私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

尽くしすぎる女〜10〜

2016-11-27 22:49:26 | オムニバス恋愛小説
「あなたはずっとそうだった。そのわけ知り顔の涼しい顔。
恋に思い悩み涙を流したことのないあなたに私の何がわかるの?
私はずっと感じていた。
男に夢中になっている私のことを軽蔑していたでしょう?」
「何をいってるの?」理沙は意味がわからなかった。
「もう友人ごっこはやめましょう」
「友人ごっこ?」
「そう、偽りの関係はおしまい。うんざりだわ」
不覚にも理沙の頬に涙が流れていた。
「夏美はそう思って私と付き合っていたの?
私にとっては夏美は大切な友人だわ」
「そうかしら…」理沙の言葉を無視して入口のドアを見ながら
「そろそろ孝志が来る頃だわ」と言った。
「えっ、孝志さんも呼んだの?」
「あら、気まずいの?口裏を合わせていなかったようね」
夏美の中で誤解は絡まり誤解が事実に変換している。
孝志が店に入って来るのを見つけると夏美は手を上げた。
「あれ、理沙さんも一緒だったの?」
何も知らない孝志が二人を見た。

続く…

尽くし過ぎる女~9~

2016-11-20 17:02:56 | オムニバス恋愛小説
「違うわ。違うの。誤解よ」
「じゃあ、どうしてその場所に2人でいたのか釈明してよ」
「孝志さんに駅で偶然に会ったのよ。それで・・・」
「それで?」
理沙は迷った。
ここで上手くごまかせば、2人の友情は続いたのだろうか?
しかし、理沙は事実を伝えることを選択した。
「孝志さん、今夏美とつきあうのを悩んでいて、それで相談されたの」
「ちょっと待って。どういうこと?孝志は私とつきあうことを悩んでいた?」
信じられないという表情の夏美。
「冷静に聞くんだったらほんとのことを話すわ」
夏美は冷静さを意識して首を縦に振った。
「孝志が私との交際の何に悩んでいたのか教えて」
おとなしくなった夏美に安心してしまったのがいけなかったのだ。
既に恋愛依存になっていることを理解しなければいけなかったのだ。
私は孝志が2人の恋愛に悩んでいる事実を理路整然と話した。
話を聞いた夏美は静かに目の前の残っているコーヒーを飲んだ。
「わかったわ」
「孝志さんは、これからもつきあっていこうとしている。
前向きに2人のことを考えているから。不安に思わないで」
「孝志は何故あなたに相談したのかしら?」
「それは、友達だし、2人がつきあっていることも知っているし」
「どうして?どうして孝志は理沙に相談したのかしら?」
「どうしたの?おかしいわよ。夏美」
夏美の口が歪み、見たことのない表情に変貌していた。
「ふん。偽善者!壊れればいいと心の中で思っていたくせに!」

続く・・・


尽くし過ぎる女~8~

2016-11-12 21:27:59 | オムニバス恋愛小説
夏美の憎悪に満ちた表情に理沙はたじろいだ。
「どうしたの?」
「何か隠してないと言ってるのよ」
さらに語気を強めて言う。
「別に。夏美に隠していることなんて何もないわ」
「そう・・・」
数秒の沈黙の後夏美は言う。
「昨日誰と一緒だったの?」
「誰とって・・」
孝志と一緒だったと言おうとして息を呑む。
孝志に会ったことを口止めされていたことを思いだしたのだ。
「別に・・・会社を出て家に帰ったわ」
「そう・・・なるほどね」
「何?それがどうしたの?」
「猶予を与えたけど無理だったわ。あなた達は嘘をついている。
「あなた達って、誰のこと?」
「孝志とあなたのことよ。
今日昼に孝志にラインで確かめたの。昨日はまっすぐ帰ったって。
二人で口裏を合わせたのね。とぼけても駄目よ」
何が起きたのか?理沙は茫然とした表情で夏美を見つめた。
「どうしてわかったかって?妹が偶然2人でいるところを見たのよ」
「誤解よ」
「誤解ですって。妹は何度も孝志や、理沙と会っているのよ。
誤解するわけないじゃない」
違うわ。違う。誤解している・・・
夏美の形相はもはや何物もはじき返すほど強固なものになっていた。

続く・・・


尽くしすぎる女〜7〜

2016-11-05 20:48:30 | オムニバス恋愛小説
翌日、朝に夏美からラインが届いた。
《仕事終わったらカフェカナリヤで待っている。
大事な話があるから必ず来て》
高圧的な命令口調のラインに不快な感情になる。
挨拶もなく用件のみの文字を見ながらいつもの夏美ではないと感じた。
何があったのか?
孝志は夏美と別れようか悩んでいた。でも帰り際に
もう少し考えてみるよといっていたのだ。
《わかったわ。残業がなかったら7時頃には行けると思う》
その後夏美からの返信ラインはなかった。

カフェカナリヤのドアを開けるとサーモンピンクのワンピースが視界に入った。
デザインも色も夏美に似合う。女性から見ても可愛い女性だと思う。
何もしなくても愛されるのに。
何故そんなに恋愛一色に染まってしまうのか?
「お待たせ」
椅子に座った途端に夏美が語気荒く言った。
「私に何か隠していることない?」

続く…

尽くしすぎる女〜6〜

2016-11-03 12:59:43 | オムニバス恋愛小説
「僕の周りの女子達は、恋愛か、ファッションの話がほとんどなのに。
男に興味がないの?理沙さんまさか?違うよね?」
孝志が何を誤解しているのかすぐに察知した理沙は手の平をひらひらとさせて
「何?誤解しないで。私だって付き合いした男性はいたわ。だけど」
「だけど、本当に愛する人に出会わなかった?」
「ううん、そもそも愛って男女の間簡単に使っていいのかと思う」
「根の深い言葉だね。理沙さんは男女の関係をどう表すの?」
「情欲かな」
「情欲?なんか生々しい言葉だね」
「まあ、私の恋愛観を話すと徹夜になりそうだからやめておくわ。
帰りましょう」
孝志は頷き立ち上がり、
「今日会ったこと夏実には内緒にしておいてくれる?
彼女が知るとややこしくなるから」
「そうね。変に誤解されるのも嫌だから」
孝志と理沙は駅の改札口で別れた。
その2人の状況を、
じっと見つめている人物がいることを
その時2人は知らなかった。
続く...