高揚した頬が熱を帯びている。
久美は恋をした。この幸福感はたとえようもない。
世間には、夫以外の異性に恋する人妻達は多々いるだろう。
もう一度言う。久美は恋をしてしまった。
しかしその恋は問題があった。久美の恋した相手は女だった。
そして相手は娘と同じ年の女性だった。
そこからこの恋の修羅場は始まっていたのだ。
田山京香を見た瞬間、言葉に表すことのできない衝撃が体内を走った。
京香と会った時から久美の本当の人生が始まったのだ。
彼女を自分だけのものにできるのなら、
今日まで生きてきて得たもの全てを捨ててもいいと思った。
しかし、哀しいことに久美には夫と娘がいた。
何よりも絶望的なのは恋した相手が女だったということだ。
初めて趣味の英会話教室で会った時
京香は、はにかむように久美の隣に座った。
何て可愛いのだろう。八重歯が一段とチャーミングさを増している。
この世には生まれながらにして愛されるタイプという人間が存在する。
京香はそのタイプだ。何かをしてあげたくなる、守ってあげたいと
周りに思わせる何かを京香は醸し出していた。
柔らかな雰囲気と独特のオーラは京香の天性のものだと思う。
京香のそばにいられることが至福の喜びとなった。
京香はセンスが良かった。
京香は笑顔が愛らしかった。清潔なお洒落をして、
少しだけセクシーで、チャーミング。京香のすべてが久美の魂を揺さぶった
京香は一瞬にして久美の人生の価値観を変えたのだ。
魅力的な京香の存在はすぐに教室の注目となった。
久美は快感だった。まるで自分の恋人が注目されている優越感を感じた。
3ヶ月過ぎた頃には、京香は久美に頼り懐き甘えていた。
教室が終わるとは居酒屋や、イタリアンレストランで食事をした。
時に映画を観て、ショッピングをする日々。
久美の生活は京香の色に染まっていった。
ある日、帰宅すると、夫は既に帰宅してリビングでテレビを観ていた。
「ただいま」
夫の清志はビール缶を片手に後ろを向いている。返事はない。
向かい側のソファに座る。「ああ疲れた」
ジロリと一瞥すると夫は無表情のまま言った。
「どういうつもりだ?」
続く・・・