夏来れば/うがひ薬の/病ある歯に沁む朝のうれしかりけり : 石川啄木 『一握の砂』, 1908-1910, 1910
朝朝の/うがひの料の水薬の/罎がつめたき秋となりにけり : 石川啄木 『一握の砂』, 1908-1910, 1910
朝川にうがひに立ちて水際なる秋海棠をうつくしと見し : 伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1904, [1904]
將軍の嗽ひにかしづく手弱女が二人端居に立ちてさむらふ : 伊藤左千夫 『[左千夫全集]』, 1906, [1906]
蝕ばみて鬼灯赤き草むらに朝は嗽ひの水すてにけり : 長塚節 『[長塚節全集]』, 1914, [1914]
嗽ひしてすなはちみれば朝顔の藍また殖えて涼しかりけり : 長塚節 『[長塚節全集]』, 1914, [1914]
此のごろは淺蜊々々と呼ぶ聲もすずしく朝の嗽ひせりけり : 長塚節 『[長塚節全集]』, 1914, [1914]
うがひする井の辺の水の歯にしみる朝なり山は雪をよろへる : 太田水穂 『流鶯』, 1945, 1947
うがひして又やはと思ふ喉もとの頼めぬものをこころとぞいふ : 太田水穂 『双飛燕』, 1947, 1951
九十歳ひそかに誓ふ吾命の明日をぞ祈る朝うがひして : 太田水穂 『双飛燕』, 1950, 1951
山の集会すがしかりける明起きてわれはうがひす鉢の清水に : 北原白秋 『渓流唱』, 0000, 1943
五月空ふかく晴れたる岬の下潮をむすびて嗽ひするかも : 古泉千樫 『靑牛集』, 1918, 1933
梅雨ばれのあしたあかるし湯に居りて嗽ひの水の冷めたきをほりす : 古泉千樫 『靑牛集』, 1919, 1933
この朝を嗽ひしに來て白雪に埋もるる筒井見たりけるかも : 窪田空穂 『土を眺めて』, 1917-1918, 1918
故里の野川の水を手に掬び嗽ひをぞするこのしののめを : 窪田空穂 『土を眺めて』, 1917-1918, 1918
岩間傳ひ音立てて來る秋の水見つつ久しく嗽ひしにけり : 窪田空穂 『さざれ水』, 1932, 1934
嗽ひすと廚に立てば寒き夜を鼠ゐにけりひとつならず二つ : 若山牧水 『くろ土』, 1918, 1921