チュンサンが父親を探した経緯です。杏子さま、はなちゃん様、ご質問ありがとうございます😊鋭いですね。
父親を探して1
https://blog.goo.ne.jp/kirakira0611/e/216e72b658e44655d856885243cc629d
父親を探して2
https://blog.goo.ne.jp/kirakira0611/e/6c1ddab3c776482be786c9e8ea3f7d48
「サンヒョクに聞きましたが、ジヌさんは母と同級生なんですね。」
しかし、ジヌには聞きたくてたまらないことがあったので、質問には答えなかった。
「君は本当にカンジュンサンなんだね?」
「はい、カンジュンサンなんです」
ミニョンもまだ自分でも信じられずに、照れ臭そうに言ったが、ジヌはそんなミニョンをまじまじと見つめていた。
「実はジヌさんにお聞きしたいことがあったんです。」
「聞きたいこと?」
「はい、前にスキー場でお会いした時に、僕が先生の研究室に通っていたとおっしゃいましたね。その時僕は父親の話をしていたんでしょうか?」
「ええ、そうです。母と親しかったと聞いているので、おそらく誰が父親なのかをお聞きしたと思うんです。お聞きしませんでしたか?」
するとジヌは動揺した様子で答えた。
「、、、私の知り合いなのかもしれないけど、、、、」
言い淀むジヌを前に、ミニョンはジヌが知らないと解釈して、がっかりした様子を見せた。
「君は父親を知りたいんだね?」
「はい、まあ、知りたいです。でも、今更気になるなんて変ですよね。」
「お母さんからは聞いていないのかな?」
「はい、父のことは話したくないっていうんです。すでに父は亡くなっているそうで。今更探しても仕方ないですよね。」
それを聞くと、ジヌの顔色は変わった。ジヌの脳裏に、先日ユジンの父親のヒョンスが死んだと聞いて驚いていたミヒの顔が浮かんだ。
「君のお父さんは亡くなったと、お母さんはそう言ったんだね?」
「もしかして心当たりがあるんですか?」
「さぁ、もしかしたら知っている人かもしれないが、心当たりはないなぁ。こんなことを言うのは何だけれども、お母さんが嫌がるなら、それ以上は聞かない方がいいんじゃないかな。きっと傷つけてしまう。その時が来たら、自分で話すだろうよ。」
ジヌはそういうのが精いっぱいで、それきりうつむいてしまった。そんなジヌを見て、ミニョンもがっかりはしたが、これ以上聞くことはできないと、お礼を言って喫茶店を後にした。後に残されたジヌは、今日知った事実から導き出される答えを、知りたいような知りたくないような気持でもやもやしていた。ジヌはポケットから高校生の時の写真を出して眺めた。そこには、楽しそうに笑うミヒとユジンの父のヒョンス、そしてジヌが写っていた。わたしたちは仲良し3人組だった。ジヌはミヒが好きで、ミヒはヒョンスが好きで、ヒョンスもミヒが好きだった。でも、いつからそのバランスが崩れてしまった。今、ジヌの考えていることはただ一つだった。チュンサンの父親はヒョンスなのだろうか。それとも自分なのだろうか。
その次の日の夜、ミニョンとユジンの気持ちをよそに、母親二人が春川で静かに向かい合っていた。一人はチュンサンの母親のカンミヒ、もう一人はユジンの母親のイギョンヒだった。ミヒは日本公演を終えて韓国に帰国すると、ミニョンにも連絡せずに春川に直行したのだった。そして、この二人がしっかりと向き合うのは、ヒョンスを入れて話した29年前だった。ギョンヒは台所でお茶を入れており、ミヒはヒョンスの写真たてを静かに見つめていた。写真の中のヒョンスは少し年を取っていて、優しい笑みを浮かべた良いパパという雰囲気だった。あんなに愛した男性が、今は写真の中でしか会えないことが、とても悲しかった。この家は優しさと愛情に満ちた家庭という感じだった。質素な造りではあるが、家全体から温かみを感じた。ヒョンスが欲して愛してやまなかったものがここにあるのだろうと思うと、心の奥の奥がちくりと痛むのだった。それでも、ギョンヒが戻ってくる間に、何とか気持ちを立て直した。自信満々の成功した音楽家という仮面をつけるのだ、ミヒは自分を奮い立たせた。
ギョンヒはお茶を出し終わると、「大事なお客様だから」とミヒを柔らかく見つめた。ミヒはそんなギョンヒに向かって、ひたと視線を合わせて話し始めた。
「私が今日ここに来た理由がわかりますか?」
「いいえ」
「お宅の娘さんの名前はチョンユジンさんですよね?」
「はい」
「ではカンジュンサンという名前も知っていますよね?」
「はい」
「チュンサンは私の息子です」
ギョンヒはミヒの冷たくて強い眼差しに心が震えていたが、今まで我慢していた。しかし、最後の一言で心が凍りついてしまった。まさか、ユジンが運命の人だと決してあきらめなかったあの男性が、因縁の相手であるカンミヒの息子だったなんて、ギョンヒは因果応報という言葉を思い浮かべるのだった。これからの二人の話し合いは、とても険しいものになるに違いなかった。