私は地球で楽しく遊ぶために生きている

心はいつも鳥のように大空を飛び 空に吹く風のようにどこまでも自由に

どうしょうもなく惹かれる~愛とセックス~最終章

2016-09-17 23:44:32 | オムニバス恋愛小説
「このイタリアン美味しいだろう?」
表参道の洗練されたレストラン。
善良で、お洒落で、経済力のある、すべてに完璧な恋人。
いえ、恋人だった男。
いつか雄介と別れたことを後悔する日が来るだろう。
「いつもありがとう。あなたなら素敵な女性に出会えるわ」
「何言ってるの?それよりここのパスタ、最高に美味しいんだ。食べてごらん」
どこまでも善良な男。涙が滲む。
私は、明日もわからない男と生きていく人生を選択した。
これが真実の私だ。女として生きることが私自身だったのだ。
私は私の風を見つけた。
見つけてしまった。
その風が不道徳なものであろうと、私はその風を選んだ。
同質の風を見つけた今、私はその風と生きていく術しかない。
レストランを出た後、雄介はこれから会社へ戻るという。
私の為に、私と夕食をするためだけに仕事を中断して抜けてきたのだ。
雄介という男はそういう男だ。
だからこそ、私では彼が幸せになれない。
「じゃあ、おやすみ」
肩を抱く雄介の温もりが伝わる。
私は空を仰いだ。
久しぶりに見上げる空は怖いほどに青く澄んでいた。

続く・・・




どうしょうもなく惹かれる~愛とセックス~9~

2016-09-11 13:02:22 | オムニバス恋愛小説
ホテルのベランダに出て夜空を見上げると星が視界に入った。
東京では見ることのない澄んだ夜空。
ベッドの中では、運命の男が熟睡している。
その時、スマートフォンの着信音が鳴った。
雄介からだ。
「旅行は楽しい?」
「ええ」
「今何しているの?」
「夜空を見ていた」
「友達と?」
「ええ」
躊躇なく嘘が言えた。
「早く会いたいよ」
「ねえ、私のこと好き?」
「好きだよ。好きすぎて旅行に行くのも心配だったよ。」
「心配?」
「心配さ。君は可愛いからナンパされるもの。友人と行くから安心したけど」
私は可笑しくて笑ってしまった。
雄介にとっては、私はいつまでも女なのだ。
今、愛される女を放棄しようとしているのに。
どこまでも善良な男、
そして、どこまで愚かな優しい男なのだろう。
普通の恋人同士でいたかった。
時にデパートに行き買い物をして映画を見るひととき、
そんな時間が好きな女でいたかった。
瞳からあふれ出る涙がこぼれ床にに落ちた。
さようなら。
そしてありがとう雄介・・・

続く・・・




どうしょうもなく惹かれる~愛とセックス~8

2016-09-03 23:19:52 | オムニバス恋愛小説
間違いない。あの時の男だ。忘れもしない。
瞳の奥でいつまでも残像として残っている花。
マンジュシャゲ。
思えば愛撫から男の体の動きはあの時と変わっていない。
どこか遠い記憶の中で覚えていたセックス。
何故雄介とのセックスで快感を得ることができなかったのか、やっとわかった。
この男でなければエクスタシーを感じない体になってしまったのだ。
男特有の匂い。厚い唇、適度な胸毛そして、そして男自身。
私を恍惚の世界へと導く男の正体。
あの男だった。めくるめくあの日、あの時、あの季節、
あの時間は私の人生だった。
そしてこの男こそが同質の魂を持つ相手なのだ。
求めていた風の正体はこの男だった。
その夜、私達は野獣のように求めあい愛し合った。

雄介との季節が終わりを告げようとしていた。


続く・・・