ウエディングドレスの試着を終えた後、ユジンはあらためて春川に向かった。先ほどミニョンに会って、ただならぬものを感じて、やはりチュンサンの生徒記録を確認したくなったのだった。ユジンは難しい顔をしてバスの中から外の景色を眺めていた。
そのころ、ユジンの実家では、母親のギョンヒが、サンヒョクの父のジヌと一緒にお茶を飲んでいた。ジヌは体調が悪いギョンヒを案じて、一人で春川を訪れたのだった。しかし、妻のチヨンはユジンたちにあまり良い感情を抱いていないため、来てはいなかった。ジヌは懐かしそうに言った。
「サンヒョクとユジンの結婚式をヒョンス(ユジンの亡き父親)に見てほしかったな。」
「ええ、、、あの人が帰国したのはご存じでしょう?」
「ああ、カンミヒ(チュンサンの母親)のことですか?、、、1度会いました」
「そうでしたか、、、。」
二人の間に気まずい雰囲気が流れ、無言のまま時が過ぎた。するとそこにユジンが帰ってきた。
ユジンはそこにジヌがいることに、たいそう驚いていたが、もう辞去するというジヌを、そのまま外まで送っていった。ジヌは「お義父さま」と呼ぶユジンをまぶしそうに見つめていた。
「君にお義父様と呼ばれるなんて、うちの嫁になるなんて、とてもうれしいよ。君のお父さんと僕、そしてもうひとり、、、ちょうど君たちのようだった。」
「私とサンヒョクと?」
「そう、もう一人、死んだチュンサンみたいな関係だった、、、、」
ユジンの顔が急に曇った。ジヌはそれには気が付かずに、話題を変えた。
「そうだ、あのスキー場の工事で一緒だった責任者の人、、、チュンサンとそっくりな人、、、」
「ああ、イミニョンさんですか?」
「そう、あの人と会うことはあるのかな?」
「いいえ、もう会わないんです。」
「もし、会う機会があったら、謝ってくれないかな。妻のチヨンが君たちの中を誤解して失礼なことを言ってしまったから。必ず頼むよ。なぜかそれがずっと気にかかって。きっとチュンサンに似ているからだろう。昔のことなのにすぐ思い出した。あの時はチュンサンだと思い込んだよ。こういうことは直感でわかるもんなんだ。まあ、勘違いだったんだけどね。」
「お義父さま、スキー場でおっしゃってましたよね。よくチュンサンが研究室を訪ねたと。なぜ彼は訪ねていたんでしょうか?」
「どうして知りたいんだい?」
「はぁ、何となくですが。、気になってしまったんです。」
「私も気になっていたんだけど、わからないまま死んでしまった、、、。ついに葬式にも行けず、、、君は行ったのかい?」
「いいえお葬式はソウルだったので、友達とお別れ会をしただけなんです。」
ジヌを見送った後、ユジンは自室で深く考え込んだ。ジヌの研究室に通っていたチュンサン、誰も出席してない葬式、ジヌが見間違えたミニョン、カンジュンサンだと言い切ったミニョン、やはり明日もう一度母校に行って、カンジュンサンの記録をカガメル(ゴリラ先生)に見せてもらおう、ユジンは決意するのだった。
次の日、チェリンはサンヒョクの職場に呼び出されていた。サンヒョクはいつになく真剣な面持ちでチェリンに告げた。
「君には教えておきたくて」
「教える?」
「イミニョンさんがアメリカに帰るんだってさ。そしてもう戻らない。」
チェリンはショックを受けて涙ぐんだ。そして、何も言わずにサンヒョクを残したまま、部屋を飛び出していくのだった。
チェリンは車の中からマルシアン(ミニョンの会社)に電話をした。そしてミニョンの携帯にも電話をした。しかしどちらもつながらずにイライラするのだった。その時、一本の電話が鳴った。それは、先日サンヒョクとユジンの結婚祝いの飲み会がぶち壊しになった直後に依頼した、探偵からの調査報告だった。探偵とチェリンはカフェで待ち合わせをして報告を聞いた。チェリンは一刻も早く真実を知りたかった。
「カンジュンサンは確かに死んだのね?」
「確かに死にました。」
「イミニョンはアメリカで育ったのね?」
「はい、アメリカで育ったことになっています。」
「それでは、この二人が同一人物だという証拠は?」
「母親がアメリカで再婚したんです。その時に、戸籍を整理していました。戸籍を整理した時に、息子の姓を再婚相手のものに変えたようです。割とよくあることなんです。記録を見る限り、この二人が同一人物なのは間違いありません。」
予想していたとはいえ、この調査結果はチェリンを打ちのめした。そのあと、車を運転してブティックに戻る予定だったが、道端に車を止めて、しばらく落ち着くのを待った。やっとのことで、ブティックに戻ると、今度はチンスクが誰かと電話をしている相手はどうやらユジンのようだった。チンスクによればユジンは死んだ人の記録を調べに春川高校に行くため、実家に滞在しているのだという。チェリンはコートを脱ぐ間もなく外に飛び出した。そして歩きながら電話おかけ始めた。相手はサンヒョクだった。
「サンヒョク、あんたいますぐ春川に行きなさい。私も今から向かうから。ユジンが、ユジンが高校に行くんだって。」
「ユジンが?高校に?もしかしてユジンも知ったのか?!」
「あんた知ってたわけ?チュンサンとミニョンさんが同一人物だってことを。なんであんたは大事なことを早く言わないのよっ!!!」
そう怒鳴るとチェリンは電話を切って車で春川に向かった。サンヒョクもまた職場を飛び出して春川に向かうのだった。二人の心は同じだった。早くユジンを止めなければ、ユジンが真実を知ってしまう前に。ユジンが真実を知ったら、今度こそユジンとミニョンの間にある壁がなくなって、二人は結ばれてしまう、二人を取り戻すチャンスは2度と戻ってこないと本能が告げていた。二人はユジンを止めるべく春川に向かった。