラクターに時間が割かれすぎているきらいがあるのは好きになれないが、その中で全編に登場する殺し屋プリモ(サイクロップス)がいい感じ。オッドジョブ、ジョーズ、スタンパー、ヒンクスの系譜をひく不死身だけどどっかツメの甘いキャラクター。ヴィラン好きとしてはうれしくなるなあ。

悪の組織が秘密基地を抱えているのは超重要だが、日本近郊にある〇〇施設っていうのは原作の「007は二度死ぬ」に出て
きた設定そのもの。よもやフレミング時代の設定を持ってくるとは思ってもみなかっただけに、ちょっとしたサプライズだ。

さらにサフィンの悪の施設もケン・アダムスのデザインを彷彿とさせて、「007/私を愛したスパイ」のストロンバーグのタンカー内観にソックリ。やはり総集編的なテイストがかなり強い。

この秘密基地でクライマックスを迎えるが、ここでワンシーンワンカットの戦闘シーンが登場する。よもや007でそんな描写があるとは思っても見なかった。

全編、新旧のテイストをまぶしながら上映時間の長さを感じさせない仕上がりだが、ただ、惜しむらくはヴィランのサフィンの存在感が薄いこと。犯罪の目的がイマイチはっきりしないし、ストーリー全体がボンド寄りの話になって、ボンドとサフィンがクライマックスまで対峙しない。やはり劇中、一度は顔をあわせて腹の探り合いと当てこすりの言い合いをしてほしい。

さて、次作と次ボンドがどうなるのか非常に気になるところだが、心配はいらない。原作の「007は二度死ぬ」→「私を愛したスパイ」の流れはまさに本作と次作を予期させるし、逆に映画で「女王陛下の007」でボンドの顔が変わった時には何の言及もなく、その後も代替わりしても誰も何も言わなかった。
最後にいつもより大きく「JAMES BOND WILL RETURN」と出たしね。






題名:007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
原題:NO TIME TO DIE
監督:キャリー・フクナガ
出演:ダニエル・クレイグ、ラミ・マレク、レア・セドウ、クリストフ・ヴァルツ
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ノマドランド

2021年04月08日 | 年間ベスト3
日時:4月3日
映画館:サロンシネマ

2008年、アメリカの石膏メーカーが倒産し、企業城下町も消滅。そこに暮らしていた主人公、フランセス・マクドーマンドは夫を病気で失ったこともあり、バンの車中に居を構えながら中西部の町々で短期雇用の仕事を転々とするノマドとして生活していた。

実話に基づく映画化でアカデミー賞レースにもがっつり食い込んでいるようなのだが、ワタシの関心は話の主題よりフランセス・マクドーマンド。「ファーゴ」以来、あの口元が好きだし、近年の図太いオバハン役も好きです。

バンやトレーラーハウスの集まるキャンプサイトを転々としながら、クリスマスシーズンにはアマゾンでバイトし、その他のシーズンは自然公園や農場で働く彼女は自分のことを「ホームレス」ではなく「ハウスレス」だという。

車中生活でその日暮らしを続けるというと日本人の感覚では否定的に取られるところだが、家や家財道具に縛られることなく美しい自然を目の前にしながら、同じ生活スタイルの人たちと交流し、情報交換し、そして別れていく姿を淡々と描いている。こういう生き方をちゃんと商業映画に乗っけられるのが、米映画界の懐の深いところ。

キャンプサイトやガソリンスタンドで出会う人たちはみんな心優しい。互いの境遇を思いやりながら、お互い必要に応じて助け合いながらも、過度な干渉はしない。劇中でノマドを演じているのは、基本本人たち、つまり素人なのだが、醸し出す空気感がとてもいい。

さらに中西部の果てしない平原を捉えた寒々とした撮影も素晴らしい。何もない平原を延々とバンで走って、たどり着いた先で生活するなんて、憧れるよな。「ジェシー・ジェームズの暗殺」とか「わたしに会うまでの1600キロ」とかが好きなもんだから、こういう風景はたまらない。

映画として大きな事件も起きないまま1年が経過する。ただ、そんな中でも2回ほど彼女が物に固執する場面があり、その辺は自分ならそこで切り捨てられるかと考えさせられる。

フランセス・マクドーマンド主演ってとこを抜きにしても、それぞれの人の人生は素晴らしいと思わせる映画。







題名:ノマドランド
原題:NOMADLAND
監督:クロエ・ジャオ
出演:フランセス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン
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2020年ベスト映画

2020年12月31日 | 年間ベスト3
毎年やってる今年のベスト映画です。
みなさん同様ですが、今年は公開数も致命的に少なく、映画館は休館の時期があり、公開予定作は延期に延期であまり見ることができていません。

◆ベスト作品
チェルノブイリ
HBO配信の超重い作品で、すでに昨年配信されていますが、語り口のうまさや圧倒的な映像、ソ連車両が大挙登場するリアリティ、そして主役の目つきの悪いオッサン2人とワタシの好みにピッタリでした。製作陣の真摯さも感じさせます。

彼らは生きていた
ピーター・ジャクソンによる第一次大戦ドキュメンタリー。「1917」も捨てがたいが、素材の活かし方でこちらの方が良かった。

次点
ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密
数年に1回、こういうミステリーもいいですね。

1917 命をかけた伝令
細部までの作り込みとそれを見せる映像が素晴らしい。

「続・荒野の用心棒」「豹/ジャガー」「殺しが静かにやってくる」
横川シネマらしいマカロニナイト。

ワールドエンド
ロシア軍車両万歳!

ようこそ映画音響の世界へ
定番のお仕事ドキュメンタリーですが、素直に感動した。

◆ワースト作品
見た本数も少ないのでセレクトする必要もないのですが、あえて言えば

「デッド・ドント・ダイ」
ゾンビ物は大好きだし、ジャームッシュも好きだけど、なんか食い合わせがすっきりしなかった感じ。

来年も公開本数は少なくなりそうなので、来年のベスト作品はリバイバル作品になるかもですね。
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