三井記念美術館や五島美術館で新年に因んだ
和の展示を鑑賞し、それを「春の挨拶」と称しレポしていました。
今年はちょっと遅れて、初春ではなく立春の時期に。
前回の記事で少しだけご案内した色絵展@出光美術館です。
前半は、鍋島を中心に、器で春夏秋冬を辿るコーナーが実に
素晴らしかったです。
色絵梅花鷽文富士形皿。江戸時代前期の肥前焼。
いわゆる「鷽替えの神事」になぞらえた作品で、
凶事を吉事に替え、悪いことを嘘にしてしまう、
という意味がこめられたお皿。
眺めているだけで、何だか救われるような、浄化されるような
気持ちになりました。
昨年起こった悪いこと、ネガティブな出来事、あれは嘘だったんだ-
そう思えたら、ハッピーですよね。
こちらは秋。古清水焼きの「色絵楓文透彫手焙」。
昔はこんな蓋付きの香炉のようなものに火を入れて、手をかざし
暖をとっていたんですね。
風流だなあとしみじみ、思います。
中盤は、古九谷を中心に、力強くデザイン性にも富む作品が。
お皿が多かったかな。
色絵蓮葉に菱文大皿。江戸時代前期のもの。
蓮の葉が…ちょっとキャベツや白菜の外側の葉のように青々としており
(ムードがなくてスミマセン)、
インパクトがあります。
そして後半、これは公式ホームページには詳しい紹介がなかったのですが
柿右衛門や古九谷を中心に、
それらの諸外国の「写し」と並べて比較できるようになっていて、
比較の好きな私にはたまらない、とーっても興味深い展示でした。
例えば
若紫と誰が袖が描かれた柿右衛門のティーカップは、
イギリスのチェルシー窯で写しがつくられているのですが、
そもそも若紫がどういう立場でどんな人物か、そのイメージが
イギリスに伝わらなかったので、
何となく所在無げな女性として描かれていたりします。
逆に、古伊万里の「ケンタウロス文大皿」は、
ケンタウロスが何者か、日本で正しく理解されなかったため、
かなり滑稽な…浪人なのか妖怪なのか神様なのか、よくわからない人物が
描かれています。
ほかにも、よく似ているけれども海外のものは
ブルーが不自然に鮮やかだったり、
柄が更紗的だったり、
観ているうちに、「にわか鑑定士」のような気分になって
細かいところまで見比べてしまう自分がいます。
終盤は、
色や形がとにかく「可愛いもの」が勢ぞろい。
私がもっとも心惹かれたのは
古伊万里の虫かご形香炉。
造形も、柄も、色も可愛い!
そして、可愛いといえば野々村仁清。
兎の摘みがついた梅花文の香炉。
ほかにも、富本憲吉(こちらも可愛い代名詞のような方ですよね)、
そして板谷波山(こちらは可愛いというより、優美)、
ダイナミックな尾形乾山、ぐんと時代が下って小山富士夫……と、
これでもかとカラフルな作品が並びます。
とーっても見応えのある展示でした。
やきもので、こんなに心が踊ったり、四季に心を寄せて感じ入ったり
できるなんて。
器好き、可愛いもの好きな方はぜひ。
会期は3月25日(日)まで。公式ページはコチラです。
※春の挨拶 2017 2016 2014
コメント一覧
神奈川絵美
ゆき
神奈川絵美
RUBE
最新の画像もっと見る
最近の「美術展・工芸展レポート」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2009年
2008年
人気記事