「明けない夜は無い」
月を眺めて、李両は笑う。まるで相手が悩んでいて、それに対して助言をするように。優しくゆっくりと。
「けれど、菊」
次に落ちた、月まで届きそうも無い弱い声は、明らかに嘆いていて。
「……今日も、なんてきれいなんだろう。あなたは」
机上の書類に目を落とし、冗談でも見たかのように苦笑して、
そして再び愛しい月を見つめると。
「まるでそこにいて輝いているあなたこそ、ほんとうみたいだ。……ね、菊」
中年の女は、街の中央にある井戸のところまで私を案内してくれた。
「ここまでくれば、街中のどこにでも行けるわ。それじゃ、私はこれで」
行き先の言えない私を、とりあえずここまで連れてきてくれると、女は前置きのように笑って会釈して離れていった。
「ありがとうございました」
女は首を振った。構わないのよ、と言って、次に何か、ききとれない、短い言葉を、言って。
そうして別れた。
月を眺めて、李両は笑う。まるで相手が悩んでいて、それに対して助言をするように。優しくゆっくりと。
「けれど、菊」
次に落ちた、月まで届きそうも無い弱い声は、明らかに嘆いていて。
「……今日も、なんてきれいなんだろう。あなたは」
机上の書類に目を落とし、冗談でも見たかのように苦笑して、
そして再び愛しい月を見つめると。
「まるでそこにいて輝いているあなたこそ、ほんとうみたいだ。……ね、菊」
中年の女は、街の中央にある井戸のところまで私を案内してくれた。
「ここまでくれば、街中のどこにでも行けるわ。それじゃ、私はこれで」
行き先の言えない私を、とりあえずここまで連れてきてくれると、女は前置きのように笑って会釈して離れていった。
「ありがとうございました」
女は首を振った。構わないのよ、と言って、次に何か、ききとれない、短い言葉を、言って。
そうして別れた。