指宿ユースでの朝は、大変気持ちがよかった。
目の前に広がる海。
空は快晴。
今日は雨の心配なしに走れそうだ。
午前8時半。
博多方面に一気に北上すると言うCBさんとお別れ。
ポツポツと話しをするCBさんだったが、気持ちがいいやつで最高の旅の友だった。
気をつけて行けよ。
言葉の代わりに、小さくピースサイン。
ヘルメットから見える目は、大きく笑っていた。
目標地点には到達した。
急ぎ過ぎて何も見ていないことに気付く。
せっかくの九州。
気の向くままに色々見て回ることにする。
指宿から鹿児島最南端にそびえる開聞岳は直ぐそこだ。
気持ちがいい景色と、裾野まで綺麗な開門岳。
人がいない道をのんびり上がっていくと、そこにも馬がいた。
九州に来て、本当によく馬を見かける。
それも、とても足が太いしっかりした馬だ。
十分に景色を堪能して、近くの池田湖を目指してみる。
池田湖の怪獣“イッシー”が生息していると言われる湖だ。
愛読書“ムー”を読んでいる俺としては、楽しみにしていた場所。
池田湖に向かう途中、左手に巨大な看板を発見。
“ムー大陸博物館”
と書いてある・・・。
九州でなぜムー大陸?
思う間もなく、バイクはムー大陸博物館に向け、小高い丘を登っていった。
着いてとにかく驚いた。
博物館と名乗っているが、一見お坊さんが出てきそうなお寺の概観。
しかし、その色彩振りが凄い。
赤と白を基調にしているのだ。
“あやしいぞ・・・”
頭を過ぎったものの、ここまで来たらと入ってみた。
入口で入館料を払い、門を入ると中は大きな敷地。聳え立つ建築物は正に異様の一言。
それに・・・こんなに大きいのに、見学者は俺一人だった。
早速博物館の中に入ってみる。
特別凄い展示物があるわけではなかったが、言いたい事はしっかりと伝わった。
この九州の沖合いに、幻の大陸“ムー”が存在したと主張する文献。
結構真面目な内容で、ホォと思いながら1時間弱の時間を楽しめた。
不思議な気持ちで施設を出たが、やはり駐車場にも俺以外の見学者いなかった。
池田湖に向かい、バイクを走らせたが、不思議感覚が残ってにやけてしまう。
何だあの施設。
真面目なのか、ただの観光施設を作りたかったのか。
騙された気がするがそれにしても面白かった。
笑っちゃうなぁ。
池田湖は意外に大きかった。
怪獣見つけちゃったらどうしようといらぬ心配しながら走っていると、“イッシーはここ”と書いてある看板を発見。
どう見ても観光ボートの貸し出し場みたいなところだが、立寄ってみる。
ここと書いてある場所は、小さないけすを示していた。
中をのぞいてみる。
“!?”
なんだこれ!?
黒くて大きくて長いものがいけすの中にうじゃうじゃいる・・・。
よく見てみる。
大きすぎて気付かなかったが、これは“うなぎ”か?
俺の腕ぐらいある太さ、長さは1m前後。
こんなうなぎ初めて見たよ。
店番の親父さんと話してみたら、これは怪獣の一種だよと笑っていた。
食べたら美味しいのだろうか。
気になったけど、聞かずに池田湖を後にした。
イッシーって、あのうなぎが更に巨大化したものに違いない。
勝手に結論がでた。
指宿スカイラインと言う、高台を走る有料道路を走る。
ここ九州の南部に来て、道の気持ちよさに本当に驚く。
適度なカーブを持った道が小高い丘を縫うように抜けて行く。
バイクを操る自分が、凄く上手くなった気がする道。
鹿児島にはあっと言う間に到着した。
暖かい日中に誘われ、今夜は久しぶりの野宿をする事にしよう。
場所は・・・やはり桜島だろう。
地図で調べると、鹿児島から桜島へはフェリーが出ている。
今回の旅で、小さなフェリーに乗る機会に触れ、それがとても楽しく感じ始めている。
手軽に船に乗り、そのまま対岸へと連れて行ってくれる。
フェリーに乗っている間は海を眺める。のんびり揺られていると、このまま降りたくなくなるものだ。
桜島は火山の島。
見渡す限り溶岩の岩だ。
そこを縫うように走る道。
道は火山灰がうっすらと積もり、気をつけて走らないと転倒しそう。
昨夜の一件で、すっかり恐怖感が芽生えていた俺は、必要以上にそろそろと走るのだった。
大きな展望台で、鹿児島の町をバックに記念写真。
快晴で夏のような日差しを受け、カメラを見る目は薄開きとなった。
ただ、ここでの野宿は難しそうだ。
砂と風に苦しめられそう。
霧島を目指して走り出す。
途中、スタンドで給油。
ほぼ毎日タンクは空になる。
財布のお金も少しずつ減っていく。
まだ残金はあるな。
このお金がなくなる時が帰るときか。
嫌な事を考えた。
旅が終わるなんて・・・。
スタンドでバイクを洗わせてもらった。
俺のバイクは土浦ナンバーだ。
“このナンバーどこ?”
九州に来てから何度も聞かれている。
このスタンドでも聞かれた。
見た事ないだろうな~。
旅人を実感する時でもある。
4時を過ぎたので今夜の寝場所を探し始めた。
幸い、霧島を登ってえびの高原に到着したら、直ぐ目の前にキャンプ場の看板が見えた。
ついている時はこんなものだ。
時間が早いが、今日はここに泊まる事にする。
えびの高原キャンプ場は、面積がとても広く、木が点在する敷地に自由にテントを張れた。
余裕を持って夜を迎える野宿は今夜が初めてか。
ニヤニヤしながらテントを張る。
中でごろんと横になっていると、もう一組利用客が来た。
そして、20m向こうにテントの設営準備。
俺と同年代のカップルだった。
風呂があると言うので、日が暮れた頃に向かってみる。
キャンプ場の外れにある掘っ立て小屋だ。
風呂に入れるだけましと思って中に入って驚いた。
なんと木の風呂桶にたっぷりの湯。
しかも湯の効能が書いてある。
“うわっ!本物の温泉じゃん!”
泳ぐように温泉を堪能し過ぎ、湯あたり気味となる・・・。
ふらふらしながらテントに帰り。焚き火を始めた。
火照った体に、焚き火の炎は更に熱く感じたが、夜気が通り始めると一気に冷え込んだ。
炎から目を移して上空を見上げたら、見た事がないくらいの濃い星空があった。
ポカンと口を開けたまま空を見続ける。
驚いた・・・夜空はこんなにも星で明るいのか・・・。
米だけの夕食を済ませ、テントにもぐりこむ。
気持ちがいい。
寝袋に包まり、眠りに落ちそうな頃。
例の20m先のテントからヒソヒソ声が聞こえてくる。
そして・・・20代前半の俺には刺激が強すぎる色々な音。
参った・・・・。
俺が寝る事が出来たのは、一体何時だったのだろうか。
彼女欲しいな。
悶々とした夜、頭の中はピンク一色となった。
つづく・・・・。
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天気:快晴
時間:8:30~16:00
距離:155km
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目の前に広がる海。
空は快晴。
今日は雨の心配なしに走れそうだ。
午前8時半。
博多方面に一気に北上すると言うCBさんとお別れ。
ポツポツと話しをするCBさんだったが、気持ちがいいやつで最高の旅の友だった。
気をつけて行けよ。
言葉の代わりに、小さくピースサイン。
ヘルメットから見える目は、大きく笑っていた。
目標地点には到達した。
急ぎ過ぎて何も見ていないことに気付く。
せっかくの九州。
気の向くままに色々見て回ることにする。
指宿から鹿児島最南端にそびえる開聞岳は直ぐそこだ。
気持ちがいい景色と、裾野まで綺麗な開門岳。
人がいない道をのんびり上がっていくと、そこにも馬がいた。
九州に来て、本当によく馬を見かける。
それも、とても足が太いしっかりした馬だ。
十分に景色を堪能して、近くの池田湖を目指してみる。
池田湖の怪獣“イッシー”が生息していると言われる湖だ。
愛読書“ムー”を読んでいる俺としては、楽しみにしていた場所。
池田湖に向かう途中、左手に巨大な看板を発見。
“ムー大陸博物館”
と書いてある・・・。
九州でなぜムー大陸?
思う間もなく、バイクはムー大陸博物館に向け、小高い丘を登っていった。
着いてとにかく驚いた。
博物館と名乗っているが、一見お坊さんが出てきそうなお寺の概観。
しかし、その色彩振りが凄い。
赤と白を基調にしているのだ。
“あやしいぞ・・・”
頭を過ぎったものの、ここまで来たらと入ってみた。
入口で入館料を払い、門を入ると中は大きな敷地。聳え立つ建築物は正に異様の一言。
それに・・・こんなに大きいのに、見学者は俺一人だった。
早速博物館の中に入ってみる。
特別凄い展示物があるわけではなかったが、言いたい事はしっかりと伝わった。
この九州の沖合いに、幻の大陸“ムー”が存在したと主張する文献。
結構真面目な内容で、ホォと思いながら1時間弱の時間を楽しめた。
不思議な気持ちで施設を出たが、やはり駐車場にも俺以外の見学者いなかった。
池田湖に向かい、バイクを走らせたが、不思議感覚が残ってにやけてしまう。
何だあの施設。
真面目なのか、ただの観光施設を作りたかったのか。
騙された気がするがそれにしても面白かった。
笑っちゃうなぁ。
池田湖は意外に大きかった。
怪獣見つけちゃったらどうしようといらぬ心配しながら走っていると、“イッシーはここ”と書いてある看板を発見。
どう見ても観光ボートの貸し出し場みたいなところだが、立寄ってみる。
ここと書いてある場所は、小さないけすを示していた。
中をのぞいてみる。
“!?”
なんだこれ!?
黒くて大きくて長いものがいけすの中にうじゃうじゃいる・・・。
よく見てみる。
大きすぎて気付かなかったが、これは“うなぎ”か?
俺の腕ぐらいある太さ、長さは1m前後。
こんなうなぎ初めて見たよ。
店番の親父さんと話してみたら、これは怪獣の一種だよと笑っていた。
食べたら美味しいのだろうか。
気になったけど、聞かずに池田湖を後にした。
イッシーって、あのうなぎが更に巨大化したものに違いない。
勝手に結論がでた。
指宿スカイラインと言う、高台を走る有料道路を走る。
ここ九州の南部に来て、道の気持ちよさに本当に驚く。
適度なカーブを持った道が小高い丘を縫うように抜けて行く。
バイクを操る自分が、凄く上手くなった気がする道。
鹿児島にはあっと言う間に到着した。
暖かい日中に誘われ、今夜は久しぶりの野宿をする事にしよう。
場所は・・・やはり桜島だろう。
地図で調べると、鹿児島から桜島へはフェリーが出ている。
今回の旅で、小さなフェリーに乗る機会に触れ、それがとても楽しく感じ始めている。
手軽に船に乗り、そのまま対岸へと連れて行ってくれる。
フェリーに乗っている間は海を眺める。のんびり揺られていると、このまま降りたくなくなるものだ。
桜島は火山の島。
見渡す限り溶岩の岩だ。
そこを縫うように走る道。
道は火山灰がうっすらと積もり、気をつけて走らないと転倒しそう。
昨夜の一件で、すっかり恐怖感が芽生えていた俺は、必要以上にそろそろと走るのだった。
大きな展望台で、鹿児島の町をバックに記念写真。
快晴で夏のような日差しを受け、カメラを見る目は薄開きとなった。
ただ、ここでの野宿は難しそうだ。
砂と風に苦しめられそう。
霧島を目指して走り出す。
途中、スタンドで給油。
ほぼ毎日タンクは空になる。
財布のお金も少しずつ減っていく。
まだ残金はあるな。
このお金がなくなる時が帰るときか。
嫌な事を考えた。
旅が終わるなんて・・・。
スタンドでバイクを洗わせてもらった。
俺のバイクは土浦ナンバーだ。
“このナンバーどこ?”
九州に来てから何度も聞かれている。
このスタンドでも聞かれた。
見た事ないだろうな~。
旅人を実感する時でもある。
4時を過ぎたので今夜の寝場所を探し始めた。
幸い、霧島を登ってえびの高原に到着したら、直ぐ目の前にキャンプ場の看板が見えた。
ついている時はこんなものだ。
時間が早いが、今日はここに泊まる事にする。
えびの高原キャンプ場は、面積がとても広く、木が点在する敷地に自由にテントを張れた。
余裕を持って夜を迎える野宿は今夜が初めてか。
ニヤニヤしながらテントを張る。
中でごろんと横になっていると、もう一組利用客が来た。
そして、20m向こうにテントの設営準備。
俺と同年代のカップルだった。
風呂があると言うので、日が暮れた頃に向かってみる。
キャンプ場の外れにある掘っ立て小屋だ。
風呂に入れるだけましと思って中に入って驚いた。
なんと木の風呂桶にたっぷりの湯。
しかも湯の効能が書いてある。
“うわっ!本物の温泉じゃん!”
泳ぐように温泉を堪能し過ぎ、湯あたり気味となる・・・。
ふらふらしながらテントに帰り。焚き火を始めた。
火照った体に、焚き火の炎は更に熱く感じたが、夜気が通り始めると一気に冷え込んだ。
炎から目を移して上空を見上げたら、見た事がないくらいの濃い星空があった。
ポカンと口を開けたまま空を見続ける。
驚いた・・・夜空はこんなにも星で明るいのか・・・。
米だけの夕食を済ませ、テントにもぐりこむ。
気持ちがいい。
寝袋に包まり、眠りに落ちそうな頃。
例の20m先のテントからヒソヒソ声が聞こえてくる。
そして・・・20代前半の俺には刺激が強すぎる色々な音。
参った・・・・。
俺が寝る事が出来たのは、一体何時だったのだろうか。
彼女欲しいな。
悶々とした夜、頭の中はピンク一色となった。
つづく・・・・。
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天気:快晴
時間:8:30~16:00
距離:155km
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