

ミニョンが部屋で思い悩んだ夜を経た次の週末の日、ミニョンはユジンをデートに誘った。その日は快晴でスキー場の全てがキラキラと輝いていた。ミニョンはユジンの手をしっかり繋いで、ぐいぐいと引っ張った。ユジンは怪訝な顔をしているが、ミニョンはお構いなしだった。
「ユジンさんが今一番行きたいところに連れて行ってあげますから。」
「どこですか?」
ミニョンはその質問には答えずに笑顔で、ユジンの身体を車の中に押し込んだ。ユジンは訳がわからないまま、ミニョンを見つめるしかなかった。

車は雪山を通り抜け、ビルが乱立するソウルに向かっていた。ユジンは色んなことを思い出してしまい、表情は少しずつ暗くなり、言葉も出なくなっていた。
ミニョンが車を走らせた先はサンヒョクが入院している病院だった。ミニョンは静かに駐車場に車を停めた。その顔は穏やかではあるけれど、覚悟を決めた表情をしていた。反対にユジンは思考が停止してしまったような表情だった。
「さあ、行って」
「、、、ミニョンさん、こんなことしないでください。」
「いいんです。心配でしょう?行ってください。」
「、、、心配です。でも、私がどうすることもできないんです。だから、心配しないって決めました。帰りましょう。」
ユジンの目から耐えきれない思いが涙になって溢れ出した。
「僕は大丈夫です。あなたが戻るまでここで待ってます。」

気丈に言うミニョンの瞳からも次々に波が溢れ出す。その顔は少しも大丈夫そうではなかった。
「でも、私が戻らなかったら?サンヒョクの顔を見てしまったら、戻れないかもしれない。それでも、あなたはいいんですか?」
ユジンは涙で潤んだ瞳でじっとミニョンを見つめた。ユジンだって、ミニョンと離れたくはなかった。

ミニョンはそんなユジンをしばらくじっと見つめていたが、覚悟を決めた口調で言った。
「大丈夫です。それでも、心を傷めているあなたを見守るよりずっと良いんです。」
ミニョンは車の天井に貼ってあるポラリスのシールに、愛おしそうに触れて言った。

「ユジンさん、あなたのポラリスを探せますよね?」
ユジンもじっとシールを見つめた。そこから目が離せなくなった。やっと見つけたポラリスを失わなければならないのだろうか。
「僕の事は気にせずに行ってください。でも、帰り道は迷わず帰ってこれますよね?どんなに時間がかかっても見つけられますよね?」
ミニョンは必死の表情でユジンに言い聞かせるように話した。
「帰ってきます。必ず戻ります。」
ユジンはキッパリと言った。どんなに遠回りしようとも、最後はミニョンの元に戻ってくるのだ。

二人は涙をためたままじっと見つめあった。どちらも離れ難く、これで別れたら今度はいつ会えるのだろうか、そんな気持ちで長い間見つめあった。やがて、ユジンは意を決して車を降りた。振り返らずにゆっくりと歩いていく。ミニョンはバックミラーに写るユジンを、涙を流しながらいつまでも見送るしかなかった。
