昨年世田谷ボロイチさぎ草市で蛍を見た(20160716 螢 in せたがや)のをきっかけに、ホタルの乱舞を見たいと思い、蛍の群生地を訪れてみた。
所は群馬県吾妻郡東吾妻町の箱島地区。東京からは新幹線と在来線を乗り継いでおよそ3時間。ほぼ県央の山間地帯に位置する。
蛍が見られる一帯は、近くを箱島湧水(日本名水百選)を源とする鳴沢川が流れ、その水が地面から滲み出してくる半湿地帯。ここを選んだのは、保護の会の活動により自然が守られ、蛍が自然繁殖しているからである。
蛍の棲息地というと川の上流の、流れが緩やかなところというイメージがあるが、ここは草叢になった田圃のようなところで、その畦道から蛍をみるような格好であった。
私が到着した頃にはすでに20名ほどの見物人が来ていて、カメラの三脚などをセットしながら蛍の登場を待ち構えていた。
蛍が光るのは午後7時半から9時過ぎぐらいで、特に8時半から9時がピークらしい。
黄昏から夕闇で周囲が漆黒に包まれると、草叢から何匹かの蛍が飛び交い始める。しかし、その光は非常に微かだ。視界にとらえたと思った瞬間に消えて去ってしまう。ほのかで、つかみどころのない光。瞳の表面に映った小さな光る塵、あるいは、自分の網膜に映った光の残像のような、とにかく、今まで見たことのない光であった。
そんな光が、草叢の数か所で、数匹ずつ、戯れつつ明滅しては消え、時折とつぜん飛び立って光の放物線を描いて見せたりする。
おそらく古の人がこれを見た時は、何かの超自然的な現象だと思ったにちがいない。神秘だったにちがいない。
私もカメラ撮影をしていたが、ほとんどの時間は肉眼でその光を探し、追っていた。あちらこちらで散発的に光るその総数を推測するのは難しいが、百匹ぐらいはいただろうか。
乱舞ではなかった。そうではなくて、彼らのひそやかな生の営みを傍らで見させてもらった。そんな蛍見だった。
20170703 蛍 東吾妻町箱島地区 小野上温泉
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箱島地区はJR小野上駅から徒歩20分ほどのところで、宿泊したのは隣駅である小野上温泉駅から徒歩2分の「SUNおのがみ」というホテルである。
ネットで探したのだが、とにかく駅から近いこと。蛍にフラれた際の保険でもあるので、当然露天風呂有りである。
逆に言えばそれ以外あまり考えなしに予約したのだが、着いてみるとこちら公共の宿ということで、料金廉価。ふだんは会社の研修やスポーツの合宿などによく利用されているとのこと。この時期はオフ・シーズンで泊り客が私を入れて4組。一人客は本来泊まれない和室をあてがってもらった。
豪華さはないが清潔で(部屋にある湯沸しポットが自宅で使っているのと同じティファール製品だったのには苦笑。)、フロントの方も、私のわがままを快くきいてくださり、蛍の状況やタクシーの手配なども、早手回しに対応してくださった。
浴場は広く、見晴らしの良い露天風呂もある。
食事は一番質素な(安い)コースを選んだが、土地のものを丁寧に料理してあり、とても心のこもったものに感じた。特に夕食に出た先付の、低温調理したらしい鶏肉をオーリーブオイルやらガーリック・パウダーやらで和えたものや鱒のお造りが旨かった。(仲居さんが何の魚か知らないというので板長にきいてきてもらうと「マスタロウ」だという。おそらくは箱島にも養殖場がある群馬特産のニジマスであるギンヒカリであろう。身が鮮紅色であった。)
蒲団がお煎餅化していた以外はまったく不満のない良宿であった。
翌日。往路と同じコースはつまらないし、乗り換えを最小限にしたいことから、高崎から湘南新宿ラインで新宿へ向かう。二階建てグリーンは乗り心地がよいのでよく利用する。
この群馬から乗るのは初めてだったが、赤羽あたりで埼京線とは異なる路線を走っていることを知り少し驚いた。
都心は相変わらず暑かったが、快適な旅ができた。
来年も蛍を見に行こうかな。
20170703 蛍見 in 小野上温泉
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付記1(現地情報)
①東吾妻町の観光情報より
②群馬県のHPより
付記2
初日の行程は次の通りである。
自宅を昼過ぎに出発。生田、新宿、東京、高崎、新前橋と乗り継ぎ、宿のある小野上温泉駅に16時前に到着。温泉に浸かって夕食をとり、19時にタクシーで宿を出発、15分後に現地に到着。(タクシーの運転手さんが少し道に迷った。)
付記3
箱島地区から宿へ帰るとき、当初は小野上駅から小野上温泉駅への最終電車(21時過ぎ)を利用することを考えていたのだが、タクシーの運転手さんから、「それなら歩いても変わらないよ」と言われて、歩いて帰った。ただ、箱島地区から小野上駅駅までの道筋が分からなかったので少し迷った。役立ったのがグーグル・マップ。タブレットでアクセスすると、地図上に自分の位置を数メートル単位、リアルタイムで表示してくれるので、目的地まで方向・道順を間違えることなく進むことができた。また、街灯はあるもののかなり暗い夜道だったが、タブレットの光が懐中電灯代わりになり、意外な役の立ち方をしてくれた。でも歩いて宿まで小一時間かかったので、良い子はマネしない方がいいだろう。
付記4
箱島地区はもう少し足を伸ばせば箱島湧水が見られるし、ちょっとルートが異なるが榛名湖・榛名山もある。機会があればそのあたりも見てみたいものである。(ちなみ榛名湖も蛍観賞地として紹介されていることがあるが、私が問い合わせたところ、2017年現在、蛍は見られなくなっているとのことだ。)
付記5
蛍をカメラに収めるのは至難の業のようだ。現地で撮影している人の話を聞くと、フォーカスを固定して撮影するのだが、蛍の光に合わせた露光では周囲がノイズだらけになるので、背景は別に撮影して、後で合成するのだそうだ。動画も同様らしく、実際Youtubeなどで見ると、合成でない動画はほとんどない。私の写真・動画も、蛍の光をとらえたものはほんのわずかである。ただ今回は何の工夫もなしにAFで撮るという愚挙を犯しているので(動画の途中でジー、ジーという音が入るのはAFが暗闇の中どこにピントを合わせるか一生懸命考えている音である)、次回からもう少し準備して、蛍の光を撮れるようにしたい。
付記6
写真が読み込みの設定の関係で少し小さめになっています。後ほど大き目のものに差し替える予定。
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