どこか遠くでフッチボル

鹿島サポだが裏の顔は日本代表サポ組織「食う軍」の司令。徒然なるままボソボソと。

旅。北米と爺さん/3月31日

2004-09-06 | TROUBLE TRAVEL
せっかくの温泉旅館だが、なぜか落ち着けない。
6時前に目覚めてしまい、風呂に入りに行く。
途中、女中さんに会ったので、食事の時間を早めてもらう事にした。
名残惜しい気もしたが、ゆっくりしてはいけないんだと、何かが囃し立てていた。

8時。
早いが、宿を後にする。
小さな温泉街だったが、とても静かで気に入った場所となった。
いつかまた来れるだろうか・・・一度振り返ってから、バイクを西に向けて走り出した。

再度新宮に出て、本土最南端の紀伊白浜を見たいという気もあったが、半島を横断して、西岸に出る事を目指す。
細い山道は延々と続いたが、昼過ぎに海を見る事が出来た。
国道42号線だ。

半島の東側と違って、西側は賑やかだ。
ドライブインが多いし、交通量も多い。
バイクとすれ違うことは少なかったが、自転車でのツーリング姿が目立つ。
昨夜の温泉で気分がよかったので、追い越し際に左手でピースサインを送ってみる。

「ありがとぉー!」
「イェーーーイ!」

元気な返事が次々に返ってきた。
バイクも自転車もない。旅人同士の挨拶だ。
気分は更に晴れた。

大阪まで上がってしまう事も考えたが、このまま都会に出ると今夜の野宿場所で苦労しそうな予感がした。
地図を調べると、深日と言う場所から、淡路島にフェリーが出ている事を知る。

四国か・・・。

旅行を含めて四国には足を踏み入れた事がない。
気持ちは直ぐに決まった。
フェリー乗り場を目指す。

思ったより大きなフェリーにバイクごと乗り込み、その後デッキに上がってみた。
ライダーと思わしき人達がちらほら見受けられた。
ボンヤリと海を眺めていたら、声を掛けられた。
FZ、FZR。同じヤマハ党とう事で、色々な事を話す。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎる。
結局住所を交換する間もなく、淡路島の洲本に到着となってしまった。
彼らは鳴門大橋を渡り、四国入りするとの事。
俺はと言うと、時間がすでに3時と言う事もあり、淡路で野宿場所を決める事にした。

地図にキャンプ場と出ている“由良”に向かってみる。
小さな港町。
せまい街角を曲がって、キャンプ場を目指してみるが、一向に見つからない。
駄菓子屋があったので、中でキャンプ場の事を聞いてみた。

「地図の場所はここだけど、キャンプ場なんかないよぉ。」

見えるのは堤防に囲まれた小さな港。
確かにキャンプ場は存在していない・・・。
途方にくれていると、目の前を爺さんが乗ったバイクが通り過ぎた。
古いビジネスバイクで、爺さんはヘルメットもかぶっていなかった。
ボーっと眺めていると、通り過ぎた爺さんのバイクが止まり、そしてUターンして戻ってきた。

「こんなところで何しとるの?」

訳を話してみた。

「キャンプ場はないなぁ」

一瞬泊めてくれるのかと思ったが、そうではなかった。
バイクのエンジンをかけると、爺さんは帰る準備を再び始めた。

「今度なぁ、このバイクで北米大陸横断しに行くんだぁ。
       兄ちゃんはどこまで行くの?あぁ、九州かぁ。あそこもいいところだなぁ。」

凄いことをポロッと言って、爺さんはさっさと走り去ってしまった。
“はぁ?アメリカだってぇ?”
間違いなく70歳近い爺さん。
俺の一人旅が突然小さく感じた。

“爺さん、あんた凄いや”

結局淡路では野宿場所は見つからなかった。
こうなったら四国に入ってしまうしかない。

風が強いと聞いていた鳴門大橋は、噂にたがわぬ強風ぶりだった。
下の海で渦巻く鳴門の大渦は気になったが、バイクを真っ直ぐ走らせるのに必死。
直線でもバイクを傾けていないと、あっと言う間にコケそうだった。

四国上陸の地は鳴門。
色々歩き回りたいところだが、野宿地を探さなければいけない。
海側では見つかりずらいと判断。
四国の真ん中を東西に走る国道を西に向かう事にする。

しかしこの日もいい場所は見つからなかった。
適度に人家が続いてしまって、いつまで経っても駄目。
いいかげん、野宿地探しも飽き飽きだ。
いっそ今夜もどこかの旅館にでも泊まればいい。
開き直って、国道をひたすら西へ向かっていた。

途中、高校野球で有名な池田の文字を見つける。
深く考えもせず、バイクをその方向に向けた。
池田高校を過ぎたのだろうか。夕方6時を過ぎて暗くなった景色では、正直何も分からなかった。

案内板に高松の文字が見える。
高松?大きな町だった気がする。
何かあるだろう・・・。

結局高松まで来てしまった。
思いの外大都市。
とても旅館なんてみつかりそうもない。
かといって、ホコリまみれのこの格好では、ホテルに“泊まれますか?”と聞く勇気もなかった。

公園ででも寝ちゃうか。
一休みしていた場所で諦めていると、目の前に小さなビジネスホテルが。
いくら呼び鈴を押しても出てこないカウンター(喫茶店のレジ程度の大きさしかない)で駄目かと諦めた頃、迷惑そうに従業員が現れた。

部屋に入ってみると、それは過去経験がないぐらいの狭い部屋。
安かった事はあったな。
それでも今夜の寝床が見つかったのは嬉しい。
食事がまだだったので、夜の高松を散策に出かけた。

山ばかり見ていた目には、それは強烈なネオンと感じ、町を歩く人達の勢いに目を回し、賑やかな店ばかりが目立つ明るい店には入りにくかった。
結局、マクドナルドでハンバーガーを買い込み、ホテルで夕飯。
大都市に来て人は多いのに、山にいるよりどこか孤独。

ホテルは嫌だな。
大きな町も避けよう・・・。
外の喧騒が聞こえるビジネスホテルで、有料のテレビにお金を入れる気にもならず。

淡路の爺さんは凄かったな。
ビジネスバイクでアメリカかぁ。
その事を思い出した時、少し笑えた。

-------------------------
 天気:曇り時々晴
 時間:8:00~20:00
 距離:340km
-------------------------