木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『ロリータ』

2013-10-16 14:23:42 | 日記


「ロリータ」ナボコフ


あらゆる意味で騒がしいロリータ・カルチャー。
定着してたり、定着させちゃいけなかったり。
ま、色々ですけど。
とりあえず諸々は置いといて~。と。

けっこう分厚い書物。
いったい中で何が行われとるんか?
色々と想像。
一瞬、サド侯爵の姿(というかジェフリー・ラッシュ)が脳裏をかすめる。

しかして。
フツーに楽しめる逃亡劇。
ロードムービー的な部分と、復讐譚。
で、中年オヤジの熱烈愛。
たまたま相手が少女だったのが、運のツキ。
人はそれを、変態とよぶ─。

ヘンタイには違いないが、むしろ滑稽さが強い。
ロリータを愛でて、悶々とするさま。
恋におちたオヤジの心高ぶる姿。
白いソックスに興奮し過ぎやろ。
こまごまとしたロリータ賛歌が、可笑しい。
そこかよ!と思わずツッコミいれつつ。

ひとりで勝手に盛り上がってる中年オヤジ。
不器用なはずのオッさんの、悪巧みが激しいのな。
偶然が重なり、もはや止めるものがなくなったため。
オヤジ暴走。
で、犯罪の領域に突入。
やってることは、卑猥ですけど。
描写に猥褻さはなし。
ちなみに、ロリータもそこそこのバッド・ガール。

そんなこんなで、ふたりの逃亡劇が始まるわけですけど。
結局、オヤジの逃避行であって、ロリータに選択肢がない。
保護するはずの人が、略奪してる現実。
その後、“ロリータの可能性を奪った”とオッさん自ら反省してますけど。
もの凄い的確な反省ぶりにも関わらず、今さら遅いっすよぉ。

始めから終わりまで事件。
ミステリ分野に片脚つっこんでる偏愛小説。
編集者に、“こんな変態の告白文読めるか!”とさんざんつき返されたという本書。
たしかに。
中年オヤジの熱烈モンモンぶりにうんざりする人は多かろう。

しかし。
もはや少女ではなくなったロリータとの再会。
それでも、“わたしのロリータ”であり。
愛情ほとばしるオッさんの様子が、泣ける。
むしろ恋愛小説か?

ナボコフの文章力と、詩人魂によって紡がれる。
一方的な愛の物語。


全ての変態よ、詩人たれ!
変態→ポエマー化計画を推奨したくなる一冊。

「ロリータ」ナボコフ

『妻を帽子とまちがえた男』

2013-10-04 12:47:12 | 日記


「妻を帽子とまちがえた男」オリヴァー・サックス


脳神経科医のサックス博士が綴る、
不思議な症状、それぞれの人生。
患者に穏やかに寄り添う博士の実録もの。


あららぁ。

感想&結論はひとつ──
“何でも起こりうる”
ある意味、ため息もの。


妻と帽子は間違えないよね、ふつう。
状況が見えん、想像できん。。。

眼で見る→見たものを判断するという一連の反応が上手くいかなくなり。
人の顔が把握できなかったり、靴と自分の足の区別がつかなかったり。
べつに視力に問題がある訳ではないという不思議。
見ているものを認識するには、記憶が大事なんやね。
部屋中見回して、いかに多くのものを一度に判断してることか。
一瞬で記憶に照らし合わせて、理解する機能。
おお、人間てスゴいな。


そのほかには。
自分の身体を認識できない症状。
ベッドで寝てたら、知らない人の足がぁ~!って
もはやホラー映画以外の何ものでもないがな。
その足を放り投げたら、自分もベッドから落ちた。。。
え?自分の足だったの?
って、衝撃の事実。
やっぱり、ホラーやないか。


記憶が止まってしまい、新しいことは覚えられない悲劇。
兄に会っても。
こんな歳とった奴知らない、兄は若いはずだ!
悲痛なエピソードの数々。

記憶喪失。
記憶は数秒も続かない。
──が、しゃべりまくる陽気な男。
個を持たない、よりどころがないという底なし状態。


頭の中から音楽が聴こえてくる。
ってもしかして、楽しかったりするんか?
→うっとうしいだけです。
本人曰く、「(その歌が)大嫌いになりました」

脳のある箇所を刺激すると、曲が聴こえてくる。
って何かの冗談かと思いきや、事実だとは。
しかも別に好きだった曲でもないときた。
脳みそって、どんだけ記憶しとんじゃー。
ご苦労さま、お世話さま。
脳みそ、さまさま。


突然、犬並みの臭覚に目覚めた男。
臭いをかぎながらだと、ニューヨークの街を迷わずに歩ける。
って、それ、なに自慢~?


IQは六十、計算は出来ない。
けど──。
落ちたマッチの数(3桁)は瞬時に分かるし、因数分解も得意。
なんせ、数字が見えるもんで。
二十桁の素数をやりとりする双子。

『レインマン』(1988年)にもマッチのシーンあったよーな。
最近では、『メランコリア』(2011年)のキルステン・ダンスト。
一瞬で数が分かるというよなシーンがあった気が。


説明のつかない様々な症状。
たとえ脳や、神経に障害があろうとも。
大切なのは心の質である──。

驚くべき人生の数々と、
博士の人柄が伝わってくる。
人間が人間について書いた本。


「妻を帽子とまちがえた男」オリヴァー・サックス

《キリング・ショット》

2013-09-30 23:43:21 | 日記


『キリング・ショット』(2011年)R15+

こーれーは。。。
みごとに浮かばれん映画やないか。
とりあえず、無かった事にしよっか?
作った甲斐なし。
ただし、サントラだけは良さげ。
唯一の救いにもかかわらず、サントラ発売なし。。。
これは追い込まれましたな。
出口ないがな。

タランティーノやガイ・リッチーまでの道のりは遠いぞぉ。

マフィアの仕事を請け負う三人組が向かった先は…
郊外のさびれたダイナー。
簡単な仕事のはずだったが、どうも様子がおかしい。。。
みんなして銃を振り回すアクションなんだけどー


力量が足らんというか、撮影が足らんと思うぞ。
セクシー三人娘の過去の仕事ぶりのシーンが無いしぃ。
しくじった件も、どんだけーなのかシーン無いしぃ。
テス以外のふたりの過去のシーン無いしぃ。

肝心のダイナーで残り三人の睨み合いシーンがダラダラしてるのが致命的。
どんだけ入り組んでんのかと思いきや、肩透かし。

ま。
ツマラナ~イ。と、ひとことで片付けられる手間いらず。
しかして癪に障るのが。
もしかしてこれから面白くなるんか?と期待させるシーンが所々に在るとこ。
が、まったく次へ続かず。盛り上がらず。
こうなると、もう怨みますぅー。
梶芽衣子よんできますぅー。

ハショられた感ただよう挙句に、
わざわざ要れたシーンが個性を発揮するでもなく。
ここぞという時にダレるお粗末さ。
で、ミスキャスト違う?

フォレスト・ウィッテカーは、この役には重々しすぎるだろー。
ブルース・ウィリスは、要らんでしょう、この場合。
あぁ、ブルースよ、おぉウィリスよ、ラクな仕事してんなー。


この手の題材でカタルシスが無いのは致命的。
そしてキャラクターの魅力が描かれない──
切な~い。

セクシー三人娘なんか、若手女優揃えといて。
もったいなー。
泣くしかないべ。

シーン三割増しで、再編集を求めたくなるイタ~い一本。

で、あまりにもオいたわしい仕上がりゆえ。。

~勝手にリベンジ企画~

劇中でウィリス氏の歌がかかってたんで。
検索して聴いてみた。

おほっ。
カラオケか?
ついでに、最近のブルース・ウィリス・ブルースバンドも聴いてみたら。
これは、イケとるわ。
おっさんパワー炸裂。
若気のいたり?あっての今らしい。

で、ついでのついでに。
ラッセル・クロウのバンド→もっと迫力あるか思うてた。
ケヴィン・コスナーのバンド→ま、普通。
ドン・ジョンソン→80年代臭(しゅう)がぁ~。
デヴィッド・ハッセルホフ→。。。
つうか、嫌いじゃない自分がおるわ、ホフ様。
何がスゴイって、チーム・八ッセルホフの作るビデオが。
えもいわれぬセンス。
呪いのビデオ違う?
ある意味な。
免疫が必要かい?
ま、パニクるな。


『キリング・ショット』(2011年)R15+
監督・脚本:アーロン・ハーヴィー、音楽監修:ジョー・パガネッリ
出演:フォレスト・ウィッテカー、ブルース・ウィリス、マリン・アッカーマン、 ニッキー・リード 、
デボラ・アン・ウォール、 シェー・ウィガム

《危険なメソッド》

2013-09-28 23:22:05 | 日記


『危険なメソッド』(2011年イギリス/ドイツ/カナダ/スイス) PG12

おおーい。
キーラが熱演というか、力演(りきえん)状態。
しかもなんか、見てて気まずい感じだべ。
助けて。


精神科医ユングと、夢判断なんぞでお馴染みのフロイト。
ふたりの友情と衝突。
ユングの患者であり、愛人になり、その後自らも精神分析家となるザビーナ。
なんつー人生!な三人が織り成す人間関係。
思考、思想、経験、環境、性格、嗜好。
的確に選ばれたエピソードの数々で、人物を浮き彫りにする。


ユングとフロイトの性格を見事にとらえてます。
(って、全然知らないですけど。この二人のこと。)
夢中で意見を交換しあう姿。
それぞれが違和感を感じる瞬間。
裕福なユングに、フロイトが苦い思いをしたり。
なんだか無頓着で、限りなく無神経に近いユング。
権威ある姿勢を崩さず、頑固なフロイト。
方向性の違いで解散するバンドなみに意見の相違をみるふたり。
そして、決定的な決別。


人間がいかに不完全な生き物であるか──。
を思い知らされる作品。
そして、その事実に思わず魅力を感じてしまう映画。
納得の人間喜劇であり、充実の人間悲劇。

ムチ打たれるドMのザビーヌ。
(実際に心に刻まれるのは、ムチ打たれるキーラの姿)
真剣な表情でムチ打つユング。
(心に残るのは、とりあえずSHAMEは措いといて、ムチ打つマイケル・ファスベンダーの姿)
違う意味で楽しんでる自分を発見できるさぁー。
しか~し。
なんか官能だけが存在しとらん不思議さ。
反射的な感じが強く、恍惚感は不在。
これってワザと?
演技の問題?


このふたりの、恋愛が軸ではあるが。
観客をひっぱっていくのは、むしろユングとフロイトの関係。
これがまた、興味がつきんのさ。
原作戯曲がしっかりしてるのか?迷いのないストーリーテリングに引き込まれるし。
建物や小道具やらがみごとな映像も魅力のひとつ。
クローネンバーグ監督が充実の仕事ぶり。
そして、やっぱりヴィゴ・モーテンセンはいい役者なのさ。
ユングの妻役のサラ・ガドンが絵画みたいな美しさと存在感を発揮。

観終わった後にも、ジワジワと興味深さがこみ上げてきて。
人間て面白いー、と妙に興奮する映画。


『危険なメソッド』(2011年イギリス/ドイツ/カナダ/スイス) PG12
監督:デヴィッド・クローネンバーグ、原作:ジョン・カー、原作戯曲・脚本:クリストファー・ハンプトン、
撮影:ピーター・サシツキー、プロダクションデザイン:ジェームズ・マクエイティア
出演:キーラ・ナイトレイ、ヴィゴ・モーテンセン、マイケル・ファスベンダー、サラ・ガドン、ヴァンサン・カッセル

『キャプテン・フューチャー 月世界の無法者』

2013-08-29 13:00:25 | 日記
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「キャプテン・フューチャー 月世界の無法者」エドモンド・ハミルトン

キャプテン・フューチャー?
誰やねん、それ。

あまりにステキな表紙イラスト。
なんやの、これ?

謎が深まるものの、
目次の前ページに翻訳者からのおすすめの文言が…
前作読んでからこっち読んだがええよ。とのこと。
。。。
ん、まぁ、そのうちな。

ちなみに既刊多いな。
いきなり、10話目て。
手にとってもーたから、しゃーないな。

宇宙船コメット号やら登場人物がイラスト入りで解説。
えらい親切。

で、その紹介文によると。

   キャプテン・フューチャー
幼少に両親を悪漢に殺され、以後サイモン、グラッグ、オットーの三人に育てられた天涯の孤児。
成人するや、宇宙の正義と平和のため自らキャプテン・フューチャーと名乗り、敢然と悪に挑戦する
赤髪の若き天才科学者。本名カーティス・ニュートン。

ほ、、、ほほう。。。

で、そのサイモン、グラッグ、オットーを人呼んでフューチャーメンというらしい。
ちなみに、サイモンは死に際に脳を特殊なケースに収めた<生きている脳>。
グラッグは、身長7フィートの全鋼鉄製ロボット。
オットーは、白肌緑眼のプラスチック製合成アンドロイド。

うっふ~ん。ついて行けるか・し・らぁ?

あの、お住まいは?
月です。
…。うん、そんな気がしてました。


水星人を救うミッションから、やっとこさ月へ帰ってきたフューチャーメンご一行。
ところが、月の資源の採掘が進行中。
この資源は、将来必要になる為、存在を隠してきたものだった。
採掘を中止させるべく太陽系政府首席に会いに地球へ乗り込むも。
殺人の濡れ衣をきせられ、お尋ね者になってしまう。


で、色々ムチャして、解決。

要約し過ぎやろ。


呼吸をしないという月犬が登場したり、
生きるテンポが百分の一という惑星エロスに立ち寄ったり。
月の底の底に住む巨大ムカデに襲われたり、
死滅したはずの月人を発見したり。


アンドロイドのしゃべりっぷりが、
“あたしゃ、もう、二度と系外へ出るのはごめんですぜ!”
どんだけいなせなの?
つーか江戸っ子か?

生きている脳は、キャプテン・フューチャーを
“坊や”呼ばわり。

ロボットはスポンジ状の金属脳を持つ。
と想像を絶する説明ぶり。


ツッコミどこが満載なのも楽しいんだけど。
ちゃんと冒険活劇になってて、アクション豊富。
あっちやこっちで問題発生。
あれやらこれやら解決せんとあかんわ。
という事で、展開も速く、ちっともあきない読ませっぷり。
大げさな感じや、超人的な大ワザが可笑しいし。
おそらくシリーズのお約束的だろう部分が、なんとなく伝わってくる。


日本ではアニメ化もされてたり。と、
確実に、誰かのヒーローだったんだろう事もうなずけますな。
この作家に影響を受けたSFも多いんだろうなぁ。

巻末にコメット号のマニュアル(一部)を収録。
マニア心をくすぐる作戦か?

ちなみに原著は1942年に執筆。
おおっ、半世紀以上前!!


《幸せの行方...》

2013-08-28 23:25:33 | 日記


『幸せの行方...』(2010年)

このタイトル!
まさかDVものって思わんて。

しかも実際の事件を元に描くという戦慄もの。
ちなみにビミョウに人物の名前は変えてあります。

ニューヨークで不動産業を営む裕福な一族。
長男デイビッドは、平凡な家庭に育ったケイティと格差結婚。
片田舎で自然食品の店を営み、明るい未来を夢見るふたり。
しかし、家業を手伝うべくマンハッタンに戻ることに。
不動産業が肌に合わないデイビッド。
あらゆる事にイライラし、残酷さ、凶暴性が目立ちはじめる…


幼い頃に経験した母の自殺。
父の傲慢さと圧力。
弟の方が仕事が出来るという事実。
妻ケイティが自らの夢を実現すべく勉強に励んでいること。

‘充実’、や‘幸せ’を目の当たりにしたとき。
自分だけ取り残されていると感じ、妬みと憎悪でいっぱいに。
度重なる暴力行為。
別れたくても、離婚すると学費が払えない状態に陥るケイティ。
そしてある日、ケイティは失踪する──。


実際の事件では、
彼女は1982年から今だに行方不明のまま。
2000年、御曹司の知り合いの女性が殺されているのが見つかる。
2001年、御曹司が暮らしていたアパートの住人のバラバラ死体が見つかる。
御曹司は行方をくらますものの、万引きで捕まり、殺人で起訴。
正当防衛が認められ、刑期も5年以下で終了。
その後、莫大な資産のもと優雅に暮らす日々。

なんなのー、これ~。


映画は、証言や記録を元に経緯を丁寧に描いてます。
かなり納得のいく真相になってます。
あくまで、ひとつの可能性としての真相ですけど。
まぁ、御曹司一族は色々と否定してますが。


現実の事件、明らかにされた事実、フィクションとしての推定。
役者の演技、映像など全て上手くかみ合ってるものの。
未解決という不安要素と暴力が重く、重くのしかかってくるため。
映画自体は良く出来てても、とてもいい作品とは言いがたし。
観ないよりは、観てこの事件の存在を知って良かった気もするけど。
あんまり人に薦めたくはならん部類の映画。
ある意味、ほんものの戦慄ムービー。


不気味なのが、一時期、御曹司が変装(女装)して暮らしてたこと。
だって逆に目立つでしょうが?!
この映画を見て、気に入ったとか言ってること。
訳わからん。
この異様さ。
恐え~、怖え~、冷ぇえ~。


『幸せの行方...』(2010年)
監督:アンドリュー・ジャレッキー、脚本:マーカス・ヒンチー、マーク・スマーリング
出演:ライアン・ゴズリング、キルステン・ダンスト、フランク・ランジェラ、
フィリップ・ベイカー・ホール、クリステン・ウィグ

『愛のゆくえ』

2013-08-27 12:45:26 | 日記


「愛のゆくえ」ブローティガン

ひそかに書き上げた本を保管してくれる、奇妙な図書館。
たとえ深夜3時に原稿を携えてきても快く迎えてくれる。
この図書館に住み込み、全ての作業をこなす三十一歳の主人公。
連日、子供からご老体まで様々な人々が自作の本を持ち込んでくる。
そんなある日、ヴァイダという美しい娘が、書き上げた本を持参してくる。


顔はボッティチェリ、身体はプレイメイト。
余りにも完璧なボディに違和感を感じ、自分のものとは思えない──。
って、それ自慢じゃなくて?
どこへ行っても、男の視線を集めてしまい夢中にさせてしまう──。
。。。ホントに自慢じゃない?
男たちの欲望と絶望にほとほと嫌気がさして──。
自慢、違うの?

思わず何度も確認したくなる悩み。
もうそういう設定なので、
おとなしく受け入れるしかないんですねぇ、読者としては。

まぁ、読み進むと判明しますが。
迫力ボディがトラブルの元といった感じ。


3年間も図書館に引きこもって暮らす主人公。
とはいえ、入れ替わり立ち代り本持参する人には対応してるので。
引きこもりサービス業か?

ヴァイダに気に入られ、その日のうちに恋人同士に。

どんだけ夢見がちな話や?
と思う間もなく、ヴァイダの妊娠が発覚。
で、原題の The Abortionすなわに中絶に至る。

急転直下。
ドロドロ覚悟。

どっこい。
まったくもって、冷静に現実的に行動するふたり。

そして、ふたりを助けてくれるフォスター。
ちなみに彼は、図書館に入りきらない本を洞窟に持っていって保管する仕事を担当。

それぞれが、苦手なことがあり現実から逃げかかっているも。
この三人の、ほのぼのとした協力関係。


若干の愛おしさを感じさせる風変わりさ。
素直さと控えめな感じが充満。
冷静さとロマンチックさの間で漂う文章。


メキシコ、ティファナまでのふたりの堕胎旅行。
エグい描写無し。
なのに、リアル。

想像力というよりも、
観察力と現実的な思いやりで描かれた小説。

後味も悪くなし。
直面した問題に向き合い、結果的には絆を深める三人。
前向きに生きていく姿は、読者的にはホッとするものの。
当時の時代の雰囲気を知らないと、いまいちピンとこない弱点あり。


“わたしはこの最初のキスをどんな素振りにも、あるいは肉欲的な素振りにも結びつけたくなかった

決心

 女の子の上半身からはじめるのか、下半身からはじめるのかを決めるのは難しいことだ。”



 献辞  

フランク

なかに入って──
 小説を読んでいてくれ──
 それは居間の
 テーブルの上にある。
ぼくは二時間
 ほどで
 戻って来る

       リチャード


「愛のゆくえ」リチャード・ブローティガン

《女王陛下のダイナマイト》

2013-08-22 20:48:36 | 日記


『女王陛下のダイナマイト』(1966年仏)

このタイトル!
これはど~考えてもスパイものと思うって。

カタギになってボートショップを経営するアントワーヌ。
かつての銀行強盗仲間が、高飛びさせてくれと突然の訪問。
あげくに、費用を払いたいがノミ屋に巻き上げられ文無し、と告白。
4万フランを取り返すべく、ノミ屋ミシャロンを探すアントワーヌだったが…


荒唐無稽、ギャグ盛りだくさん、平手打ち連発のおふざけ映画。
そして。
キャラクターが秀逸。
ノミ屋で詐欺師のミシャロンのダメっぷり。
(愛想をつかした妻曰く、「全部嫌い、あのロクデナシ」)
アントワーヌの超短気なキレッぷり。
何事にも動じない友人のジェフ。
金塊を狙う、大佐と呼ばれる謎のイギリス紳士。

どこまでもとぼけた味わいで展開されるダイナマイト合戦。
セリフが可笑しいし、もはやシュールな領域に突入。

大佐率いる、ブレザーにタイ、キャップ姿の‘それ、学校の制服。。。軍団’。
お揃いの赤いバイクで出陣。
しかもギターをかき鳴らす演出あり。
奇声を発しながらの痙攣ダンス?に60年代カルチャーっていったい…と感慨深い。


誤解が有り~の、裏切りが有り~の、復讐に至る展開。
ことあるごとに平手打ちされるミシャロンの憎めなさがあっぱれ。
アントワーヌ役のリノ・ヴァンチュラの、男気あふれる存在感。
極端な二人に挟まれて、ジェフがひとり大人な反応をみせる。
この三人組の相性がバツグン。

でもって、ミレーユ・ダルクが華を添える。


オースティン・パワーズほどの徹底したポップ感は無いものの、
独特の滋味あふれる、ドタバタと言っても過言ではない爆破コメディ。
このバカバカしさ、作ってくれてサンキュ!な一本。

ちなみに、陸橋で立ち往生するシーンは、ちょっとスゴイ。
CGとか無い時代だし、これは驚いた。

英語タイトル Let's Not Get Angry が原題に近いらしい。
怒らないようにしようぜ、ってLet'sなのがミソ。
ステキに激オコな大人たちによるGoGoダイナマイト大作戦。


『女王陛下のダイナマイト』(1966年仏)
監督:ジョルジュ・ロートネル、脚本:マルセル・ジュリアン、ジャン・マルサン、ジョルジュ・ロートネル、
原作:ミシェル・オーディアール、音楽:ベルナール・ジェラール
出演:リノ・ヴァンチュラ、ミレーユ・ダルク、ジャン・ルフェーブル、ミシェル・コンスタンタン、トミー・デュガン

《ザ・マスター》

2013-08-21 13:15:49 | 日記


『ザ・マスター』(2012年米) R15+

あまりの猛暑に、思考が停止。
読書も映画もボワーンと大雑把に受け止める日々。
感想、無い事もないんだども、
文章にする気力なし、まとめる能力なし。。。
あらかた暑さのせいにしつつ。


この映画がまた、消化すんのに時間かかること。
って私だけか?


大戦が終わり、水兵としての任務を終えたフレディ。
軍によるおざなりなフォローを受け、普通の生活に戻るが。
自分に対する不安と、世間に対する不満、未来に対する不信。
虚脱と不安定な精神ゆえに、感情をコントロールできない。
落ちぶれ、逃れた先が…
たまたま新興宗教団体が借りていたクルーズ船だった──


精神を向上させる為、根拠のない試練を課される。
要するに、追い詰めて何かを見出させようとする試み。
そんなもんに付き合ってられっか!と思うところ。
が、フレディは手ごたえを感じ言われるままに課題に取り組む。

まぁ、別にこういうセラピー的なこと自体が悪い訳じゃなく。
問題なのは、答えが教義の中からしか探せないこと。
そこ以外には、答えが無いと信じさせること。
この目的が、はなはだよろしくない。

試練をクリアするごとに、褒められりゃ、そりゃ嬉しいわな。
次のステージにいける、とか言われたら成長した気になるわな。
ってある意味、褒め育て?

まぁ、そうなんだけど。実際は育ってないのが問題。
狭~くイビツに固められてるという事実。
いや、ホント早めに気づいてくれや。
頼むーといったところ。


しか~し。
ホントにこんなんでええんか?踊らされてる気がする、と頭をかすめたとこで。
答えにたどり着けないの?次のステージ行けないの?
それは、あなたの努力が足りないからです。
あなたにやる気が無いからです。

な、何このスゴイ責められてる感!
おっと、これは自己嫌悪。

ここが分かれ目かいな?
マスターと教団にすがりついて、自分の思考を放棄するか。
こいつらかなりヤバイ、とトンズラするか。
(ちなみに、ここで体力と気力を無視して頑張っちゃうと、
ブラック企業の犠牲になります。え?違う話?)

で、この映画の悩みどころのひとつ。
マスターの家族。
まず、再婚した嫁の怖さ。
信念と野望、有り過ぎ。

前妻との間に出来た息子と娘。
教団を生活の糧として割り切った様子。
状況と立場を利用しつつ、親の顔色を伺い演じる日々。

うわ~、一緒に居たくねぇー。
な家族状態。
実際、フレディはマスターの妻が苦手だし。
ある意味、軽んじている感さえある。
娘に誘惑され、まんざらでもない。
息子の軽口にキレる。

…フレディとも一緒に居たくねぇ。
そう、これもこの映画の悩みどころ。
性的な妄想でいっぱい、突然、キレる。
違法な高濃度アルコール飲料をせっせと作る。
(というか、燃料だね、それ。)
このフレディの病みっぷり。


この映画で描かれる一番の悲劇は。
“何故、友情ではいけなかったのか?”
のひとことに尽きる気が。
マスターとフレディの間には、確かに絆が在る。
なのに、主従関係しか許されない事実。

マスターが聴衆を前に行う演説。
ん?これは完全に営業だろ。
好かれようとして媚びてんな。

傍に居る事で見えるアラに、
どうしても冷めていくフレディ。
割り切ってついて行くか、盲目的に従うか。
結局どちらも出来ないのは、
幸か不幸か?


含みのある脚本、異様な雰囲気をかもしだす演技。
声高に糾弾せず、登場人物を描く事で新興宗教の姿を写し取る。
どこまでも不気味な味わいの一本。


『ザ・マスター』(2012年米) R15+
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン、撮影:ミハイ・マライメア・Jr、音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、 ローラ・ダーン


《天使の分け前》

2013-07-11 20:09:10 | 日記


『天使の分け前』 (2012年)

キルト野郎が地味~に完全犯罪に挑む!
『エリックを探して』 (2009年)がA面だとしたら、
本作はB面といったところ。
ってiTunes世代には通じんな、この表現。

冒頭の駅のホームでのシーン。
まさか、こいつが主要キャラ?
ごっつイケてないんすけど?

続く裁判所でのシーン。
余りにもリアルなショボさに、まさか主役級の人達だと思わず。
危うく見過ごすとこ。

さすがケン・ローチ監督。
超自然体な庶民(この場合は‘恵み多からず派なひとびと’)の姿に愕然。


軽犯罪で社会奉仕を命じられた、なんとも垢抜けない面々。
指導員のおっさんの趣味がウイスキーだったもんで。
蒸溜所ツアーに連れて行ってもらう。
なんと、メンバーの一人、ロビーのテイスティングの才能が開花。
人生の決断を迫られていたロビーは俄然やる気を出し始め─

家族ぐるみの暴力の連鎖から逃れるため。
未来の無い地元から彼女と子供を守るため。
一発逆転の大勝負…とゆーか大泥棒を企てる。
超頼りない仲間を引き連れ、はるばる樽を目指す。
えぇ、キルトはいて!徒歩!と、バスで!


どこまでもひそかに、ジミに、実行される犯罪。
華麗にぶら下がったり、カッチョいいメカも無し。
ハリウッド作品と違うからな。
ワザワザ誰も盛り上げてくれんのさ。

とは言え、それなりにハラハラする事態に。
これがまた、上手いこと最後の逆転に結びつくという無駄の無さ。


目的意識の無い生き方を責めるでもなく。
世の中が悪い(決して良いとは言えたもんじゃないけども)と断罪するでもなく。
学べる人と学べない人、時間がかかる人、それぞれ。
ぬけてるからって、自分を理解してない訳じゃないってこと。
パブで飲んじゃおうぜ!の一言に、
こいつらなんも学んどらんな!と思いつつ、なんとなく嬉しくなる今日このごろ。
それぞれ、生きろ。
それなりに生きろ。
って、結局応援しちまってるしな。


被害者と加害者が面会するシーンは秀逸。
ロビー役のポール・ブラニガンの瞳の美しさと併せて、
胸に迫るものあり。
相当辛いが、意義深い。
なんかこのシーンだけでも、観た甲斐があったような気がする。
気のせいか?

あ、そうそう。
一箇所、気持ちわる~い吐き気をもよおすシーンあり。
これ、カンベンな。
ご免こうむる。


やっと冷めかかった‘プロクレイマーズ・500マイルズ熱’が、思いっきしぶり返しました。
スコットランドが舞台だし、挿入歌に使われるのは驚かんが。
映画館でガンガンかかってた為、落ち着きを失う。
帰宅後、さっそくリピート再生。。。


『天使の分け前』 (2012年)
監督:ケン・ローチ、脚本:ポール・ラヴァーティ
出演:ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショウ、ガリー・メイトランド、ウィリアム・ルアン、ジャスミン・リギンズ、
ロジャー・アラム、シヴォーン・ライリー、チャーリー・マクリーン