検索ワード: ラジオ ラヂオ
ヒットした短歌: 83件
米英聯合艦隊撃滅の日の感度爽かな午後のラジオ
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
麗水も陥りたりと報じたるラジオをはりてわれは家いづ
斎藤茂吉 『短歌拾遺』, 1942, [1942]
越天楽春のラジオの昼闌けて四方の山べにかすむ白雲
北原白秋 『牡丹の木』, 1940-1942, 1943
わが潜艦米本土作戦と朝のラジオはつげる、ドアのむかふで――
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
ラジオ受信器の感度あかるく、軍歌りやうりやうひびけばこころあがる
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
再びラジオききつつ思ふ、米航空母艦サラトガの巨体撃沈のさまを
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
(注)サラトガは第二次世界大戦を生き残った。でたらめな戦果は昭和天皇にも奏上され、天皇は戦争末期に「サラトガが沈んだのは、今度で確か4回目だったと思うが」と苦言を呈したといわれる。
朝のラジオのりやうりやうたる起床ラッパきけば幼い心となり
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
われら日の午前午後、たえずラジオきいてゐてこの大きな喜びにあふ
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
うつけ唄歌ふラジオを今日もききてなすこともなき吾をあはれむ
前田夕暮 『歌稿 晩年歌稿』, 1947, [1947]
少女かもラジオにきけば吾が縫ひしパラシュートぞと声呑み哭きぬ : 北原白秋 『牡丹の木』, 1940-1942, 1943
ラヂオもて聞かくかなしも天皇の奉らする御誄言
窪田空穂 『卓上の灯』, 1951, 1955
第五回大詔奉戴日の午後のラジオは告げる豪快無比なる珊瑚海海戦を
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
ゆくりなくラヂオ聲呼び町空に漢口陷落高らかに報ず
窪田空穂 『冬日ざし』, 1938, 1941
獨立を報じてラヂオ嗚り渡れ主都東京に起る聲なし
窪田空穂 『卓上の灯』, 1952, 1955
ドアのむかふで米本土作戦と朝のラジオはいふ、いまおきる、ねてはをられぬ
前田夕暮 『烈風』, 1941, 1943
爭覇戰視力よわきに家籠りラヂオを前に描きつつ疲る
窪田空穂 『冬日ざし』, 1939, 1941
武藏野の春のうぐひす康德の卽位の式のラヂオに混る
与謝野晶子 『いぬあぢさゐ』, 0000, 1933-1934
(注)康德帝は溥儀。満洲国皇帝
双葉山五十三勝しをはんぬラヂオ聲破れ枕とよもす
窪田空穂 『冬日ざし』, 1938, 1941
(注)双葉山はその後も勝ちつづけること69連勝。2022年1月場所終了時点まで最多連勝記録
ラヂオには赤き翼といふ曲の楽すすむなり夜ただ寒きに
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
ラヂオより流れていづる潮さゐかコーラスかなし若人の歌
太田水穂 『流鶯』, 1940, 1947
霜くだる今宵のラヂオおぎろなし心とどろくひと時隔きに
北原白秋 『白南風』, 1926-1933, 1934
卓上のラヂオが立つる人の聲なつかしくして鳴らし聽き入る
窪田空穂 『木草と共に』, 1963, 1964
朝ぐもりラヂオの塔の先わたる小鳥かぎりなしなだれ落ちゆく
北原白秋 『白南風』, 1926-1933, 1934
漢口へ漢口へとぞ直進むニュース傳へてラヂオの止まず
窪田空穂 『冬日ざし』, 1938, 1941
ラヂオもて女皇に告る總督の言の悲しくジャバ今はなし
窪田空穂 『明闇』, 1942, 1945
(注)「ジャバ」はオランダの巡洋艦。この年のスラバヤ沖海戦で帝国海軍重巡洋艦「那智」の雷撃により撃沈。太平洋戦争がはじまるまでは、御大礼特別観艦式に参加するなど日蘭親善に活躍。
オランダ女王ウィルヘルミナは、ナチス・ドイツに本国を占領されロンドンに亡命中。350年支配した東インドも日本軍に奪取される。太平洋戦争後は再び東インドの植民地化を図るも独立戦争に敗れる。
皇帝の鹵薄のひびぎをラヂオ告ぐ他は新京の春風のおと
与謝野晶子 『いぬあぢさゐ』, 0000, 1933-1934
ラヂオの我が祝歌はいち早し子ら合せ歌ふ声ひびくここに
北原白秋 『昭和9年2月1日「短歌研究」3巻2号』, 1934, [1934]
照しばし向ひの森にこだましてラヂオ体操の響くあるのみ
北原白秋 『昭和13年8月1日「多磨」7巻2号』, 1938, [1938]
ラヂオより聞え來る聲はるかなる世よりの物の如くもひびく
窪田空穂 『冬木原』, 1947, 1951
ラヂオはまた明日といふまことにすべては明日の事なりと思ふ
前田夕暮 『夕暮遺歌集』, 1947, 1951
梅雨曇る夜の眞闇の底に起る遠音のラヂオもの狂ほしも
窪田空穂 『鄕愁』, 1935, 1937
夏の鳥朝のラヂオに啼き乱りその山と思ふ滝津瀬鳴りぬ
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
観兵に御立し給ふ天皇をラヂオに寄りてかしこみれてまつる
斎藤茂吉 『のぼり路』, 1940, 1943
我がほかは日の白光にこだましてラヂオ体操の響くあるのみ
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
ラヂオにはメンコン蛙くくみ啼き鳴る瀬のうつつ蛍が飛ぶも
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
霜晴の日あたりぬくむ野の南ラヂオの塔はうち対ひ見ゆ
北原白秋 『白南風』, 1926-1933, 1934
垣ごしに遠音ラヂオの三味線のひきくづれゆく宵の凉しさ
太田水穂 『鷺・鵜』, 1927, 1933
冬山の裾べ淸しみわが行けば小さき家ありてラヂオ鳴り出づ
窪田空穂 『明闇』, 1943, 1945
ラヂオ研究所灯を消しにけりうしろ立つ照明迅く鉄塔は見ゆ
北原白秋 『白南風』, 1926-1933, 1934
夕待たず我が眼くらきに聴きほくる早慶戦もラヂオに止みぬ
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
ラヂオ戦報刻一刻にあふれくるなみだはしばし流るるにまかす
太田水穂 『螺鈿』, 1938, 1940
華やぎて隣のラヂオきこえしがこなた鳴らしてたちまち消えぬ
北原白秋 『橡』, 1935-1937, 1943
ラヂオの我が祝歌はいち早し子らが歌ふこゑのひびき来ここに
北原白秋 『白南風』, 1926-1933, 1934
この夜明こごえ死にたる子らありとラヂオは洩らし寒のきびしき
北原白秋 『昭和9年3月1日「香蘭」12巻3号』, 1934, [1934]
犬の声ラヂオの中に群れ起り外に吠え継ぎて月の夜ふけぬ
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
街上は春の日かげとなりにけりうつけ唄歌ふラヂオは聞ゆ
前田夕暮 『夕暮遺歌集』, 1947, 1951
我がみ冬しろき屛風に引きかけてラヂオの線の影も凍てぬる
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
感冒引きて觀に行き難しラヂオもて胸に描きつつ拍手を送らむ
窪田空穂 『さざれ水』, 1933, 1934
憂へつつ言にはいはず漏らさじと日日のラヂオを我も聞けるを
窪田空穂 『冬木原』, 1944, 1951
とほくにて戦報をいふラヂオありしづかにもえて音なきもみぢ
太田水穂 『螺鈿』, 1937, 1940
華やぎて隣のラヂオきこえしがこなた鳴りいでてたちまち消えぬ
北原白秋 『昭和11年10月1日「多磨」3巻4号』, 1936, [1936]
霜の凝り堪へてこの夜もすわりたりラヂオのニユース声せまりたり
北原白秋 『白南風』, 1926-1933, 1934
藤といへば早やも夏場所夕こめて鉄傘の揺ぎラヂオとよもす
北原白秋 『黒檜』, 1937-1940, 1940
空を飛ぶ敵機の音をききわくとラヂオはこよひねもころにせり
斎藤茂吉 『短歌拾遺』, 1945, [1945]
ラヂオの尺八の音も絶えにけり梅もどきよ夜はまつぶさに観む
北原白秋 『昭和2年3月1日「近代風景」2巻3号「白秋創作月録』, 1927, [1927]
霜の夜のラヂオのニユースはてにけり灯は明うしていたくしづけさ
北原白秋 『白南風』, 1926-1933, 1934
あんなこともあつたつけとラヂオ歌謡は歌ふあはれなる戦後派のうつけ歌
前田夕暮 『夕暮遺歌集』, 1950, 1951
きこえくるラヂオドラマの女の声くるしむ獣のこゑよりはかな
斎藤茂吉 『のぼり路』, 1940, 1943