点ててくださったお薄が美味しくて、「私も点てられたらなあ」とか、
そんなことを言ったのだと思う。
「インスタントコーヒーと同じですよ」
習わなくても点てられます。キッチンで…。
そして、よかったらどうぞ、とくださったのだ。
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これはありがたい、と早速、薦めてくださった抹茶をネットで取り寄せた。
練習用の茶碗も同じショップで。
鬼が笑うが、柄はさざんかだ。
その店に掲載されている手順を参考に、
初めての“お点前”。
抹茶を、100円ショップで買ったふるいにかけて椀に入れ、
ヤカンから一度マグカップにとったお湯を注ぐ。
そして、カウンターキッチンで立ったまま
シャカシャカシャカ…と茶筅を回す。
チビワンが、(なんか美味しいモノでも出てくるの?)と
目をまんまるにしてこちらを見ている。
初体験が、こんなシチュエーションでいいのだろうか
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まあ、御世辞にも上手とはいえないが、
何となく“それっぽく”なった。
茶菓子は以前、大阪出張の際買った「クリーム五色豆」。
食器に凝らない私が唯一持っているブランド物、ジノリの小皿に載せて。
午後3時のティータイム。
いつもなら、気分転換にと軽い音楽をかけたりするのだが、
抹茶のときは、茶筅の音を聞いているのが好きだ。
「シャッシャッシャッ…」と静かな中、椀の中でかすかに響く涼しい音。
リズミカルとは、まだ言えないけれど…。
自分で飲むだけなら、これで十分なのだけど、
せっかくだから、もう少しお道具を揃えてみたいな。
茶道に魅せられる気持ちが、ほんの、ほんの少しだけわかったような気がした。