神奈川絵美の「えみごのみ」

桔梗か葡萄か

この日は朝から日本橋で取材。


爽やかな気候になったが、まだまだ袷では暑い。
本塩沢の単に、栗山紅型の帯で。襦袢は英さんの揚柳。


今回、冒険してみたのは……。


帯締め。

今までは、赤や茶色、薄い黄色など、あまり主張しない色を選んでいた。
この鉄紺は、初めての組み合わせ。

それほど確固たるポリシーがあるわけではないけれど、
仕事の場なので、「理性の色」で引き締めたかったのと、
これはずーっと前に書いたことだが、
強い色が帯にあると、インタビューする相手がほどよく、
目線を反らす場所にもなるかな、と。
(心理学的に、ある程度近い距離でずっと相手の目を見ながら話すというのは
よほど親しくない限り、疲れるものなのです。)


でも。


この色、悪くはないけれど、帯の世界観を少し殺してしまう。
(少し殺すというのも妙な表現ですが)
彩度が高いのか、色味が青過ぎるのか。


取材は何の問題もなく終わったが、
ココロの隅でもやもやとしたものが溜り、
その足で日本橋高島屋へ移動。道明の帯締めを見せてもらうことに。


同デパートでは、きものウイークスと称したイベントを開催中。
前後期に分け、江戸好みと京好みの染織他、伝統工芸を実演付きで展示している。

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さて…。
「これ、見せていただけますか」
ズラリと並ぶ道明の帯締めを前に、私が真っ先にお願いしたのが

桔梗色
これも少し変わっているけれど。


和キッチュさんの、この半衿をいただいたときから、
帯締めもアンティークっぽい色合いが欲しいな、と思っていたのだ。

しかし、ふんぎりがつかないでいると、
「こちらの方が私には、しっくりくるように思います」とお店の方。

葡萄色


……そうだよね……。
深みと少しの甘さがあるこの色は、私の好みでもあるけれど。
(でも、赤系、赤紫系は持っているし……)
結局、決められなかった。お店の方、ごめんなさい。


そうしているうちに
「あっ、せ、先生……!」



東京手描友禅の、小倉貞右先生と奥様にお会いできた。
ちょうどこの期間(~16日まで)、
いつもなら上品繪クラスの展示がされている一角に、先生の作品が並んでいるのだ。


(パンフより)

自然豊かな野山の旅先で出合った植物や、
ウィリアム・モリスからインスピレーションを得た東西融合のモダンな柄、
そして貝紫の染料。
洗練されていて、なおかつ「和のあたたかみ」もある作品の数々。
最近独立したという、息子さんである小倉隆さんの作品も。


アプリコット色の附下に、アカンサスの染帯は、私の「ここ一番」コーデ。


次の仕事があったため、あまりゆっくりできなかったが
久し振りにお話できて、とても嬉しかった。
(そういえば、3~4年前に、先生の梅の帯が欲しいと…)
そのときたまたま、色違いか生地違いしかなく
そのままになってしまっていた。



「梅の帯、あちらに展示されていますから、見ていってくださいね」



……私を待っているのは、
桔梗でも葡萄でもなく、本当は梅なのかも知れない。



※小倉染芸のホームページはコチラ



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(☆は@に変えて)。心ばかりの記念品をお贈りできればと思っています。

コメント一覧

神奈川絵美
ohaさんへ
こんにちは
色の名前、いいですね~薄縹とか、灰桜とか、最初に名づけた人は、どこからそういうインスピレーションがきたのかなあと感心させられます。
ようやく気候が良くなってきたので、着物を着るのが楽しみです

>少し痩せられたような
それはたぶん、デジカメが空気を読んでくれている(笑)のではと思います
実のところ、アラフィフに突入してから日々、筋トレの必要性を痛感しているところです。
oha

色あわせは難しいですよね。
それにしても日本人の色の名前の付け方は
本当に素敵です。
秋になって、またいっそう着物の楽しみがわきますね。
ところで久しぶりにのぞいたのですが、少し痩せられたような。
神奈川絵美
風子さんへ
こんにちは
初めてお会いしたのが2008年ごろでしたでしょうか。それ以前からブログ等でやりとりはしていましたので、思えば遠くへきたもんだ、ですねぇ

それにしても着物って、凝れば底なしですよね。「組み合わせの妙」は洋服よりも楽しめるように思います。
年齢を重ね、似合うものや好みが変わればまた違うものが欲しくなりますしねぇ。

梅の帯もそろそろ考えないと…
雨ゴートすら、3~4年考えては「シーズン」を逃して、今春ようやく…でしたので、ちょっとのんびり屋ですよね
風子
http://fuko346.exblog.jp/
こちらで絵美さんのきもの姿 拝見するの楽しみにするようになってどのくらいたつのかなあってふと、思いました。
きものって ふと冒険したくなることってあって、それって次へのステップなのかな、今までがあきたらなくなるのかなって感じます。
きものは 長着と帯と帯あげと帯締めと、で完成品。
(ほんとは衿と履物とバックもだけど なかなか)
悩みどころで それが楽しいです、冒険の中から、新しい自分が現れてくるかも、なのでこれからも美しい着物姿、拝見するの楽しみにしています~。

梅の帯もそのうちに拝見できるのでしょうか。
神奈川絵美
Tomokoさんへ
こんにちは
そうそう、10月初めの女子会(笑)でも出ましたけれど、半衿の白のトーンだって、顔色選びますものねー。
私は、いわゆる秋色が似合わないので、この時期は悩ましいです。まあ、顔のすぐ近くでなければいいのですけれど。

「けしからぬ目立ち方」わかりますー。こういうときってテンション下がりますよね

神奈川絵美
とうこさんへ
こんにちは
わー、行かれたのですね高島屋。小倉先生の作品、深みがあって洗練されていて、かつ出過ぎないというところもステキですよね。

帯締めと帯揚げ、勧めてくださった方もきっと、とうこさんにお似合いになると確信したからこそ、ではないでしょうか。コーデの愉しみ、広がりそうですね
Tomoko
色はムズカシイですよね。
補色を効かせるのって大好きですが、思うに身につける人柄や個性にそぐわない色だとけしからぬ目立ち方をするってコトはあると思いませんか?
たとえば絵美さんがここで挙げている葡萄色や、このコメント欄のバックに引いてある薄紫、残念ながら私の顔や肌色にぜ~んぜん似合わない色なんです。似合う人がお召しになっていると、惚れ惚れするくらい香気ただよう色なんですけどもねえ。自分が身につけるのは諦めました。(笑)
とうこ
わあー。私も土曜日行きました。小倉先生の見てきました。
数寄屋袋も、洗練されていて、とても素敵でした。
私も(その時、着物を受け取りにいったのですが)勧められて、少し強い色の帯締め・帯揚げを買ってみました。使えるか不安でしたが、皆様のコメント読んで、頑張ってみようと思いました。
神奈川絵美
環さんへ
こんにちは

>多色の帯には多色の帯締め
うわー、そうなんですね。私にはすごい「上級者ワザ」に思えます。まあ、2色ぼかしくらいなら使いますが…。
私も試行錯誤してみようかな

>赤味のある京紫の帯揚
アドバイスありがとうございまーす
程よい色気のありそうな色合いでしょうね。
暈しならなおさら、ステキかも。
この日の帯揚げも、薄い緑と白のぼかしでした。色が色だけに、写真ではまったくわかりませんが…

実は普段割と、この帯には、少しだけ黄味がかったベージュを合わせることが多いのです。なるほど帯揚げ次第で、よりインプレッシブなコーデになりそうですね。
神奈川絵美
K@ブラックジャックさんへ
こんにちは
私は平日の昼過ぎのランチどきだったせいか、お客さんはあまり見かけませんでした。滞在も短時間で…。この週末などは着物姿でにぎわっているのかも。

そうなの、この帯締め今ひとつ、相性の良い帯がなくて…。この日は朝の仕事で「気合」も入っており 強い色でも許容だったのですが、普段はあんまり…。

>着物の場合は半衿でしょうか
どうなんでしょうね。私はどこでも構わないのですが、確かに仕事のときは白半衿が殆どかなあ・・・。

そうそう、本文にアップした「桔梗色」がね、うちの新しい外壁の色にかなり似ています
神奈川絵美
朋百香さんへ
こんにちは
この帯、私の手持ちでは古株なのですが、黒っぽい着物に合うということもあり、遊びよりは仕事時の方が出番が多いかも。
芯が柔らかすぎだったのですが、今年、「カクマ」さんで芯の入れ替えをしていただき、だいぶ形がつくりやすくなりました。
全通なので、お太鼓の柄出しに気を遣わなくていいのが助かります

奥様のお着物、ステキですよね~水浅葱にほんの少しグレーをかけたような品好いお色で、写真よりはもう少し水色が強かったです。
神奈川絵美
りらさんへ
こんにちは
取材先が高島屋からすぐだったこともあり、ふらふらと(笑)。道明さんなら色のバリエが豊富なので、勉強させてもらおうという気持ちもありました。
帯締めって私はホント、悩むんですよねー。面積は小さいのに、奥が深いです。
神奈川絵美
香子さんへ
こんにちは あーっ、ホントだ、ジャパンブルー
戦士の色なんですねー私にぴったり
確かにあのユニフォームの色は、ぴぴっと脳を刺激しますよね。
三分紐の濃淡使い、さすがです いつか見習いたいと思います。
道明のお店のかたに「多色の帯には多色の帯締め」と言われて、試行錯誤中の私です。
鉄紺も単色だとかなり強いですが、暈しだったり、
茶系や白との多色つかいなら使いやすいかもしれません。
これからの季節はアンティークぽい色合いを取り入れたい気持ちわかります~
今回のコーデなら、ベージュなどの帯締めで馴染ませておいて、赤味のある京紫の帯揚をチラッと見せても素敵かしら?
京紫も白との暈しだったらビジネスシーンにも使えるでしょうか。
K@ブラックジャック
そういえば
今、日本橋で「TOKYO KIMONO WEEK」ですよね。
何故かいつも時間が合わなくて行ったことがないんですが
どんな感じなんでしょうか。やっぱり着物の方多かったですか?

鉄紺の帯締めですがモニター越しではありますが、ちょっと浮いて見えるかなぁ。彩度が高い感じ。
周りに似た色がないからですかね。帯揚げが同じような色だとちょっと違うかも?

目線をはずす意味では男性の場合ネクタイですが着物の場合は半衿でしょうか。
でも神奈川さんの場合ビジネスだから仕事の時はやっぱり白半襟じゃないとだめなのかしら。難しいですね
朋百香
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
栗山紅型の帯、拝見したの初めてかも・・・。
今の季節にピッタリですね。
帯締めの「冒険」も私は好きです。帯の中に青系も
少し入っているので、そんなにかけ離れては
いませんよね。
「強い色があると、相手が程よく目線を反らす場所
になる」な~るほど、面白いですね。

小倉先生の奥様のおきものも素敵。
やはり、先生の作品なのでしょうね~?
りら
限りなく・・・
帯締の色って本当に微妙で、ちょっとした明度彩度の違いが利くんですよねぇ。
かと思うと「違うだろうなぁ?」というようなのが、案外しっくり決まったり。
この悩みもまた、楽しからずや~。
すぐに見に行かれたというのが、凄い!ですし、羨ましいです。

カウンター、もう少しですね!
香子
そうなんです、こちらのブルー
(自分のトコではジャパンブルーって言ってますがw)
単体だとすっごく主張するんです。
ワタシの場合は三部紐なので、薄手の色を重ねて
相殺するように使ってます。
難しいですよね、帯締めって
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