かつて銀昆で…

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

一人酒、一人食べ

2024-09-17 21:05:47 | 日常の素描
大阪環状線天満駅界隈には立ち飲み屋が犇き
若者から中高年までが丸腰警戒心なしで
カウンターで涎を垂らしている

その一味であるぷよとおれも中瓶麦酒を飲みながら肴を突きつつ
饒舌なる刻を送っていた

単独客の中年短髪常連風女性が躊躇い勝ちに
「食べられるかな一人だしな」
と独語なのか店員に気づいて貰おうかの魂胆で呟いた

おれの眼前が調理場になっていたので
疲れ気味だが愛想はいい店の男が
茹で上がった蟹の甲羅を二分割し
脚を細かく捌いているのが見えたから
女は注文したのだと確信した

ぶよとの会話が途切れはするものの弾む時もあったので
数分の間は空いたかと思うが
眺めると女が格闘するように皿の上の蟹にむしゃぶりついていた
その横顔に広がる喜色

女は相当蟹好きだと窺え知れ
おそらく産地海の近くの生まれではないか
というおれの想像は外れることも多いが
立ち飲み屋カウンターで一人蟹に喰らいつく姿には
愉悦を超えた孤高から溢れおちる寂寞すら放っていた

独酌独り飯は悪いことではないものの
蟹や河豚や鯨などは複数人で食すのが相応しいように
思えてならぬ