皆さまいつもご訪問ありがとうございます😊
嬉しいです。
中には全く冬のソナタを知らないのに、読んでくださる方もいらっしゃるので、話ごとにカテゴリを設けてみました。
また、物語紹介のカテゴリも作りました。おいおい1話ごとのダイジェストも書いて、長すぎて分からなくなったり、途中から読む人向けにアップしますね。
ちなみに、10話まで書いたら、一度1話から高校生の部分だけ書き直したいんですが、どうでしょう。かなり創作してしまったので、そこだけ忠実に書いてみたいです。
もし、この先の11話の方がよければ、それはやめて、そちらを続けます。またご意見をいただけると嬉しいです。
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ミニョンとキム次長はオフィスで仕事をしていた。キム次長は浮かない顔をして話し始めた。
「友達がさ、犬を飼ってたんだ。なんとかスパニエルって種類。」
「それで?」
「10年もずーっと一緒に寝て、可愛がって、いたんだよ。それだけ一緒にいれば、奥さんよりも情が移るもんだろ。でもある日、奴はマンションを買った。よりによってペット禁止のところをな。だから、泣く泣く他の友達に犬をあげたんだけど、犬が寂しくて死んじゃったんだよ。奴は悲しくて何日も泣いてた。」
「それで?」
「つまり、10年て歳月は重いってこと。犬でもそうなんだから、人間なら尚更だろ?」
ミニョンは苦笑した。キム次長の言わんとすることが分かってきた。
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「つまり?」
キム次長は待ってましたとばかりに、本題に入った。
「サンヒョクさんが体調を崩したらしいぞ。母親が職場にまで来たんだ。」
「ほんとに?、、、ユジンさんはどんな感じでした?」
「うーん、複雑な顔してたなぁ。あえて言うと、一番心配でたまらない、二番申し訳ない、三番自信を無くしたって感じかなぁ。どれだと思う?」
キム次長はわざと半分おどけたように話したものの、ミニョンはいつまでも考え込んだ顔をして、それきり話さなくなってしまったのだった。
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その日の夜、ミニョンは久しぶりに極寒のスキー場を散歩していた。ふと気がつくと、仕事場の明かりがついている。近づいてみると、ユジンがひとり黙々と図面を見ているのが見えた。しかし、身に入らないようで、ため息ばかりついて、憂鬱そうな顔をしている。ミニョンは、こっそりとスキー場を抜け出して、夜の雪道に車を走らせた。行き先はサンヒョクが入院している病院だった。
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夜の病院は煌々と光がついているものの、ガランとしていて、自分の足音ばかりが響いた。ミニョンはサンヒョクの病室の前にそっと立って中を覗いた。
「サンヒョク、一口でもいいから食べなくちゃ死んでしまうわ。わたし、ユジンに頼んできたから、きっとあの子は戻るわ。だから、何が食べましょう。お願いよ、サンヒョク。ねっ。ねっ。」
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母親のチヨンが懸命に話しかけている姿が見えた。しかし、サンヒョクは目を瞑ったまま全く反応しなかった。顔色も悪くて、痩せ細っている。ミニョンは見るのが辛くなってしまい、ドアを閉めてそっと立ち去った。現状を確かめたかったので、今の景色で充分だったのだ。
ミニョンは夜道をドラゴンバレーに向けて走りながら考えた。ユジンの罪悪感を考えると、今こそ自分が身を引いて解放してあげるべきなのではないかと。しかし、それは身を斬られるほど辛いこと。ミニョンの心はユラユラと揺れるのだった。
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ユジンは雪の中をひとり黙々と歩いていた。今日はとにかく頭を冷やしたい気分になるのだった。
『あなたは今のサンヒョクを見てないからそんなことが言えるのよ。』
『お前さえ戻ってくれば、丸く収まるんだよ。』
チヨンとヨングクの声がリフレインのように繰り返されてしまう。そんなユジンの後ろに、ソウルから戻ったミニョンがいつのまにか立っていた。ミニョンはユジンの肩をそっと掴むと言った。
「右足から出してみて。右足。左足。右足。左足。つなげてみると、何になるか分かりますか?」
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ユジンは憂鬱そうな顔のまま振り返って、ミニョンをじっと見つめた。ミニョンは優しい顔で諭すように話した。
「時間です。ひとつだけ、サンヒョクさんにどうしても勝てないものがあります、、、それが時間です。あなたとサンヒョクさんとの長い時間。今は追いつけない、、、ユジンさんはサンヒョクさんが心配でしょう?ユジンさん、本当はサンヒョクさんの様子を見に行きたいんでしょう?」
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ミニョンは泣き笑いしながらユジンに問いかけた。本当は行って欲しくないけれど、ユジンの心が痛いほど分かりすぎて、自分のもとに縛りつけてはおけなかった。
しかし、ユジンは涙でいっぱいの目でミニョンをしっかりと見つめて首を横に振った。
「サンヒョクならきっと大丈夫です。立ち直れるはずです。」
その言葉とは裏腹に、ユジンの目からはどんどんと涙が溢れ出して、それを見られないようにするかのように、くるりと背を向けて歩いて行ってしまった。ミニョンは降りしきる雪の中、去っていくユジンの後ろ姿をいつまでも見送っていた。
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ミニョンは、ホテルの自室に帰ってからも、ずっと考えこんでいた。愛しているならば、時には大切な人を手放す勇気も必要なのではと、考え続けていた。ミニョンの心は千々に乱れていた。吹き荒ぶ雪のように、真っ暗な夜空に漂い、バラバラになってしまいそうだった。