大阪環状線天満駅界隈には立ち飲み屋が犇き
若者から中高年までが丸腰警戒心なしで
カウンターで涎を垂らしている
その一味であるぷよとおれも中瓶麦酒を飲みながら肴を突きつつ
その一味であるぷよとおれも中瓶麦酒を飲みながら肴を突きつつ
饒舌なる刻を送っていた
単独客の中年短髪常連風女性が躊躇い勝ちに
単独客の中年短髪常連風女性が躊躇い勝ちに
「食べられるかな一人だしな」
と独語なのか店員に気づいて貰おうかの魂胆で呟いた
おれの眼前が調理場になっていたので
おれの眼前が調理場になっていたので
疲れ気味だが愛想はいい店の男が
茹で上がった蟹の甲羅を二分割し
脚を細かく捌いているのが見えたから
女は注文したのだと確信した
ぶよとの会話が途切れはするものの弾む時もあったので
ぶよとの会話が途切れはするものの弾む時もあったので
数分の間は空いたかと思うが
眺めると女が格闘するように皿の上の蟹にむしゃぶりついていた
その横顔に広がる喜色
女は相当蟹好きだと窺え知れ
女は相当蟹好きだと窺え知れ
おそらく産地海の近くの生まれではないか
というおれの想像は外れることも多いが
立ち飲み屋カウンターで一人蟹に喰らいつく姿には
愉悦を超えた孤高から溢れおちる寂寞すら放っていた
独酌独り飯は悪いことではないものの
独酌独り飯は悪いことではないものの
蟹や河豚や鯨などは複数人で食すのが相応しいように
思えてならぬ