神奈川絵美の「えみごのみ」

1920年代、狂乱の時代 -ローランサンとモード展-

(前回の続き)



たぶん私は、藤田嗣治を知るまでは
さほど1920年代のアートに興味関心がなかったかも知れない。

いや、ダダイズムは20年代だったか…
そんなことも曖昧で、少なくとも当時のフランスのカルチャーには
大学時代の私は無関心でした。

でもこの時代、モードの波は絵画だけでなく
アート全般、またファッションにも及んで
現代にも多大な影響をもたらしているんだなあ、と
改めてこの展示を観ながら思った次第です。



ローランサンはそんな20年代のパリ・モード界の
中心にいて、
当時の上流階級の女性は、自慢のファッションに身をつつみ
ハイクラスの象徴である帽子を被って、
ローランサンに自画像を描いてもらうか、
マン・レイに写真を撮ってもらうのがステイタスだったそう。

(この展覧会にはマン・レイの写真もいくつか展示されています)



これは解説にもありましたが
ローランサンが描く女性は、顔が似通っているため
服や帽子が、誰であるかを判別するキーアイテム。

ちなみに、帽子といえば、シャネル。
彼女はやがて帽子だけでなく、
カジュアルダウンの先駆者であるポール・ポワレに代わって
服飾の一大モードを築き上げるわけですが、
シャネルもローランサンに自画像を描いてもらったところ
気に入らなかったとのことで受けとりを拒否したそう。
一方のローランサンも手直しをしようとはせず
ぎくしゃくした関係に。

狂乱の時代もピークを迎えると

ローランサンの画風はこーんな、
キュビズムの影響を受けた筆致に変化していき、
私は、時代背景もあってちょっと、浮足立っているような
印象を受けました。

しかし、そんな華やいだ時期は長くは続かず
29年の世界大恐慌~30年代は次の大戦へ向かう不穏な空気。
それにともないローランサンの画風は

復古主義というのか、女性性が強調された顔だちや
強い色彩が目立ってきます。
私はこのくらい線や色がはっきりしている方が好きだなあ。

のちにシャネルのデザイナーをつとめたカール・ラガーフェルトは
20年代のローランサンの絵画にインスパイアされ



あわーいピンクのドレスなどを発表。
2011年コレクションだそうです。

駆け足でしたが
一口にローランサンの絵画は優しい色使いで可愛い、と
まとめられがちではあるけれど、時代の変化によって微妙に変わっているのと
ここには書ききれませんでしたが、当時流行ったバレエ(ロシア・バレエ団)の
コスチュームや舞台にも関わっていたりして
画家というよりはもっと広義のアーティストとして
幅広い活動をしていた様子が、この展示ではみてとれました。

絵画点数は、私が期待していたほど多くはなかったのですが
シャネル、マン・レイ、ポワレ他、同時代のアーティストの
作品やバレエのビデオ上映もあって、
1920年代、という時代の空気を感じたい人には、いい企画展だと
思います。

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帰宅して気づいたのですが



私、ローランサンらしいピンクを身に着けてなかった、と
思い込んでいましたが
八掛が淡いパステルピンクでした。
これぞ、ローランサンの色。因みものがあって良かったです。

会期は4月9日まで。公式サイトはコチラです。

コメント一覧

kanagawa_emi
朋百香さん、こんにちは!
アートはしばしば、歴史的な出来事に翻弄されますよね…。
ルネサンスしかり、フランス革命しかり
産業革命しかり…。
ヴィトンのモデル、そうなのですね!それこそ
ジェンダーレスな時代がファッションデザインに
反映された例といえますね。
kanagawa_emi
まるたけさん、読んでくださりありがとうございます^^
だいぶ端折ってしまいましたが参考になれば幸いです。

フェミニンな画風で知られますが、20年代までは
描かれる女性たちの顔立ちはむしろ、中性的なんですよね…。
一般的にファッションモデルって、服を目立たせるために
顔はインパクトがない方がいいなんて言われますが、
それと似た考えがあったのかも知れません。
朋百香
絵美さま
アートと歴史、興味深いです。
いつの時代もアーティストは、その時代を敏感に感じ取って
音楽、絵画、ファッションなどに反映させているものですね。
先日、たまたまヴィトンのバッグのショーを観たのですが
モデルは全員、男性でしたし、それこそ服もバッグも
まさにジェンダーレスでした。
「時代だな〜」と感心して見入ってしまいましたよ。
まるたけ
展の様子、楽しみにしていました。
今回も知らなかったことがいっぱい。勉強になりました。
ローランさんもキュビズムの影響を受けていたなんて!
なんだかローランさんの絵ではないみたい。
なかなか一人で都内の美術館は困難。
なので絵美さんのレポは嬉しいです。
もしもし私も行けるとしたらどこかに淡いピンクを
潜ませたい気分です✨
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