約3カ月ぶりに吉田美保子さんを訪ねた。
ドアを開けたら、ライトピンクのチューリップと、
壁にずらりと貼られたアルフレッド・シスレーの絵が出迎えてくれた。
左下2枚はカンディンスキー。
1年半前に初めてお会いしてから、着物をお願いするにあたり、
心に浮かんだモチーフを脈絡もなくお伝えしてきた。
今、吉田さんのおうちは、そんな「私のモチーフ」で彩られている。
まるで一つの命が糸に布に吹き込まれるのを、息をひそめて見守るかのように。
絵や音楽や花からイメージを熟成して、熟成して
あるいは熟するのを待って、
見えてきたものを吉田さんは紙に起こす。
最初に描いたのが左上の、大きな格子がはっきりした柄。
次にそれを着物風にぼやかして…右隣の絵に。
最後にもう一度構築して、右下のデザインになったそう。
「横段のぼかし風がいい? それともはっきりした格子風がいい?」
尋ねられてあまり迷わず、後者と答えた。
せっかく創っていただくなら、個性的な方がいい。
より大きな紙に描かれたラフスケッチ。
これで大まかな構成が決まる。
さらにそれを、パーツごとにしたらどうなるか…
ここはクリエイターとしてだけでなく、「織り手」としての視点も加わる。
ここまでは、紙に色鉛筆で描いているので、色のトーンは限られている。
実際に糸を染めてみると…ピンクだけでも5~6種類。
使う糸は、ほこほこの真綿糸と、ツヤのある座繰糸。
後者は、この世界で糸づくりの名人として知られている女性が、
蚕から育て、自身で引いて、吉田さんに託した貴重な糸。
ありがたい…大事にしないと。
実際に機にかけて、試し織り。
一番左の薄ピンクはアカネ、ほぼ中央のオレンジピンクはベニバナ、
その右隣はラックダイ。さらにその右隣はコチニール。
試し織りでは、太さを替えていくつもの色を走らせる。
例えば緑なら、明るいケミカルな感じの緑と、ぼうっとした感じの深緑から
「どちらがいいかな」2人で考えて選んでいく。
アクセントとしての黄色はあった方がいい? とか、
横段の太さは? とか、一つひとつ、キーになる色やデザインをクリアにしていく。
そしたら後はもう、吉田さんにお任せだ。
ちなみに、上の写真で白く見える地色も、実はピンクの糸がところどころ入っていて
光の加減でニュアンスが変わる。
織り上がりは、私の3月の誕生日に間に合いそう。
お仕立てまでは無理だけど…。
暦の上の春だけではなく
シスレーの居るもう一つの春も、すぐそこまで来ている。
コメント一覧
神奈川絵美
最愛チャンミン
神奈川絵美
ゆかりーな
神奈川絵美
神奈川絵美
神奈川絵美
神奈川絵美
amethyst
sogno
やっぴー
むだかび
最新の画像もっと見る
最近の「「シスレーの居る風景」お誂えの記録」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2009年
2008年
人気記事