「白鯨」メルヴィル
しょっぱなの鯨に関する抜粋で、すでに発狂寸前に追い込まれる読書体験。
読もうとする努力を、モーレツに必要とする本。
発売当時、売れなかったというのも納得。
鯨に関する知識を総動員するも、
勘違いだったり、古い知識だったり、こじつけ解釈だったりが混入。
なんのこっちゃ?な本文と訳注を併せて読み進むと、何が何やら。
カオ~ス!!
そもそも、船に関する基本的な用語に馴染みがないという致命的なハンデ。
言葉から映像を想像するのが苦しい。
船ったって、ブラックパール号ぐらいしか思いだせんぞ。
お粗末さまな知識で浮かび上がったボンヤリとした船の姿に、
メルヴィルの繰出す有り余る詳細説明。
更に神話やら宗教的、哲学的な記述の多さ。
もちろん、ついていけません。
柱の上で1年ぐらいは考えにふけらないとダメでしょうねぇ。
瞑想者メルヴィルには、追いつけません。
物語部分(宿やら乗組員の話)はさすがに面白いが、
気が付いたら、また説明やら解説に戻っているという─
ああ、無常。。。
メルヴィルの飴とムチぶりに翻弄されるがまま。
鯨=自然に振り回される乗組員状態。
詩的な散文にポエマーぶりを発揮するかと思いきや、
独白やらがチラホラと現れ。
ん?お芝居?戯曲かよ?
メルヴィル氏の知識と思索とテクニックを詰め込んだ船?本?
やっぱ船か?に、船酔い必至。
そして。
エイハブ船長、なかなか出てこないのな。
文学史上に燦然と輝く登場人物。
上手いこと小出しにされ、じらされるなぁ。。。
白鯨に片脚をもがれて、復讐心に燃えるのは分かる。
ただ、片脚を失ったからなのか、化け物のような白い鯨だったからなのか、
鯨に悪意を感じたからなのか、迷うところ。
ま、結局全部ひっくるめてなんでしょーけど。
憎しみを助長するのは、あっという間ですけども、
何が発端というか、一番の原因は何かは興味あるところ。
クライマックスの対決も引っ張るだけ引っ張られ─。
というか。
残り少ないページ数に、
どう盛り上げるつもりじゃ?と、か~な~り不安になりつつ読む。
って終わっちゃったよ。
さんざ説明しておいて、あれだけ色々つき合わせておいて…
手早い終わらせぶり、手短な文章に愕然。
飴とムチの行き着く先は、酢昆布でしたかぁ~。
不思議な甘みと酸っぱさで読了。。。
つーか、ストーリー部分だけ残したら、
確実に中篇小説になる本作。
心底腹立たしい説明部分を削りたい誘惑にかられるも。
明らかに、このクドクド説明文が無いと、成り立たない。
これだけは理解出来ました。
鯨に魅せられ、執着し、果てる。
愛と憎しみはひとつ、というギリシャ悲劇そのまま。
復讐というか、征服欲だな。これって。。。