一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

退屈な夜

1999年11月22日 | 女のホンネ
 あるバーで、
 「ぼくは昔、年上の女性にモテたんだ」
 と、熟年男性はグラスを手にしたまま言った。
 こんな時、一緒に飲んでいる私は、どんなリアクションを示せばいいのだろう。
 そこに居合わせたのは、カウンターの内側の熟年ママと若いホステスさん。2人とも、そんな仕事が不似合いなほど、しとやかな微笑と、しとやかな口のきき方をする女性たち。カラオケはないバーである。
 熟年男性が、「ぼくは昔、年上の女性にモテたんだ」と言った後、私を含めた3人の女性は、一瞬、無言だった。
 その男性の発言に対して、どんな言葉を口にすればいいか、とまどったような沈黙、と言えなくもないような……。
 たとえば、 
「えーっ、ホントですか?」
 なんて言ったら、失礼かもしれない。
「ふうん」
 なんて、しみじみ横顔を見れば、よけい失礼に当たる。
(ここにいる3人が、若いころの彼を知らないのだから、どんなモテた話もできるわけよね)
 内心、クスッと笑いたくなる。
 けれど、その男性が「年上の女性にモテた」というのは真実味があって、私はその言葉を信じた。
 信じたけれど、その後に続く彼の話を聞くと、何となく失望させられた。若き美青年(かどうかわからないが)時代の自分に、執着している、その、めめしさのようなものが感じられたのである。現在の自分は、そのころに比べて、若さも失い男性の魅力も失い、不幸なことよと嘆いているふうに聞こえなくもない。その、若さも魅力も失った不幸な男性と一緒に飲んでいる私は何なのかと考えたくもなってくる。
 私は誘われれば、どこへでも、ついて行ってしまう。と言っても、ホテルへではない。バーでもクラブでも居酒屋でもスナックでも変わった店でも、という意味である。
 男性と一緒にお酒を飲むのは楽しいし、どんな面白い話が聞けるかとワクワクするからだ。
 けれど、男性と過ごして楽しいひとときばかりではない。一緒に飲んでいる男性に失望させられ、無駄な数時間を過ごしたことを後悔することも、稀(まれ)にだが、なくはない。
 そんな夜は、早く帰宅して入浴してベッドで好きな本を読みたいと思ったりする。
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