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第三章 [一]を紹介します。
※第三章 (一)では、父親の死と孤独感、
・・・・・医者は父の手を蒲団の中に入れて、静かに頭を下げた。・・・・・・・
「お気の毒です」枕元には長兄夫婦の他に、嫁いだ姉や炭鉱にいる次兄がつめていた.。・・・父は倒れてか
ら三十時間、昏睡状態に陥っていたのだ。眼はつむったままで、枕をすけてやると、大きく息を吸った。それっ
きり、息をしているのかどうかわからなくなった。海彦は夢中で医者までかけつけたのだ。・・・・・・・・・・もともと
あまり語り合わない父子だったが、時々、親類の関係とかどうしたいきさつでで朝鮮に行ったのかとか親父に尋
ねたが、もう訊けないな・・・・・これで親父もおふくろもおれにはいなくなったわけだぜ・・・と父母とのことを回顧
するのである。
こうして海彦は、母につづいて父を失ったその家に、しばらく一人で住むことになった。心細い感じもする。
孤独を楽しめるというよろこびも感じた。・・・・・







次回は、 第三章 [二]を紹介します。